POSTED 2022/11/10

常勤監査役の報酬相場と基準となる要素、非常勤役員との比較まで

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社外役員選任チーム

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監査役には、大きく常勤監査役と非常勤監査役の2つがあります。近年注目されるのは、社外役員たる社外監査役であり、非常勤であることもあります。

他方で常勤監査役も、コーポレートガバナンスを図る上で重要な機関です。コミットメント的には、常勤監査役の方がより収入面でも高いものと考えられます。この記事では、常勤監査役の報酬について、常勤監査役の業務を踏まえ、報酬相場、報酬内容、実際の報酬例などを解説していきます。

目次

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常勤監査役とはsection

そもそも常勤監査役とは何でしょうか。整理しておきましょう。

常勤監査役は通常の監査役のこと

常勤監査役は、監査役として株主総会により選任される監査役であって、特に社内業務に関する監査について平常業務として関わる地位にある監査役です。

会社の営業時間中基本的に監査の職務に従事することが求められます。そのため、常勤監査役は、ほかに常勤する必要がある職務に従事していないことが必要とされます。監査役1名の設置会社では、基本的に監査役は常勤監査役です。そのため、監査役としての基本形態が常勤監査役であるといえます

また、常勤監査役は、社内監査役であることも少なくありません。企業で管理部などコーポレート職に就いていた社員が登用されることもあります。

非常勤監査役との比較

他方で、非常勤監査役は、社内の平常業務に対して積極的に関わることまでは要しない立場の監査役です。

基本的には、定例の取締役会ないし監査役会に出席して意見などを述べることが求められるほか、常勤監査役の職務を補佐しつつ、その中で監査の職務を遂行することが求められます。

非常勤監査役の場合、ほかにも常勤あるいは非常勤の形で社外役員などを兼務している場合が多くあります。例えば弁護士などは、特に企業法務を多く手掛けている方であれば、1つの会社で非常勤監査役をやりつつ、ほかの会社の顧問などをしたり、社外役員を兼務していることもあります。

常勤監査役の報酬相場section

常勤監査役の報酬相場は、どの程度のものでしょうか。2019年のデータではありますが、数値的には一定の参考になると考えられます。

常勤監査役の報酬相場は750万円から1500万円の間

日本監査役協会の調査によれば、母数を1780名とする調査において、社内常勤監査役の報酬は、最も多い範囲として1000万円から1250万円未満で、20.8%の割合です。もっとも、その前後の範囲とも拮抗しています。

750万円から1000万円未満の範囲は14.2%、1250万円から1500万円未満が15.8%という数値になっています。

これらを合わせると、750万円から1500万円未満の範囲で、40.8%という割合を占めることになります。500万円から750万円未満の割合も9.8%あるところからすると、およそ半分の51.6%は、500万円から1500万円未満にあるということになります。

そのため、常勤監査役の報酬相場は、範囲は広いですが、企業規模による違いも含めて考えると、500万円から1500万円未満という範囲であるといえるでしょう。

上場/未上場による報酬の違い

上場企業・未上場企業による違いはあるのでしょうか。

上場企業は、当時のデータでは東証1部、同2部、新興市場(JASDAQ、マザーズ)があります。また、非上場企業は、IPO準備中とそうでないものとがあります。

上段:数
下段:割合(%)

 

上場区分

親会社の有無

オーナー企業の別

1部上場

2部上場

新興市場

非上場
IPO
準備中)

