社外監査役の選び方と選任時の注意点|具体的な探し方や選任手続きについても解説

MAGAZINE編集部のアバター
社外役員選任チーム

MAGAZINE編集部

  • twitter
  • facebook
  • line
  • linkedin
  • URLcopy

社外監査役を選任する際、企業としてはどのように人材を探せばよいのか、悩む経営者は多いかと思います。また、候補者に適したバックグラウンドの見極めは、企業の事業フェーズ、規模によっても異なりますし、客観的にみてどのような場合にどのような人材が社外監査役として必要になるのか、検討する点は多岐にわたります。

今回は、社外監査役の選び方について、徹底解説していきます。

目次
EXE
EXE

上場企業等での社外役員経験や非常勤監査役経験を持つ専門家をご紹介。社外役員兼務社数4社以下、経験年数10年以上、女性社外役員など、700名以上のプロフェッショナルとマッチングが可能です。

社外監査役を選任すべき企業の特徴section

社外監査役を選任する必要があるのは、どのような場合でしょうか。

監査役会設置会社であること

会社法上、監査役会設置会社である場合に、社外監査役の選任が必要になります(会社法335条3項)。

 第三百三十五条
3 監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。

引用元:会社法335条3項

つまり、監査役会設置会社では、社外監査役の選任が最低2人以上必要になります。また、機関設計の種類として、単なる監査役会設置会社である場合と、大会社かつ公開会社の場合の大きく2種類があります。

後者の場合は、監査役会の設置が義務付けられるため(328条1項)、結果として、上記のように最低2名以上の社外監査役の設置が必要になります。

第三百二十八条 
大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。

引用元:会社法328条

会社法以外の要請

法律上求められる場合のほかに、社外監査役の選任が必要になる場合はあるのでしょうか。株式を上場するにあたっては、例えば東京証券取引所(以下、「東証」という。)において、その定める上場条件(有価証券上場規程)の定める基準を満たす必要があります。

東証の上場規程には、次のようなものがあります。

(上場内国会社の機関)
第437条
 上場内国株券の発行者は、次の各号に掲げる機関を置くものとする。
(1)取締役会
(2)監査役会、監査等委員会又は指名委員会等(会社法第2条第12号に規定する指名委員会等をいう。)
(3)会計監査人
2 前項の規定にかかわらず、グロース上場内国会社は、上場日から1年を経過した日以後最初に終了する事業年度に係る定時株主総会の日までに同項各号に掲げる機関を置くものとする。
一部改正〔平成21年8月24日、平成25年7月16日、平成27年5月1日〕

引用元:上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則

太字の部分によれば、上場するためには、取締役会や会計監査人の設置のほかに、監査役会、監査等委員会または指名委員会等を設置する必要があります。そうすると、437条2号に関しいずれかの選択肢を取る必要があり、仮に監査等委員会または指名委員会等の選択肢をとらない場合には、監査役会設置会社を採用し、社外監査役を選任する必要があります。

したがって、上場を目指す場合、有価証券上場規程に基づき、特に委員会設置会社を採用しない場合には、結果として社外監査役の設置が必要になります。

社外監査役の選任手続きsection

社外監査役を選任する際に経るべき手続は、どのようなものでしょうか?

監査役と同様に株主総会で選任

社外監査役も監査役であることから、その選任には、株主総会の手続をとることになります(329条1項、309条1項)。

選任時の注意点

監査役になることができない者について、注意する必要があります。まず、法人のほか、成年被後見人等の場合、一定の犯罪について有罪判決を受け刑の執行を受けてその執行が終わり又は執行猶予期間終了から2年経過していない者(335条1項、331条1項各号)が挙げられます。

また、当該会社もしくはその子会社の取締役もしくは支配人その他の使用人でないことも必要になります。そして、とりわけ、社外監査役の場合には、社外性要件を満たす必要があります(会社法2条16号)。

第二条
十六 社外監査役 株式会社の監査役であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するものをいう。
イ その就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員。ロにおいて同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。
ロ その就任の前十年内のいずれかの時において当該株式会社又はその子会社の監査役であったことがある者にあっては、当該監査役への就任の前十年間当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与若しくは執行役又は支配人その他の使用人であったことがないこと。
ハ 当該株式会社の親会社等(自然人であるものに限る。)又は親会社等の取締役、監査役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと。
ニ 当該株式会社の親会社等の子会社等(当該株式会社及びその子会社を除く。)の業務執行取締役等でないこと。
ホ 当該株式会社の取締役若しくは支配人その他の重要な使用人又は親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者又は二親等内の親族でないこと。

引用元:会社法2条16号

社外監査役の選び方と選任時の注意点とはsection

社外監査役の候補を選ぶ際には、どのような悩みどころがあるでしょうか。法の定める社外性要件などとは別に、実質的な面で、候補を選任する際の基準となりうるようなポイントでもあるので、いくつか見ていきます。

