LPO(リーガルプロセスアウトソーシング)とは|企業法務に携わる弁護士の新しいリーガルサービスの形

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旭合同法律事務所

川村将輝(弁護士)

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LPOとは、Legal Process Outsourcingの略で、企業その他の団体における法務業務の外部委託をいいます。ALS(Alternative Legal Service)と呼ばれる場合もあります。

企業では、法務に関して、都度リーガル面で困った時に対応を相談するための顧問として顧問弁護士を置くことや、企業内に法務人員を置き、あるいは法務部を立ち上げるといった形でリソースを投下します。

また、企業内の法務人員は、雇用契約に基づき特に弁護士等の専門資格を持たない人を充てる場合もあるほか、社内弁護士という形で弁護士有資格者を採用する場合もあります。

※社内弁護士は、JILA(日本組織内弁護士協会)の統計資料によると、2023年6月の段階で3000人を超え3184人に上っており、企業における弁護士の需要が継続的に伸びていることが窺われます。

参考:企業内弁護士数の推移(2001年~2023年)

一方で、弁護士の働き方として、正社員で1つの企業に入って活躍するだけでなく、フリーランス的に複数の企業からの法務を受託するLPOが注目されています。

この記事では、近時注目されるLPOについて、LPOサービスとは何か、具体的なサービスの内容や特徴、メリット・デメリット、類似サービスとの比較や実際の例などを幅広く解説します。

本記事のポイント
  1. LPOとは、リーガルプロセスアウトソーシングのことで、いわゆる法務受託と呼ばれる新しい企業法務サービスである。弁護士によるリーガルサービスとして、比較的新しいものとされる
  2. LPOでは、顧問弁護士よりも高いコミットメントや、ビジネスサイドへの関わりがあり、能動的なリーガルサービスである。対応業務も、日常的な法務業務や事業のオペレーションに関わることもある
  3. LPOでは、今後企業側のフルコミットに対するニーズとのギャップをどのように埋めるかといった点が課題となる。弁護士側のリーガルサービスのパッケージや、業務設計をどのように工夫していくかが重要である
目次
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LPO(Legal Process Outsourcing)サービスとはsection

LPOサービスは、そもそもどのようなものでしょうか。

LPOとは~顧問でもインハウスでもない第三の企業法務の形

通常、企業の法務組織は、一部門として法務部門を立ち上げ、あるいは管理部門の一員として法務担当を社員として採用するなどして組織していきます。

冒頭で述べた通り、それは弁護士有資格者であるか否かを問わないものであり、弁護士資格等の有無にかかわらず多くの人材が活躍しています。

そして、弁護士が企業をクライアントとして関わる場合の形は様々ありますが、古くからは顧問弁護士が一般的だったところ、企業の正社員として安定した福利厚生などを求めて就職するといったケースが増えました。現在ではベンチャー企業を中心に法務の需要が増加し多岐に渡る企業案件も経験できるため、キャリアの形としていわゆるインハウスローヤーが一層増えています

一方で、副業・複業が浸透している中で、企業内弁護士も、社員として働く傍ら弁護士業務をしたり、資格を活かしたキャリアを継続的に行いたいというニーズもあります。

LPOに注目が集まる背景

弁護士の企業等のビジネス法務クライアントに対するサービスのあり方として、LPOに注目が集まっています。

従前の顧問弁護士のあり方は、受動的な対応が主であって、稼働しない場合でも「困った時にいつでも法律相談に応じられる窓口」という提供価値を軸として成り立っていました。

しかし、情報が民主化されて検索である程度リーガル面の専門知識も手に入る自体になり、さらには2020年代からDXの波もあり、AIの普及が加速したことで、リーガルインフォメーションの提供は、コモディティ化している状況にあります。

受動的なサービス設計、リーガルサービスとしての価値の在り方が問われています。

一方で、企業内弁護士としての経験を活かし、より多くの企業への関わりを増やす意味でも、企業クライアントを増やしたいというニーズもあるでしょう。そして、実際に幅広く、様々な業種や事業ステージの企業と関わる中で、法務として提供できるサービスの幅も広がっていく側面があります。