非上場

親会社あり

親会社なし

オーナー企業である

オーナー企業ではない

水産・農林・鉱業

14

7

-

1

1

5

5

9

3

11

0.6

0.9

-

0.4

0.4

0.5

0.5

0.6

0.4

0.6

建設

131

44

9

9

3

66

62

69

26

105

5.4

5.9

7.1

3.8

1.3

6.0

6.2

4.8

3.9

5.9

食料品

94

37

9

3

2

43

36

58

29

65

3.8

4.9

7.1

1.3

0.9

3.9

3.6

4.0

4.3

3.7

繊維・パルプ・紙

37

23

5

2

-

7

6

31

7

30

1.5

3.1

4.0

0.8

-

0.6

0.6

2.2

1.0

1.7

化学・医薬品

184

74

5

17

19

69

70

114

43

141

7.5

9.8

4.0

7.2

8.4

6.2

6.9

7.9

6.4

7.9

石油・石炭・ゴム製品・窯業

45

20

4

2

1

18

12

33

9

36

1.8

2.7

3.2

0.8

0.4

1.6

1.2

2.3

1.3

2.0

鉄鋼・非鉄・金属

78

34

5

10

1

28

29

49

17

61

3.2

4.5

4.0

4.2

0.4

2.5

2.9

3.4

2.5

3.4

機械・機器

277

123

22

22

13

97

102

175

62

215

11.3

16.4

17.5

9.3

5.8

8.8

10.1

12.2

9.3

12.1

その他製造

147

48

17

7

10

65

60

87

43

104

6.0

6.4

13.5

3.0

4.4

5.9

6.0

6.0

6.4

5.8

卸売

179

63

10

16

6

84

79

100

34

145

7.3

8.4

7.9

6.8

2.7

7.6

7.8

6.9

5.1

8.2

小売

145

52

10

20

7

56

62

83

54

91

5.9

6.9

7.9

8.5

3.1

5.1

6.2

5.8

8.1

5.1

不動産

125

18

2

17

18

70

50

75

42

83

5.1

2.4

1.6

7.2

8.0

6.3

5.0

5.2

6.3

4.7

運輸・倉庫

102

32

7

6

1

56

52

50

16

86

4.2

4.3

5.6

2.5

0.4

5.1

5.2

3.5

2.4

4.8

情報・通信

263

61

7

38

45

112

98

165

95

168

10.7

8.1

5.6

16.1

19.9

10.1

9.7

11.5

14.2

9.4

電気・ガス

47

11

2

1

7

26

21

26

7

40

1.9

1.5

1.6

0.4

3.1

2.3

2.1

1.8

1.0

2.2

サービス

304

53

10

54

66

121

105

199

141

163

12.4

7.0

7.9

22.9

29.2

10.9

10.4

13.8

21.1

9.2

金融・保険

189

47

1

5

4

132

115

74

12

177

7.7

6.3

0.8

2.1

1.8

11.9

11.4

5.1

1.8

9.9

その他

86

5

1

6

22

52

44

42

28

58

3.5

0.7

0.8

2.5

9.7

4.7

4.4

2.9

4.2

3.3

 

2447

752

126

236

226

1107

1008

1439

668

1779

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

100.0

出典:日本監査役協会|【アンケート調査結果】「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスにおける実態について」|2019年

  • アンケート調査の実施期間は、2019年5月27日~同年6月7日

東証1部(現在のプライム市場)

全体が615社のうち7割程度が1000万円から2500万円程度の年収の範囲であることがわかります。一番多く占める割合が、2000万円から2500万円となっており、東証1部上場企業における常勤監査役の報酬相場の高さがうかがえます。

東証2部(現在のスタンダード市場)

全体が98社のうち63%程度が750万円から1500万円未満の相場の範囲であることがわかります。

新興市場(現在のグロース市場)では、全体が131社のうちおよそ4分の3程度が500万円から1250万円未満の範囲が相場であると考えられます。上記のような上場企業に対し、非上場企業では、およそ1000万円前後の750万円から1500万円程度の範囲が過半数を占めています。

IPO準備段階の企業

89社中25社のおよそ30%弱の企業が250万円から500万円未満という範囲の報酬であるということがわかります。

最も多いのは、500万円から750万円未満の31社(34.8%)です。おおむね、1000万円未満の報酬相場が4分の3を超えています。IPO準備段階の企業では、資金力や事業規模も成長途上にあることから、上場企業に匹敵するような報酬相場までは期待できないものと考えられます。

他方で、上場した段階で時価総額も上昇するのが通常と考えられることから、上場前の段階での報酬が上場企業に比べて低かったとしても、将来的な収入に還元される可能性があることからすれば、一概に低いものと断言はできないともいえるでしょう。

このように、常勤監査役の報酬相場は、上場企業と未上場企業によって差が大いにみられるところであるといえます。

常勤監査役の報酬内容section

常勤監査役の報酬は、どのように支払われるでしょうか。

基本報酬

月額の監査報酬という形で金銭で振り込まれるのが通常です。もっとも、将来的には、従業員のデジタル払いも認められる方向性であることから、役員報酬についてもデジタルによる支払が認められる可能性も十分にあると考えられます。

厚生労働省の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)分科会は26日、給与をデジタルマネーで支払う制度の導入を盛り込んだ労働基準法の省令改正案を了承した。労働者側の同意がある場合などに限り、企業側はデジタルマネーで給与の支払いができる。省令は11月に公布し、2023年4月に施行する。

