近年では社外取締役は大手のみならず、中小企業にも積極的な導入がなされるべきとされています。
中小企業においても、外部株主の関与や社外からの役員登用といった外部の利害関係者からの牽制機能が働く経営体制の整備を進めていくことや、取締役会の開催といった組織的な意思決定の仕組みを整えること、また、経営計画の策定や管理会計の整備といった内部体制を意識的に整えていくことにより、投資活動や人材育成、業務効率化といった企業行動の活発化につながると考えられる。
引用元:中小企業庁|中小企業の経営の在り方
選ぶ側の立場からすると、活躍の場が増えるのは嬉しい反面、報酬面が気になるところではないでしょうか。昨今相次ぎ発生した大手企業の不祥事を鑑みれば、形だけの社外取締役でいるのは高リスク、しっかりと社外取締役の責任を果たしたいものの、あまりに安い報酬では意欲が湧かないも致し方ありません。
中小企業の社外取締役を務める場合、どの程度もらっていれば少なくないのでしょうか。この記事では、中小企業における社外取締役の報酬目安や金額の決め方、社外取締役を募集する企業の探し方などを紹介します。
中小企業における社外取締役の報酬目安section 01
社外取締役に対して支払われる報酬は、企業によって大小さまざまです。例えば、上場企業では社外取締役に高額な報酬を支払っているイメージがあると思いますが、必ずしもそうとは限りません。
2018年に朝日新聞と東京商工リサーチが共同で東証一部上場企業の社外取締役報酬を調査よれば、2,000万円を超える高額報酬をもらう方がいる一方で、400万円を下回る方もそれなりにいます(この調査で社外取締役報酬額の平均は663万円)。
また経済産業省が行った調査によると、企業規模が大きいほど報酬額も高くなる傾向にあるとのこと。
こうした調査を踏まえると、中小企業における社外取締役の報酬額は上場企業の平均額を下回る可能性が高く、おそらく年額ベースで200万円~400万円が一つの目安となるでしょう。
社外取締役の報酬の決め方section 02
社外取締役に支払う報酬額については特に決まりはないため、企業の判断で自由に決められます。
企業が社外取締役の報酬を決めるうえで、重要となる要素は2つ。
社外取締役にどの程度の関与を求めるか
積極的に経営への参画を求め、拘束時間も長くなるのであれば、その分、報酬も高めに設定されるでしょう。他方、そこまで社外取締役の関与を望んでおらず、もっぱら設置義務を満たすことが目的の企業であれば、高額な報酬を支払う必要はないので、低額になりやすいといえます。
社外役員に求めるレベル
社外取締役にふさわしい知見を持つ人材はかなり希少で、どこの企業においても引く手数多。報酬額の高さですべてが決まるわけではないですが、ある程度金銭的に魅力的なオファーをしないと、優秀な人材には振り向いてもらえないでしょう
反面、社外取締役としての魅力が少ない人材に高額な報酬を支払うことは、企業からすれば無駄でしかありません。経験や能力次第では無報酬となることも可能性としては十分にありえます。このように社外取締役の報酬といえども、基本的な考え方は仕事の報酬と一緒で、自身の能力や業務の拘束時間に影響されるといえます。
中小企業における社外取締役の必要性とはsection 03
コーポレートガバナンス強化の観点から、重要な役割が期待される社外取締役ですが、設置が義務でないことの多い中小企業においては、本当に必要なのか疑問に思う方も少なくないでしょう。
結論からいうと、中小企業においても社外取締役の存在は重要です。むしろ、中小企業こそ積極的に活用すべきといえるかもしれません。中小企業において社外取締役が重要になる理由は3つです。
経営者のブレーキ役になれること
会社の規模がそこまで大きくないうちは、似たような人材を集めたほうが業務の効率的には何かと都合がよいといえます。しかし、似たような人材ばかりとなると、発想や志向が一方に偏りがち。異なる意見が生まれづらく、経営者の独善的な判断を許してしまいやすいです。
そうした際にブレーキ役としての役割が期待されるのが社外取締役。第三者的立場にあり、会社ではなく株主の利益のために働く社外取締役にとって、社内のしがらみや利害関係の縛りを受けません。経営者に対して意見をいうのに最も適した立場と言っても過言でないでしょう。
異なる知見が得られること
社外取締役が持つ異なる知見は、経営者の足りない部分を補完することができます。会社を率いる経営者といえど、経営に必要な知識・経験すべてを有しているわけではありません。
会社が成長し、新たなフェーズを迎れば、そこから先は経営者にとっても未知の領域です。知らないことも当然に出てきますし、失敗のリスクも見え隠れしますが、だからといって対応しないわけにはいきません。そうした状況下のなかで、似たような経験を持つ社外取締役がいれば、適切なアドバイスがもらえるので、経営者にとっては非常に心強いでしょう。