フィーの面では、顧問という受動的な立ち回りよりも、コミットメントにより競争優位性を高めつつ提供価値を増やして、顧問よりも高い報酬設定ができる形が考えられます。

そこで、顧問でもない、社内弁護士でもない、法務受託・LPOサービスが注目されているのです。

LPOサービスの市場規模

実際に、LPOサービスの市場規模は非常に可能性があるものとされています。グローバルな視点でみると、LPOサービスの市場規模が世界全体で346億ドル程度の規模で拡大していくとの予測があります。

※ここにいうLPOは、上記のような弁護士の提供するリーガルサービスの側面に限られず、いわゆるリーガルテックプロダクトなども含まれています。

参考:リーガルプロセスアウトソーシング(LPO)サービスの世界市場 2023-2027

日本でもLPOサービスの波は今後拡がっていくことでしょう。

LPOサービスの特徴3つsection

LPOサービスは、具体的にどのようなものでしょうか。まずはその特徴について3つ解説していきます。

弁護士の実稼働が多い

タスク発生の起点に関しては様々なパターンが考えられますが、基本的に実稼働することを前提とするのが、LPOサービスです。顧問契約と対比した場合には、顕著な違いとして表れます。

業務や相談案件が発生した場合に適宜タスクがアサインされる形があります。この場合は、業務管理や交通整理をする担当者から、ウィークリーか、デイリーで都度タスクがアサインされるイメージです。

契約前の段階で、どの程度の業務量か、案件の数、種類やパターン、内容などについてすり合わせをした上で、大まかな稼働時間を見積もった上で、アサインされたタスクを処理していくことになります。

探索型・提案型の場合もあります。平常業務として、ルーティン的なタスクを処理しつつ、業務の中で気づいたイシューや課題に対して、パッケージとして業務を提案していくイメージです。

コンサルティング的な側面の業務を設定している場合は、こうしたケースも考えられます。内部統制やガバナンス体制の構築など、中長期的な法務課題に対してのアプローチを含めて依頼される場合には、提案型でプロジェクトを提案して推進していくことになります。

筆者が経験する中では、後者の業務に面白みややりがいを感じます。

社内のコミュニケーションツールに常駐し、出社対応も

顧問契約などでは、比較的経営層からの直接の依頼であったり、法務部からの依頼に基づいて動くことがあります。法務受託では、企業内の一員として社内の現場の人とも協働して業務を行います。まさに法務部・法務担当としての位置づけが与えられるためです。

そこで、社内のチャットツールに常駐し、メンションされればタイムリーなレスポンスが求められます。また、業務内容によっては、押印などで実際にオフィスでの業務対応をすることも想定されます。

さらには、円滑な業務遂行のためのコミュニケーションの一環として、業務外でも、実際に出社して社員との懇親を深めることもあります。

より事業のオペレーションの現場に近いところでの仕事になるため、こうした特徴が見られます。

リーガルイシューに対してではなくパッケージの業務として関与

受動的なリーガルサービスにおいては、基本的に経営層の議論、あるいは社内の法務担当者の中でリーガル面の問題点が整理された上で、必要な情報が予め与えられた上で解を求められることがあります。

法務受託においては、法務業務が予め抽象的なパッケージとして存在していて、直接事業部や現場の案件に触れて、業務フローの下流から業務に関わっていくことが特徴です。

必要に応じて、様々な部署との調整を行いつつ、プロジェクトとして推進し、そのPM的なポジションで実際にタスクを分解したりマイルストーンを組んで業務をアサインして、進捗を管理して遂行するマネジメントを行うことも法務受託の特徴として挙げられます。

LPOの主なサービス内容section

より具体的には、法務受託においてどのようなサービスがあるでしょうか。

契約業務や法務相談対応

基本的で、タスクの量としても多いのが契約業務や、社内における法務相談の窓口対応です。業種や事業のステージ、規模感、社員の年齢層など様々な要因で異なります。

契約業務は、契約書レビューや作成はもちろんのこと、個々の案件で契約交渉に関する業務を行うことがあります。法務担当として、クライアントの取引先との間でのMTG対応を行うこともあります。

