社外取締役の選任方法|法定要件や必要なスキルと探す際のポイントを解説

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会社の更なる成長のため、社外取締役を迎え入れたいと考えているものの、選任方法がイマイチよくわからないの悩む方は少なくないでしょう。

手続き的な部分での選任方法はもちろんですが、そもそも社外取締役に迎えるのにはどんな人材がよいのか、はっきりと理解できているケースは上場企業においても多くはないはずです。社外取締役にはどのようなスキルを持つ人材がふさわしく、迎え入れるために企業が取るべき対策にはどういったものがあるのでしょうか。

この記事では、社外取締役の定義や要件、役割など基礎的な知識を解説するとともに、求められるスキルや活用人材例、報酬水準なども紹介します。また合わせて、自社に合う社外取締役を探す際のポイントや役立つサービスなども解説するので参考にしてみてください。

目次
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社外取締役の設置義務がある企業section

社外取締役については、2021年3月1日に改正会社法が施行されたことにより、一部企業において選任が義務づけられることになりました。選任が義務づけられる企業とは、「公開会社かつ会社法上の大会社に分類され、有価証券報告書の提出義務のある監査役会設置会社」です。

少し大雑把な言い方をすれば、上場企業に対して社外取締役の選任が義務づけられたわけです

(社外取締役の設置義務)

第三百二十七条の二 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)であって金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないものは、社外取締役を置かなければならない。

引用元:会社法第327条の2

もともと上場企業においては、社外取締役の選任がなされていることが通常なので、改正による影響はほとんどありませんが、欠員となった場合に取締役会決議ができるかどうかが問題視されています。

欠員が生じた後の取締役会決議が直ちに無効となるわけではなく、合理的な期間内に新たな社外取締役を選任できれば問題はないと考えられていますが、不要なリスクを避けるのであれば、常に複数人の社外取締役が選任されているように対応していく必要があるでしょう

現時点では関係なくとも、社外取締役設置義務の話は上場を目指す企業には避けて通れぬ道です。ニーズに対してだいぶ不足気味な社外取締役をそのときが来てから探すのでは、対応が間に合わない恐れがあるので、今から探しておくことが大切といえます。

社外取締役の選任方法とはsection

社外取締役の選任方法は、通常の取締役を選任する際と同様で、株主総会での普通決議を経た上で、委任契約を当該候補者と結ぶ必要があります

(選任)

第三百二十九条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

引用元:会社法第329条

加えて、選任にあたり登記が必要な点も変わりませんが、社外取締役である旨の登記を行うのは以下のケースのみ。

社外取締役である旨の登記が必要なケース

  • 特別取締役による議決の定めがある場合の社外取締役
  • 指名委員会等設置会社の社外取締役
  • 監査等委員会設置会社の社外取締役

つまりは、取締役就任の登記だけでよい場合と取締役就任の登記と社外取締役である旨の登記が必要な場合の2パターンがあり、上記ケースは後者に該当します。登記手続きに関しては、原則、株主総会で決議を行った日の翌日から2週間以内に、関連書類を管轄法務局に提出しなければなりません。

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社外取締役はそもそもどんな役職?section

社外取締役を選任するのであれば、どういった目的の役職であるかは当然知っていないと、有効的な活用をするのは難しいといえます。この記事では、社外取締役に関する基本事項を確認していきましょう。

社外取締役の定義・要件

社外取締役の定義・要件について、会社法では以下のように定めています。

社外取締役 株式会社の取締役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。

イ 当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人(以下「業務執行取締役等」という。)でなく、かつ、その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

ロ その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)又は監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く。)にあっては、当該取締役、会計参与又は監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと。

ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。

ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。

ホ 当該株式会社の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

引用元:会社法第2条15号

上記条文を要約すると、社外取締役とは、業務の執行は行わず、就任企業およびその親会社や子会社、経営陣等との間に一定の利害関係を持たない取締役のことです。

また社外取締役には、東京証券取引所のコーポレートガバナンス・コードで設置が義務付けられている「独立社外取締役」もいます。独立社外取締役は、経営者や利害関係者から完全に独立し、一般株主との間に利益相反が生じるおそれのない社外取締役のことをいい、東証が定める独立性基準を満たしていなければ届出はできません

参考:独立役員の確保に係る実務上の留意事項|東京証券取引所

社外取締役に期待される役割

社外取締役について、わざわざ細かく定義や要件を設けているのは、当然期待する役割あってのこと。コーポレートガバナンス・コードでは、社外取締役の期待する役割・責務として以下を挙げています。