スキルセット

まずは、監査役としての職務に必要なスキルセット・バックグラウンドを有していることの判断が挙げられます。そもそも、ここにいうスキルセットやバックグラウンドがどのようなものか、正確に言語化できていないような場合も少なくないでしょう。そこで、以下、ポイントとなる4つのスキルセットについて、特に解説していきます。

事実調査能力

まずは、事実調査能力です。会社は、日々事業活動において、様々な取引、会計処理などの様々なオペレーションがあります。個々のオペレーションの中で、例えば契約締結の際には、契約書のチェックなど雑多のものがありますが、それぞれの中で、営業部を中心に現場で問題になったような案件については、事実調査を行う必要があります。

また、社内の内部通報があった場合にも、事実関係の調査を正確に行うことで、適切な善後策を取ることができます。迅速かつ正確な事実調査能力は、監査役の職務の上で重要なスキルセットになります。

事実認定能力

収集した事実や証拠をもとに、事実を認定していく能力も重要になります。取締役の業務執行において、何らかの不祥事、不適切なものがあった場合、①の事実調査をした上で、合理的な経験則をもとに、正確に事実を認定して把握する必要があります。

上記①は、事実を認定する根拠となる情報収集能力という側面があるため、②は、そこから情報が持つ意味を論理則、経験則に基づき的確に認定していく能力が必要になります。

文章作成・書類作成能力、プレゼン能力

上記①や②を経て、最終的には、それをステークホルダーや会社内外の関係者に報告などするために、文章で表現する能力、書類作成能力が必要になります。そこでは、専門的な用語はもちろん、場合によってはプレスリリースをするなどして、広くユーザー・消費者、一般人に伝わりやすい形で表現する能力が重要です。

そのためには、ある種のプレゼン能力というのも、監査役としての適格を判断する上での基準となるでしょう。

実績

監査役にふさわしい実績を有するかどうかも、悩ましいポイントですよね。どのような経歴に着目すればよいのか、特に弁護士を選任する場合であれば、専門分野も似たり寄ったりで、どのように善し悪しが分かれるのかという点も定かではありません。

社外監査役としての業務、ポジショニングの取り方としては、社外監査役の歴任がある人物などが考えられます。また、基準として、会社の事業規模やフェーズに近しいところで活躍していた人材であるかといった点も、1つのポイントになるでしょう。

報酬

人件費という点で、社外監査役人材の報酬をどのように考えるかは重要なポイントですよね。報酬の相場などは、別の記事でもご紹介しているので、そちらをご参照ください。悩みどころとなるポイントの概要を若干解説すると、上記のようなスキルセットや実績をどのように報酬に落とし込むかという点です。

企業価値を高め、事業の収益性を高めることを志向する上では、業績が典型的な1つの基準となります。もっとも、業務執行を担当する取締役とは異なり、業務執行の外面的な部分にアプローチして職務を行う監査役の評価は、定量化が困難な側面があります。

特に、監査役の職務の独立性を確保するためには、業務執行そのものとの関係で切り離されていることが望ましいため、業績連動型の報酬はなじみにくいと考えられます。

報酬については、上記のようなポイントを検討していく必要があります。

社外監査役の選任に適切な人材とはsection

社外監査役に適している人材には、どのようなものがあるでしょうか。

公認会計士などの会計・監査経験者

会計人材は、特に会計監査の側面から、最適な人材候補といえるでしょう。具体的には、公認会計士が考えられます。また、税務の側面を含めるのであれば、税理士や、税務分野に精通している弁護士も含めてよいでしょう。

会計・財務については、会計士とのダブルライセンサーであるようなケースを除いて、法務のプロフェッショナルである弁護士の専門分野とは外れることになります。

会社の事業活動における様々な数字をどのように系統立てて処理し、財務の正確性・透明性を図るかということは、会社の事業活動の上で非常に重要ですよね。

特に、資本政策の側面からは、会社の財務状態が正確かつ公正に、そして透明性が確保されていることは、投資家にとっての信頼の尺度になります。また、M&Aにより事業の多角化と拡大を図る上でも、他社との関係で、円滑に取引を進め、友好的な関係を築く上でも重要なファクターになります。

そして、会計士も、弁護士と同様に、高度の専門性と職務の独立性があります。そのため、特に社外人材として、客観的かつ独立の立場から適正に職務を遂行し、役割を全うすることが期待できます。

したがって、優秀な会計士人材は、社外監査役に最適の人材の1つであるといえます。

弁護士など企業法務経験者

まずは、法務人材が考えられます。典型的には、弁護士です。社外監査役は、社外性ないし高度に独立性が確保された立場から、経営陣である取締役の業務執行の適法性を監査する(業務監査)とともに、会社の会計書類の適正妥当を監査する会計監査の2つの職務があります。

特に社外監査役は、高度な客観性と専門的知見に基づき、社内のコンプライアンス体制やガバナンス体制を整備する必要があります。こうした体制整備のためには、会社法のほか、東証の定めるコーポレートガバナンス・コードなどの様々な基準に目を通し、規範として体系化されたものを正確に解釈して、実際に運用していく能力が求められます。