扱う契約内容は、事業内容やビジネスモデル・スキームによって異なります。

法務相談対応は、個々の担当者のタスク単位のものから、事業部レベルの意思決定に関わるものや、経営上の意思決定に関わるレベルのものまで様々あります。

筆者が実際に対応している業務における例を挙げてみると、著作権などの知財・コンテンツ保護、事業アイデアの簡易なレビュー、広告法務、顧客からのリーガル面での指摘や意見に対する応答、トラブル調査、規制調査、規制所管庁からの問い合わせに対する対応などです。

コーポレート業務対応

コーポレート業務対応は、いわゆる機関法務であり、経営管理に関する法務面での業務です。具体的には、会議体(総会、役会)の運営業務、株主・株式管理、上場企業では開示業務対応、登記処理、ステークホルダーに対する窓口対応などがあります。

この業務は、法務受託先の企業のバックオフィスがどの程度整っているかによって、法務にとどまらない業務をカバーする場合もあります。

例えば、労務が手薄であれば労務管理に関する対応が考えられるほか、税務会計がいなければ、税務面で税理士とのやり取りや税務面の枠組みレベルでの設計に関する対応も考えられるでしょう。

M&Aの法務DDその他社内プロジェクトの法務サポート

工数が大きくなるものとして、M&Aの法務DDに関する対応の一部や、社内での新規事業の立ち上げや内部統制・ガバナンス体制の設計に関するサポートを行うことが考えられます。

いわゆる一人法務の場合であれば、法務組織の業務設計や要件定義などを行い、組織を設計していくことをプロジェクトレベルのものとして行うことも考えられます。

LPOサービスのメリット・デメリットsection

次に法務受託サービスのメリット・デメリットについて、表で整理していきます。ここでは、弁護士有資格者によるサービスを前提として、整理していきます。

メリットデメリット
対応スピード顧問よりもタイムリーなレスポンスをとってもらえる可能性がある受託者が抱える他案件とのリソース調整により、優先順位がつけられる
稼働効率稼働時間との調整を図りつつ、労務対価ではない形でパフォーマンスを引き出すことが可能費用の設計の仕方や、依頼業務との兼ね合いによっては、受託者のインセンティブに影響して稼働が落ちる可能性がある
費用面正社員よりもリーズナブルなフィーで、経験値が高い人材あるいは複数の弁護士からなる法務組織を組むことができる顧問契約よりも高額の固定費用になる可能性がある
コミットメント稼働時間のアローワンスの範囲内で、コミットメントを確保できる企業側が依頼したい法務業務をすべてカバーできない場合がある
ガバナンス上の内部効果社内常駐の弁護士がいて、チャットでもいつでも対応してもらえるという安心感特になし
ガバナンス上の外部効果法務担当者の存在により、一定のガバナンス体制があるとみられる業務委託という立場から、法務という重要なポジションの内製化が十分ではないとの見方になる可能性もある

LPOと類似法務受託サービス・顧問弁護士・インハウスローヤーとの比較section

法務受託を顧問やインハウスローヤーと比較した場合、どのような違いがあるのでしょうか。一覧表にまとめてみました。

法務受託顧問インハウスローヤー
契約形態業務委託、雇用契約顧問契約正社員(雇用契約)
コミットメント基本的に受動的だが、能動的に動くことも基本的に受動的能動的
稼働時間目安月あたり数時間から60時間程度月~10時間月160時間程度(それ以上になることも)
費用数万円から120万円程度数万円から30万円程度+タイムチャージによる超過稼働費用400万円~1000万円超えも
対応業務法務業務のセグメントによるパッケージごとでの対応 法務業務全般になることも都度の相談対応 内容によってタイムチャージなど制限なし
事業に対する関与度合い事業内部のフローに関わる、事業場の意思決定に関与していくこともリーガル面での問題が中心事業全体に関わり、内部的な意思決定に対して関与していく

