役員転職は、「そもそも採用枠が少ない」「企業から求められるハードルが高い」といった理由で難しいといわれています。
また、役員は企業経営に直接関わる立場であり、任期も定められています。そのため「辞任によって企業に与える影響が大きい」という部分も、転職が難しい要因のひとつでしょう。
とはいえ、もちろん転職自体は可能です。「自分の市場価値を明確化して企業にアピールする」「ハイクラス向け転職エージェントを活用する」といったポイントを押さえれば、役員転職は成功させられます。
本記事では、役員転職が難しい理由や円満退職に向けたマナー、おすすめの転職エージェントなどを解説します。
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関連記事:ハイクラスにおすすめの転職エージェント20選徹底比較|年代別の転職事情など解説
役員転職が難しい理由は?
役員転職が難しい理由として、主に以下が挙げられます。
- 採用枠が少ないため求人を見つけることが難しい
- 企業から求められるスキルや経験値のハードルが高い
- 転職先の役員や社員と慎重に信頼性を構築する必要がある
- 「退職〜転職先への入社」までに手間がかかる
- 現職以上の待遇を望めないこともある
採用枠が少ないため求人を見つけることが難しい
役員は限られた人材が就けるポジションであるため、採用枠自体が少ない傾向にあります。厚生労働省によるアンケート調査でも、「自社の役員総数は2人」と回答した企業が29.3%と最も高くなりました。
ポジション自体が少ないため、一般の社員と異なり「いつでも転職できる」というものではありません。求人が出されても希望条件とマッチしているとは限らないため、転職先を探すハードルは高いでしょう。
また、役員は企業経営に直接関わる重要なポジションです。公に募集すると、自社の社員に「現場の仕事方針が大きく変わるのでは?」と不安を与えるかもしれません。
そのため、非公開で募集しているケースもあります。求人自体が世に出なければ、転職先を探すハードルはさらに上がるでしょう。
企業から求められるスキルや経験値のハードルが高い
役員は企業の経営に直接関わるポジションです。そのため、転職先からは「企業の業績を改善するスキルはあるか?」「社員全体をマネジメントする器量はあるか?」など、一般社員より高度な能力を求められます。
「役員となって企業の業績を改善する」というのはハードルが高いため、転職を考えているなら、現職で目を惹くレベルの成果を残すことが必須といえるでしょう。
転職先の役員や社員と慎重に信頼性を構築する必要がある
企業の役員は、社内登用するケースが一般的です。たとえば、プライム市場上場企業における役員の社内登用の割合は「約54%」となりました。
社内登用の割合が多い中でいきなり外部の人材が採用されると、転職先の役員の中で抵抗感を覚える人も出てくるでしょう。
とくに「長年現場で出世競争を勝ち抜き叩き上げで役員になった」という人からは、外部登用によい印象を持たれないかもしれません。
役員転職の場合は、こうしたアウェーな状況下で慎重に信頼性を構築する必要があるため、要注意です。
参照:内閣府 | 企業における女性登用の加速化についてp.8
「退職〜転職先への入社」までに手間がかかる
役員は企業経営に関わる重要なポジションであるため、気軽に辞任できません。辞任届や役員変更登記などが必要なため、転職する本人だけでなく企業側にも手間が発生します。
また、転職先へ入社する際も、株主への説明や総会での承認などが必要です。
このように、役員が別の企業へ移る際は複雑な事務手続きが発生するため、転職のハードルを高めてしまうのでしょう。
役員を採用する際の具体的な手続きなどについては、以下の記事で解説しています。
関連記事:役員を採用するには?必要な手続きやどのような人材を選べばよいのかを解説
参照:法務局 | 株式会社変更登記申請書(取締役会設置会社で,役員(取締役・監査役)が辞任して,新たな役員が就任する場合)
法務省 | 役員の変更の登記を忘れていませんか?再任の方も必要です
現職以上の待遇を望めないこともある
現職ですでに役員として高待遇を受けている場合、転職先で同レベル以上の報酬を受け取れるとは限りません。