経営者と同じ視点を持っていること
大きな企業であれば、経営者以外にも経営視点を持つ人材はそれなりにいます。なので、経営者のみで重要な判断を迫られる機会はあまりないでしょう。ですが、中小企業では経営者をサポートする人材はいても、同じ目線の人はまずいません。経営者一人で舵取りすることの不安はかなりのものでしょう。そうした場合に経営視点を持つ社外取締役がいてくれることの影響は大きいはずです。
- 優秀な人材が確保できれば有用。ただ資格持ちは必ずしも社外取である必要はない
- ベンチャーやスタートアップは採用に積極的。ただコミットが求められる
中小企業が社外取締役を見つける4つの方法section 04
中小企業の社外取締役を募集を見つける主な方法は以下3つ。
- 人づてに紹介してもらう
- セミナーや異業者交流会を活用する
- 求人サイトを利用する
それぞれについて確認していきましょう。
人づてに紹介してもらう
社外取締役を募集する中小企業を探すにあたり、人脈やツテを活用するのは一つの手です。会社の立場にすると、知らない相手を社外取締役に選任するのはリスクの高い行為。お飾りならともかく、積極的な経営への関与を求めるなら、人柄やビジネスに対する考え方がわからない人材を重用したいとは思わないでしょう。
しかし、本人のことは知らなくても、紹介者に信頼が置けるのなら話は別です。信頼している方からの紹介なら、よほどではない限り問題はないだろうとの考えが働くためです。実際に選任してもらえるかどうかはご自身の対応次第ではありますが、少なくとも話す機会はもらえるでしょう。
セミナーや異業者交流会を活用する
社外取締役には、経営者や役員の知り合いがあてがわれることも少なくありません。
なので、セミナーや異業者交流会などを通じて、直接経営者や役員と繋がりを作るのも、社外取締役の募集を探すうえでは有効です。経営者や役員とビジネス上で繋がりを得るのは至難ですが、セミナーや異業者交流会のような場では、あちらも情報収集が目的にあるため、いくぶん繋がりやすいといえます。
話すきっかけさえ掴めれば、関係を築くことも難しくはないでしょう。
求人サイトを利用する
身近に社外取締役の候補がいないと中小企業にとっては、求人サイトは貴重な人材募集の場です。それほど数は多くありませんが、求人サイト活用すれば社外取締役の募集案件も見つかるでしょう。
その際、一般的に求人サイトではなく、エグゼクティブ向けの求人サイトを利用したほうが、社外取締役の募集案件は見つけやすいかもしれません。一般社員向けの求人サイトだと、ターゲットでない人材の応募くる可能性があり、そうなると無駄な工数が増えて手間だからです。
社外役員専門のマッチングサイトを利用
実績のある社外取締役の採用はVC(ベンチャーキャピタル)経由でも困難を極めており、企業側はVC経由意外に採用する場所の確保、実績のある弁護士はヘッドハントされる機会のマッチングがうまくいっていないのが現状です。
上場予備軍500社、社外取締役の争奪戦 指針強化で対応急務
人気人材は2年待ちも スタートアップ 2021年1月18日 0:00 [有料会員限定] 社外役員や監査役といったガバナンス人材の確保に悩むスタートアップが増えている。上場を目指すスタートアップが増え、金融庁などが定める企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)を見据えて体制を整えるためだ。成長の早いスタートアップのガバナンスを担える人材供給には限りがあり、適切な人材探しを支援するサービスも求められている。引用元:日経新聞
その問題を解決する糸口になるのが『社外取締役マッチングサイト 』です。最近では、顧問紹介などを行うエージェントの中で、社外取締役紹介に関するサービスをローンチするものが出てきています。
まとめ
社外取締役の報酬は企業ごとにかなり差があります。中小企業の場合においては明確な基準はありませんが、年額200万円~400万円が一つの目安となるでしょう。
受け取るほうからすると大した金額に思えないかもしれませんが、特に選任が義務づけられていない企業からすれば十分大金です。金額に見合うか、それ以上の貢献が期待され、中小企業の社外取締役だからといって楽に稼げるということはありません。
もし社外取締役の仕事に興味があり、募集している中小企業を探しているのであれば、
- 人づてに紹介してもらう
- セミナーや異業者交流会を活用する
- 求人サイトを利用する
などの方法で探してみるとよいでしょう。NOーLIMIT でも社外取締役に関するサポートを行っていますので、気になる方はお気軽にお問い合わせください。