【原則4-7.独立社外取締役の役割・責務】

上場会社は、独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待され

ることに留意しつつ、その有効な活用を図るべきである。

(ⅰ)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長

を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと

(ⅱ)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督

を行うこと

(ⅲ)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること

(ⅳ)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホ

ルダーの意見を取締役会に適切に反映させること

引用元:改訂コーポレートガバナンス・コードの公表|日本取引所グループ

上記を見ればわかりますが、社外取締役に期待される役割を端的に表すと、客観的な立場からの経営判断・状況に関する監督と助言です。

近年のコーポレートガバナンスに対する高まりからもわかるように、内部人材だけでの企業運営は、経営陣の独裁体制を許し、不祥事の温床となりかねません。なので、会社は株主のものである考えの下、経営陣による不都合な意思決定を防ぎ、企業価値が最大となるよう経営状況を監督するのが社外取締役の役割です。

社外取締役に求められる4つのスキルsection

社外取締役にふさわしい人材を集めようにも、役割を全うするうえで必要なスキルがわからなければ、候補者を募るだけでも一苦労です。良い人材に社外取締役を担ってもらうためにも、求められるスキルを確認しておきましょう。

経営経験

前述したように、社外取締役に期待されているのは、会社の経営判断に対する監督・助言です。であれば当然、経営経験の有無は社外取締役選びにおいては、欠かすことのできない重要な判断要素だといえます。

会社の今後を左右しかねない重要な局面において、机上の空論に近しい助言をされても困りますよね。経営状況に合わせて最適な助言をするためには、社外取締役自身にも相応の経営経験がないと難しいでしょう。

課題認識能力

社外取締役に期待された役割を考えると、何の意見も言わないイエスマンであっては困ります。なので、資料や会議の内容から、会社や事業の課題・問題点を見つけ出す能力に優れた人物が望ましいといえるでしょう。

資料読解力

いくら優秀な人材といえど、会社や事業のことを何も知らずに監督・助言はできないので、取締役会に臨むにあたり、事前説明や資料提供を受けるが通常です。

ただ逆に言うと、業務に直接関与しない社外取締役の場合、資料や事前説明でしか情報を得られないともいえます。なので、資料読解力のない人だと社外取締役として満足いく働きは難しいかもしれません。

特定分野における専門性

近年では取締役会の実効性を保つためには、個人の素養・経験の多様性を考慮し、バランスよく人材を配置すべきと考えられています。

似通った人ばかりを集めたほうが会議を進めるのは楽ですが、異なる視点や意見が入り込みにくくなる分、課題に対する議論は深まらない可能性が高いでしょう。

そのため、社外取締役を募る際には、選任の狙いと現役員の素養や経験などを比較参照し、自社に必要なまたは足りない部分を補うような専門性を持つ人材を招くことが大切です。

社外取締役にふさわしい人材例section

社外取締役を選任するにあたって、株主や他の役員の同意が得られる人材というと、ある程度は限定されているものです。この項目では、社外取締役に活用されやすい人材に多い属性を確認していきましょう。

経営経験者

さまざまなバックグラウンドを持つ社外取締役がいるなかでも、最もポピュラーなのが、経営経験者です。特に指名委員会等設置会社においては、経営経験者の社外取締役が6割を超えています。

経営や事業に関する課題や問題点について、実際の経験者以上にわかる人はいないであろうことを考えると、当然の帰結かもしれません。

難点があるとすれば、社外取締役を担える経営経験者がそれほど多くないことが挙げられるでしょう。

弁護士

弁護士も社外取締役に選ばれやすい属性の一つ。法令に精通した専門家である弁護士ほど、経営陣を職務執行の適法性を監視し、コントロールする術に長けた人材はいないといえます。

加えて、弁護士の場合、社外取締役にふさわしい経歴を持つ女性も少なくありません。なので、取締役会の女性比率を上げるにはうってつけの人材といえます。

公認会計士・税理士

公認会計士や税理士もまた弁護士と同様に、社外取締役として人気の士業です。会社を健全に運営していくには、法務だけでなく会計・税務・財務などの資金面にも気を配らなければなりません。なので、会計や税務のスペシャリストである公認会計士や税理士は、社外取締役にふさわしい人材であるといえます。

社外取締役の報酬水準section

社外取締役に支払われる報酬額は、企業ごとにさまざまです。下記のグラフを見てわかる通り、1,000万円を超える報酬を社外取締役に支払う企業もあれば、200万円にも満たない企業もあります。

社外取締役の有する知見や企業の選任目的が異なる以上、報酬額が各々異なるのは当然といえば当然です。他方で、グラフからはある程度の偏りがあることも見て取れます。

経済産業省のデータを参考にするのであれば、上場企業においては800万円~1,600万円それ以外の企業では200万円~1,000万円の範囲が、社外取締役報酬額の目安となるでしょう。