たとえば大手企業からスタートアップへ転職した場合、どうしても報酬は下がる可能性があります。
役員は企業全体の責任を負う立場であるため、「待遇を上げなければ見合わない」と考える人もいるでしょう。
そのような人にとって、「転職先で現職以上の待遇を見込めない可能性がある」というのはネックポイントです。
役員転職で求められるスキル
上記で解説したように、役員転職では企業から高度なスキルや能力を求められます。転職を成功させるには、具体的に求められるスキルを把握しブラッシュアップしておくことが大切です。
役員転職で必要なスキルは「スキルマトリックス」をもとに考えるとよいでしょう。
スキルマトリックスとは、取締役会に所属する各役員の保有スキルを、一覧表でまとめたものです。
一般的には企業側が作成します。各役員のスキルをまとめて自社に足りない分野を把握し、採用すべき人物像を明確化するというイメージです。
たとえば「ヤマハ発動機株式会社」は、以下のスキルマトリックスを公表しています。
転職希望先が、上記のようなスキルマトリックスを公表していれば確認しましょう。
スキルマトリックスの詳細な項目は、企業ごとで異なります。しかし、以下の9項目は基本として掲げられることが多いため、自分の保有スキルを考える際の参考にしてください。
- 企業経営
- マーケティング・営業
- 財務・ファイナンス
- IT・デジタル
- 人材・労務・人材開発
- 法務・リスクマネジメント
- グローバル経験
- ESG・サステイナビリティ
- DX(デジタルトランスフォーメーション)
具体的なスキルマトリックスの意義や項目の詳細などは、以下の記事で解説しています。
関連記事:スキルマトリックスとは|取締役の素養に関する主な項目とコーポレートガバナンス上の意義・注意点
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円満に役員転職するためのマナー
円満に役員転職するためのマナーは、大きく以下の5つです。
- 任期途中の転職は可能な限り避ける
- 法的に転職制限はないが「競業避止義務」は必ず確認する
- 同業他社への転職は慎重におこなう
- 転職活動は水面下でおこなう
- 前職が不利益を被る行為は絶対にしない
任期途中の転職は可能な限り避ける
法的に役員は、任期(取締役は2年・監査役は4年)途中でも転職は可能です。
しかし、任期途中で辞任すると、企業は急いで後任を見つけなければなりません。
また、後任が見つかるまでは役員としての権利・義務が残るため、自身の転職活動にも影響を与えるでしょう。
こうした現職への影響を考慮し、可能な限り任期満了後に転職しましょう。
参照:法務省 | 役員の変更の登記を忘れていませんか?再任の方も必要です
法的に転職制限はないが「競業避止義務」は必ず確認する
前提として、役員でも自由に仕事を選べるため、転職先に制限はありません。
しかし企業によっては、「一定期間は競合企業への転職を禁止する」といった競業避止義務を定めていることもあります。
そのため、必ず入社時や退職時の契約書を確認しましょう。契約書の内容によりますが、違反すると損害賠償を請求されたり退職金額を制限されたりすることもあります。
同業他社への転職は慎重におこなう
企業は、役員が同業他社へ転職することによる「自社のノウハウ転用」をリスクに感じています。上記の競業避止義務も、そうしたリスクを防ぐために定めているものです。
そのため、同業他社への転職は慎重におこないましょう。競業避止業務に違反してないとしても、転職が終わるまでは次の就職先を明かさないことが無難です。
転職活動は水面下でおこなう
役員の存在は企業の経営状態や業績に直結する部分であるため、転職の旨を公にすると社員へ動揺を与えるかもしれません。
なるべく日々の業務へ影響を与えないよう、役員の転職活動は水面下でおこないましょう。
前職が不利益を被る行為は絶対にしない
競業避止義務の有無に関わらず、以下のように前職が不利益を被る行為は絶対にNGです。
- 前職の顧客情報を転職先で利用する
- 前職から優秀な人材を無断で引き抜く
- 役員のみが知れる機密情報を転職先へ持ち出す
役員は企業経営に関わる重要なポジションだからこそ、上記のような不義理な行為をおこなうと、前職に大きな影響を与えます。