法律事務所が行う実際の法務受託サービス例3つsection

法律事務所が行っている法務受託・LPOサービスはどのようなものがあるでしょうか。ここでは3つご紹介していきます。

法律事務所fork

法律事務所forkは、法務受託サービスを1つの柱に据えている事務所です。所属弁護士がそれぞれビジネスサイドに深くコミットした法務としての経験を強みとして、法務受託サービスを展開しています。

Authense法律事務所

Authense法律事務所は、ALSと銘打って、法務機能アウトソーシングサービスを提供しています。法務部員の人材不足に対する提案として、事務所所属弁護士によるALSチームとして企業の法務外注を担うサービスとして提供しています。

ライトプランでも44万円からという価格設定と、比較的プライシングは高いように思われますが、事務所の専門チームによる対応や取扱分野の広さが価格の裏付けになっているといえます。

法律事務所ZeLo・外国法共同事業

AI契約書レビューサービスにおいてトップクラスのシェアを誇るLegalForceとのタッグが強みの事務所です。最先端の事業分野における法務において専門的な知見や実績があります。法務受託サービスとして、10万円のライトプランから、50万円のエグゼクティブプランまで幅広いプランがあります。

LPO・法務受託サービスサービスの課題3つsection

最後に、LPOサービス導入にあたっての課題を3つほど端的に解説していきます。

正社員採用を望む企業側のニーズとのギャップ

多くの企業では、法務の採用の際にはフルコミットとして専任の担当者のセッティングを志向しているため、基本的に業務委託を前提に募集をかけている企業は、少数です。筆者の肌感覚としても、そういった現状です。

一方で、法務を採用する場合、人材の市場として法務人材はその専門性の高さなどから売り手市場で、採用に苦戦を強いられる企業は少なくありません。とりわけ弁護士を採用する場合には、フィーの面でも相対的に高くなる可能性があります。

また、弁護士の場合フルコミットではなく、個人受任を可として自分で他の案件を受けたいというニーズも多いことから、フルコミットの正社員を採用したい企業側のニーズとのギャップがあります。

LPOサービスは、そのギャップをどのように埋めていくかが今後の課題となると考えられます。

コミットメント

上記の点とも関わりますが、コミットメントをどのように確保していくかという点は課題であるといえます。顧問契約よりも、より稼働時間が発生することが想定されるため、弁護士側として他の案件とどのように調整するかが課題となると考えられます。

単価の大きい案件との関係で、どのように案件処理の調整をするのか、スピード感が求められる対応の中でクオリティを確保する工夫も必要です。

AIの発展によるリプレイス

また、AIによるリーガルサービスに対するリプレイスとも向き合う必要があります。リーガルテックの進展の中で、AIの進化とも重なって、ヒトが提供するサービスとしての法務受託サービスも、AIとの関係でその定義づけ、設計が重要になってきます。

AIが代替できない業務をどのように定義していくか、またその付加価値をどのようにクライアントに認識させていくかが今後の課題となるでしょう。

まとめ

今回の記事を3つのポイントにまとめます。

  1. LPOとは、リーガルプロセスアウトソーシングのことで、いわゆる法務受託と呼ばれる新しい企業法務サービスである。弁護士によるリーガルサービスとして、比較的新しいものとされる。
  2. LPOでは、顧問弁護士よりも高いコミットメントや、ビジネスサイドへの関わりがあり、能動的なリーガルサービスである。対応業務も、日常的な法務業務や事業のオペレーションに関わることもある。
  3. LPOでは、今後企業側のフルコミットに対するニーズとのギャップをどのように埋めるかといった点が課題となる。弁護士側のリーガルサービスのパッケージや、業務設計をどのように工夫していくかが重要である。
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司法試験受験後、人材系ベンチャー企業でインターンを経験。2020年司法試験合格。現在は、家事・育児代行等のマッチングサービスを手掛ける企業において、規制対応・ルールメイキング、コーポレート、内部統制改善、危機管理対応などの法務に従事。【愛知県弁護士会所属】

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