自社に合う社外取締役を選任するためのポイントsection

社外取締役の選任は、社員採用と同様で、自社に合う人材を迎え入れられれば、会社や事業の拡大に大きく貢献してくれる存在となります。

人材像を明確化する

自社に合った社外取締役が欲しいのであれば、まず人材像を明確化することです。

社外取締役に就任した場合にどのような役割を担って欲しいのか、そのためにどういったスキルや知見があると望ましいのか、募集する自分たちがわかっていなければ、当然選ぶことができません。なので、選任したい社外取締役の人材像を明確化しておけば、さまざまな候補者の中から最適な人材を選ぶことができます

ただ会社側が想定した社外取締役の人材像が株主にとって相応しいとは限りません。

そのため、スキルマトリックスを作成・開示し、取締役会に相応しい人材を選任したことが分かりやすく判別できるようにしておくことも大切といえるでしょう。

情報発信を積極的に行う

社外取締役に優秀な人材を迎えるためには、情報発信も必要不可欠です。経済産業省の調査によれば、社外取締役を引き受けるうえで最も重視されているのは、本人の経験や専門性が活かせるかどうかです。

であれば、事業や会社そのものが知見や専門性を活かせる場であることをアピールするのは有効であるといえます。日頃から会社や事業について、情報発信を行っておきましょう。

募集チャネルを複数持つ

社外取締役を担える人材自体がそれほど多くはない中で、そこから自社に合う人材を一本釣りするのはほぼ不可能であるといってよいでしょう。そのため、数打てば当たるではないですが、色んな人材を知る機会が少しでも多くなるよう、募集チャネルは複数用意しておきたいところです。

現状、社外取締役の選任にあたってメインの募集方法は紹介やツテです。しかし、近年は独立社外取締役の重要性が高まっており、コーポレートガバナンス・コードに規定された役割や責務を考えると、紹介やツテによる選任はは望ましくないと判断される可能性もあります。

【原則4-7.独立社外取締役の役割・責務】

上場会社は、独立社外取締役には、特に以下の役割・責務を果たすことが期待され

ることに留意しつつ、その有効な活用を図るべきである。

(ⅰ)経営の方針や経営改善について、自らの知見に基づき、会社の持続的な成長

を促し中長期的な企業価値の向上を図る、との観点からの助言を行うこと

(ⅱ)経営陣幹部の選解任その他の取締役会の重要な意思決定を通じ、経営の監督

を行うこと

(ⅲ)会社と経営陣・支配株主等との間の利益相反を監督すること

(ⅳ)経営陣・支配株主から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホ

ルダーの意見を取締役会に適切に反映させること

引用元:改訂コーポレートガバナンス・コードの公表|日本取引所グループ

そのため、社外取締役選任手段の一つとして、社外取締役の人材紹介サービスの活用も視野に入れておくとよいでしょう。

社外取締役を選任に役立つ人材紹介サービスsection

社外取締役に期待される役割を果たすにあたって、近年、社外取締役の独立性をより重視する傾向になりつつあります。

となると、社外取締役の独立性を確保するために、人材紹介サービスを活用するのも一つの手です。この項目では、社外取締役・監査役雇用におすすめの人材紹介サービスを紹介します。

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社外取締役名鑑は、上場企業の役員経験者を中心に21,000名以上が参画する『顧問名鑑』が、運営する社外取締役の紹介に特化したサービスです。参画している人材が非常に多いため、企業それぞれのシチュエーションにあった社外取締役を見つけやすいといえます。

参考:社外取締役名鑑

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i-commonは、人材業界大手のパーソルキャリアが運営する経営支援サービスです。幅広い分野の専門家が登録しており、企業経営で発生するあらゆる課題に対して「アドバイザー」「監査役」「取締役」「経営顧問」など、さまざまな形で事業活動をサポートする人材のマッチングを行います。

参考:i-commonHP

まとめ

コーポレートガバナンスに対する意識の高まりから、社外取締役の重要性がより増していますが、形だけを取り繕うような選任の仕方をしていては、企業価値は下がっていく一方でしょう。

株主に支持される会社を作り上げていくためには、自社に合った社外取締役を選任し、事業成長に大きく貢献してもらうことが大切です。自社に合った社外取締役を選任する上で大事なポイントは以下の通り。

  1. 人材像を明確化する
  2. 情報発信を積極的に行う
  3. 募集チャネルを複数持つ

社外取締役のニーズは高まる一方で、しかも優秀な人材ほど競争が激しく、迎え入れるのは容易ではありません。そのため、必要に駆られてからではなく、ある程度先を見越して動いておくことが大切です。

弁護士のみのご紹介にはなりますが、NOLIMITにおいても社外取締役の就任支援を行っていますので、社外取締役をお探しの企業担当者の方は、お気軽にお問い合わせください。

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上場支援、CGコードの体制構築などに長けた、専門性の高い「弁護士」を社外取締役候補としてご紹介。事業成長とガバナンス確保両立に、弁護士を起用したい企業様を支援している。

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