自身が与える影響の大きさを改めて自覚し、遺恨を残さずキレイな形で転職しましょう。
役員の範囲とは?自分が該当するか改めて確認しよう
一言で「役員」といっても複数の種類があるため、転職前に改めて確認しましょう。
法律で「役員」に該当するのは、以下3つのポジションのみです。
- 取締役
-
企業の運営に必要な意思決定をおこない、職務の執行を監督する。
- 監査役
-
取締役の職務が適切に執行されているを監査する。株主総会で選任される。
- 会計参与
-
税理士や公認会計士の資格を持ち、企業の会計関係を適切に管理する。他の役員とは独立した立場である。
執行役員は、あくまでも「一般社員のトップ」という位置付けであり、法律で定められた役員ではありません。
法的な縛りがないため、任期や人数などは企業が自由に設定できます。経営陣と現場をつなぎ合わせる「橋渡し」としての役割を持っています。
難しいといわれる役員転職を成功させるポイント
難しいといわれる役員転職を成功させるには、以下のポイントを押さえましょう。
- 自分の市場価値を明確に洗い出す
- 転職希望先の理念や企業風土が自分とマッチしているかチェックする
- 希望条件に優先順位を設ける
- 少しでも早く転職活動をはじめる
- ハイクラス向けの転職エージェントを活用する
自分の市場価値を明確に洗い出す
転職では、自分のスキルや経験を洗い出して市場価値をアピールすることが重要です。
とくに役員転職では「企業の業績アップに貢献できるか?」という面をシビアに見られるため、市場価値をアピールする重要性は高いでしょう。
今までの経験を振り返り、具体的な数値を交えつつ自分が達成した成果をアピールすることが重要です。
企業がスキルマトリックスを公表していれば、チェックしたうえで「転職先で求められるスキルを自分は持っているか?」を客観的に確認しましょう。
転職希望先の理念や企業風土が自分とマッチしているかチェックする
役員は企業経営に深く関わるポジションであるため、単純に業務内容だけでなく「組織の理念」「企業風土」などのチェックも重要です。
たとえば「外部登用した人材を受け入れられない人もいる」という雰囲気の場合、役員として転職するのは慎重になるべきでしょう。
また、経営方針が自分の理念と合っていない場合も、役員として働くのは精神的に大変かもしれません。
とくに役員は「雰囲気が合わないから」などの理由で気軽に転職できないため、入社後のミスマッチを減らすために、理念や企業風土をチェックする重要性は高いでしょう。
希望条件に優先順位を設ける
転職では、必ずしも希望条件すべてにマッチする企業を見つけられるとは限りません。
とくに役員の場合、「企業の規模が小さくなり報酬がダウンする」「最初は”役員候補”としての採用枠しかない」といったケースもあります。希望条件にこだわりすぎると、時間だけが経過し「任期満了のタイミングで転職する予定が先延ばしになる」といったことも起こりかねません。
上記のようななかで転職先を見つけるには、希望条件に優先順位をつけて「許容範囲」を決めることが重要です。
少しでも早く転職活動をはじめる
役員転職では、企業の業績アップに貢献できる高いスキルや能力が求められます。
ただでさえ企業からの期待値が高い中で、年齢も上がってしまうと、転職はどんどん難しくなるでしょう。
とくに役員は、任期満了タイミングでの転職が理想であるため、あまり長々と企業を探す時間はありません。そのため、現職に不満を感じたら少しでも早く転職活動をはじめることが大切です。
ハイクラス向けの転職エージェントを活用する
ハイクラス向け転職エージェントでは、「役員の求人」「高年収な求人」といったハイレベル求人を多数保有しています。とくに役員クラスの求人は非公開のケースが多く、自力で探すのは難しいかもしれません。
ハイクラス向けの転職エージェントなら、非公開求人も含めさまざまな企業を代わりに探してもらえます。日々の役員業務が忙しい人にとっても、企業を探したり応募したりする手間を減らせるのは魅力的です。
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役員転職でおすすめの転職エージェント3選!