参考:デジタル給与、23年4月解禁 厚生労働省|日本経済新聞 2022年10月26日

ストックオプション

ストックオプションによる支払も考えられます。ストックオプションは、役位にゃ従業員の報酬を業績連動型の手法として、新株予約権を発行することをいいます。

ストックオプションには様々な種類がありますが、通常型とされる無償ストックオプションの中でも税制適格ストックオプションと呼ばれるタイプのものが広く利用されています。ほかにも有償ストックオプションや信託型ストックオプションがあります。

それぞれにメリット・デメリットがありますが、詳細は下記の記事をご覧ください。ただ、監査役の場合には、取締役の職務執行の監査を本質とすることから、職務執行の業績に連動する形の報酬体系は監査役の職務執行の適性を確保する上で妥当でない

常勤監査役の報酬を決める上で基準となる要素section

常勤監査役の報酬を決定する上で基準となる要素はどのような点でしょうか。3つのポイントから解説していきます。

ポジション

まずはポジションです。監査役は、会計監査の業務監査の2種類があり、基本的に常勤・非常勤に関わらず両方の側面に基づく職務執行が求められます(会計監査に限る旨の定款の定めがある場合は別です)。

しかし、ポジションは、この後述べるバックグラウンドとも関連して、会社がどのようなポジションでの職務執行に重きを置くか、取締役会の役職構成、重要視する職務とバックグラウンドとの関連性、社内の組織体制や人材の力量によって左右されます。

財務・会計の面からいえば、監査役が会計監査を職務とする以上基本的に会計面でのスキルを持ち、専門性の高いポジションの人が求められます。その人材の代表例は、公認会計士が考えられます。

他方で、取締役会の役職構成の中で、CFOポジションの人材がいれば、監査役のポジションとして会計士有資格者を確保する必要まではなく、他社でCFOを務めている経営人材のほか、企業法務について十分な経験を有する弁護士などであっても対応可能であるとも考えられます。

あるいは、会計監査人を設置していれば、監査役のポジションには会計以外のポジションとして、法務や情シス、IT監査というポジションも考えられます(いずれも、企業会計についての一般知識があることは前提になりますが)。

上記のようなポジションの違いとともに、想定されるコミットメントによって報酬も高低が生まれます。

バックグラウンド

バックグラウンドは、すでに述べたようにポジションとも関連して重要な要素になります。会社の経営戦略、ガバナンス体制の現状や事業の性質上、どのようなスキルやバックグラウンドを持つ人材を確保するかという視点が重要になります。

弁護士や会計士などの士業資格者といった専門人材は、特に取扱分野や過去に取り扱ってきた案件における専門性の有無・程度、スキル面での特殊性や付加価値の高さによって、報酬が左右されます。

管掌する職務執行の内容

ポジションやバックグラウンドを踏まえ、管掌する職務執行の内容も報酬を左右する要素です。取締役会の構成や機関設計によって、監査役としての職務執行として想定される内容が異なります。

会計監査人が設置されている会社であれば、経理部が作成する会計帳簿や計算書類のチェックなどを会計監査人が主導的に行うことになります。そのため、常勤監査役も、会計面での平常業務は相対的に少なくなり、業務監査の比重が増します。その場合は、業務監査において常勤監査役が求められる業務の内容と、経験やバックグラウンドとの関連性によって報酬が左右される可能性が高くなります。

主として管掌する職務の内容がどのようなものかは、常勤監査役の報酬を決定する上で視点となる要素の1つです。

実際の常勤監査役の報酬例section

実際の常勤監査役の報酬例について、3つほど紹介していきます。

NECの場合(東証プライム上場企業)

電子機器等メーカー最大手の一角であるNECは、監査役が6名(うち社外監査役が3名)という体制です。同社の2021年度の役員報酬について、監査役の報酬総額は1億700万円とされています。

頭数だけで割っても一人あたり1100万円程度はあり、常勤監査役であれば相対的に高いことからおよそ1500万円は下らないものと考えられます。

ソフトバンク

通信大手の1つであるソフトバンクですが、常勤監査役の報酬総額は1800万円とされています。常勤監査役は2名で、うち1名が社外監査役です。そのため、社内の常勤監査役は、およそ1000万円前後の役員報酬があると考えられます。