リーガルマインド

こうした能力は、リーガルマインドと呼ばれるものですが、リーガルマインドを身に着けた人材は、弁護士等の法曹人材に勝る者はいません。例えば、何らかの不祥事があった際の対応としては、事実調査能力、事実認定能力、そして事態の顛末を正確に発信する文章作成能力が必須となります。

事実調査能力は、様々な人の証言や物的な証拠を収集し、それらを系統立てて整理することです。これには、弁護士のヒアリング能力、証拠収集能力が発揮されます。

また、事実認定能力は、訴訟手続に関するロジを熟知している弁護士等の法曹人材の有する能力です。さらには、再発防止策を適切に提示する能力を有する人材が有用です。これには、企業法務の中でも、特に不祥事対応などを専門とする弁護士であれば、なおよいといえるでしょう。

弁護士以外にも、隣接する法務関係資格保持者としては、社労士、行政書士、司法書士が考えられます。それぞれに専門性はありますが、弁護士の包括的な専門性に比べると、部分的なものにとどまります。

労務あるいは各種専門手続に関する知見を事業に活かすのか、あるいはジェネラルに法務の専門性を要求するのか、自社のニーズをしっかりと分析したうえで検討することが必要になります。

取締役経験者などの経営人材

経営人材も、社外監査役に最適な人材の1つといえるでしょう。経営人材であれば、特に、業務監査、コンプライアンスやガバナンス確保の観点から、職務で実績を残した人材であれば、最適であると考えられます。

例えば、過去に不祥事対応で、会社を再建させたような実績があるような場合であれば、経営陣の立場から、どのように監査役らと連携を取り、緊急的な対応を取るのかについて有益な知見を有すると考えられます。

加えて、社内のガバナンス確保のための体制構築は、一種の経営判断としての側面もあり、単に専門的なスキルや知見から監査役に適していることのほか、取締役の立場でありながら、職務を客観視できるような経験をした人材も有用です。

社外監査役の候補の探し方section

最後に、社外監査役の候補の探し方について、解説していきます。

弁護士会・日本公認会計士協会の候補者名簿を利用

1つは、社外役員候補者名簿の利用が考えられます。例えば、弁護士であれば、弁護士会が作成しているデータベース的なものとして、社外役員候補者名簿がありますし、社外監査役に公認会計士を選任したい場合は、日本公認会計士協会が、候補者名簿の提供をしています。審査基準などが公表されているものではありませんが、企業法務に精通し、得意とする専門家が数多く登録しています。

弁護士や会計士などの専門人材へのアクセス、信頼のある公的な機関を通じた形で探すのであれば、こうした候補者名簿の利用がおすすめです。

日本公認会計士協会
日本弁護士連合会

エグゼクティブサーチ・エージェントの利用

次に、転職エージェントが挙げられます。転職サイトとのタイアップである場合が通常です。正社員等の場合はもちろん、役員・社外役員の求人を紹介してくれるところも多々あります。転職エージェントでは、紹介できる求人数も多く、手広く探したい場合には適しているといえます。もっとも、エージェントの力量による側面もあるため、一長一短があります。

エグゼクティブサーチサービスの例

EXE[エグゼ]:社外監査役経験のある公認会計士の選任サービス
顧問、専門家などのアドバイザー紹介サービス - 【i-common】
リソースリーガル株式会社

社外役員マッチングサイトの利用

最後に、最近注目されているのが、社外役員マッチングサイトです。

社外役員候補者のデータベースがあり、企業側が、条件や待遇をもとに候補者を選定しマッチングした上で、様々な交渉やその周辺業務を仲介するサービスです。

企業側も候補者側も、手軽に登録や候補者の探索をすることができる点に魅力があります。そして、DRSという方式を採用するマッチングサイトもあり、エージェントを挟むことなく直接交渉したい、中間マージンのリスクを回避したいといったニーズに応える合理性があります。

特に、社外役員マッチングサイトの中でも、専門人材に特化している場合もあります。上記でもご紹介したように、社外監査役には弁護士の適性が高いですが、EXE[エグゼ]では、弁護士に特化した人材紹介のマッチングサービスを提供しております。

社外役員マッチングサイトの詳しい説明は、当サイトのこちらの記事でも解説しております。

まとめ

社外監査役の選任のポイント、選び方について解説してきました。様々悩みどころとなるポイントがありますが、裏を返せば、より細かく条件を整理して、優秀な人材とマッチングをするチャンスでもあります。

その条件整理や、選び方のポイントを確認するために、参考になれば幸いです。

  • URLcopy

上場支援、CGコードの体制構築などに長けた、専門性の高い「弁護士」を社外取締役候補としてご紹介。事業成長とガバナンス確保両立に、弁護士を起用したい企業様を支援している。

maillogo

無料のメールマガジン登録を受付中です。ご登録頂くと、「法務・経営企画・採用戦略などのお役立ち情報」を定期的にお届けします。