住友林業

建築、木材・林業で有名な住友林業では、常勤監査役の報酬総額は4800万円とされています。常勤監査役は2名とされていることから、頭数で割ったとしても2400万円です。2000万円はくだらない年収の報酬であると考えられます。

非常勤監査役(社外監査役)の報酬との比較section

常勤監査役の報酬は、非常勤監査役の報酬と比較した場合、どのくらい相対的に報酬が高いのでしょうか。

非常勤監査役とは

非常勤監査役は、常勤監査役以外の監査役のことをいい、ほかの会社などでも常勤とする仕事先があるなどの場合は非常勤監査役とされることも多いです。

非常勤監査役との違い

端的には、非常勤監査役の場合、常勤監査役の場合と比べてコミットメントが少ないことが挙げられます。基本的には、定例の役会への出席のほか、常勤監査役の補佐業務として分担した監査業務を行います。

また、社外監査役であることも多いため、より専門性の高い外部人材を登用することがあります。

非常勤監査役の報酬の相場との比較

非常勤監査役の報酬(社外監査役の場合)は、先ほども参照した日本監査役協会による調査によると、中央値が200万円から500万円であるとされています。

参照:日本監査役協会|【アンケート調査結果】「監査役の選任及び報酬等の決定プロセスにおける実態について」|2019年

上場企業と非上場企業の比較では、上場企業ではおよそバラつきなく200万円から500万円未満の範囲に集中しています。

非上場企業では、200万円までの範囲が過半数です。500万円未満まで広げても、41.5%ほどの割合を占めています。合わせると、500万円未満までの年収の範囲で、実に95%を占めていることになり、非常勤監査役の報酬は500万円までが相場であると考えられます。

非常勤監査役の場合と比較すると、常勤監査役は、報酬は倍近く高いことがわかります。そして、幅としても数千万円に及ぶケースもあることから、常勤監査役の報酬はより高い収入を得られる可能性が高いと考えられます。

常勤監査役の報酬決定に関する問題点section

最後に、常勤監査役の報酬決定における問題点について、解説していきます。

独立性確保

1つは独立性確保の問題です。監査役は、会社法上の理論およびコーポレートガバナンスの視点から、報酬決定の過程と具体的な内容について業務執行に関わる立場の人との関係で客観的かつ独立の立場を保持する必要があります。

特に常勤監査役は、平常業務で社内への関わりも一定程度あるところ、その独立性を担保する1つの制度として報酬における独立性が求められます。社内人材から登用する場合、それまでの給与との兼ね合いで相場が異なることにより、候補者のインセンティブがそがれてしまうおそれもあります。

社内規程で整備されているのが通常ですが、中小企業を中心に役員報酬規程の整備が十分でない場合は、報酬決定のプロセスにおいて、業務執行の評価などとは切り離した形で監査役としての職務との関係で標準的で客観的な裏付けに基づいて行うことが重要です。

顧問報酬との区別

顧問弁護士、会計士、あるいは税理士などが監査役に就任する場合もありますよね。その場合、顧問報酬の決定の仕方や基準とは区別する必要があります。

顧問報酬の決定に際しては、特に明確な報酬体系を確立していた場合はさておき、個別の交渉で決定することもあります。顧問報酬を決めた際には、業務執行にかかる顧問業務の対価としての側面から、独立性が確保されないおそれも生じます。

そのため、顧問報酬の体系とは区別して、監査役としての報酬を決定していくことが求められます。

まとめ

常勤監査役は、会社において平常業務における監査の職務執行を行う地位の監査役で、監査機関として中心的な存在です。報酬は、相場の範囲が広く、およそ500万円から1500万円という幅があります。もっとも、この幅は上場・未上場の区別や企業規模、ポジションや求められるスキルなどの内容によっても異なると考えられます

報酬に幅がある常勤監査役ポジションへの転職に際しては、転職エージェントの活用が効果的です。

特に弁護士のような専門性の高い人材であれば、そのスキルセットを活かし、それに対して正当な評価を報酬に反映させる必要があります。その際には、弁護士業界に精通した転職エージェントがおすすめです。

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社外役員選任チーム

MAGAZINE編集部

上場支援、CGコードの体制構築などに長けた、専門性の高い「弁護士」を社外取締役候補としてご紹介。事業成長とガバナンス確保両立に、弁護士を起用したい企業様を支援している。