役員転職でおすすめのハイクラス向け転職エージェントとしては、以下の3つが挙げられます。
- ビズリーチ
- NO-LIMIT
- LHH転職エージェント
- BEET
ビズリーチ

ビズリーチは、スカウト型の転職サービスです。職務経歴を見た求人企業の担当者や専用のヘッドハンターからスカウトが届くため、「現職の役員業務が忙しい」といった場合でも、気軽に活用できます。
役員ポジションを含め、ビズリーチだからこそ保有できるハイクラス求人と「待ちの姿勢」で出会える点が魅力です。
一般的な転職エージェントと異なり、企業の担当者と直接やり取りできます。そのため「求人企業に直接スキルや経験をアピールしたい」といった人にもおすすめです。
有料のビズリーチプレミアムにアップグレードすると、専用コンシェルジュに自身のキャリアを相談できます。
コンシェルジュが担当するのは「コーチングのみ」です。求人紹介には関わらないため、よりフラットな立場で自分のキャリアに関するアドバイスを受けられるでしょう。
公式サイト:https://www.bizreach.jp/
NO-LIMIT

弁護士や法務など、法曹業界出身者がハイクラス転職を目指すなら、NO-LIMITがおすすめです。
法曹業界出身者に限定した転職支援サービスを展開しており、キャリアを活かした転職が可能です。
働き方や希望条件が理解されづらかったり、一般公開されている求人が少なかったりと転職難易度が高い業界のため、ノウハウがあるアドバイザーと二人三脚で転職活動を進められるのはメリットです。
士業系の事務所などの専門業種のほか、一般企業のハイクラス求人も豊富です。まずはキャリア相談からはじめてみて、ご自身の理想を伝えてみてください。
公式サイト:https://no-limit.careers/
LHH転職エージェント
LHH転職エージェントのコンサルタントは、職種ごとの専任制で、さらに業界別に細かく分かれて転職サポートを実施しています。そのため、職種特有の転職事情やキャリアに詳しく、市場価値やスキル・経験に合った求人紹介に期待できるでしょう。
また、一人のコンサルタントが企業と求職者の支援を兼任する「360度式コンサルティング」が採用されていて、企業の特色や求職者の長所がダイレクトに伝わりやすいのが特徴です。実際に転職した方のうち、3分の2が平均101万円(※)の年収アップに成功しており、収入アップのノウハウに長けているのもポイントです。
(※)LHH転職エージェントの公式サイトより
公式サイト:https://jp.lhh.com/
関連記事:LHH転職エージェント(旧Spring・アデコ)の評判と口コミ
BEET

BEETは、管理部門に特化した求人を紹介している転職エージェントです。役員候補や上場企業の非公開管理部職種、IPO準備中のリーダーポジションなど、ハイクラスな管理部門の求人を保有しています。
年収の幅も600万〜2,000万円以上と幅広いため、現職より好条件な企業を見つけやすいでしょう。
担当エージェントも管理部門の業務や働き方を熟知しているため、求職者のキャリアをより正しく理解したうえで、精度の高いマッチングを実現できます。
また、採用見送りになることが多い面接についても個別対策できるため、難しいといわれがちな「役員を含めた管理部門への転職」を成功させられるでしょう。
公式サイト:https://beet-product.com/
役員転職でよくある質問
最後に役員転職でよくある質問をまとめました。実際に転職活動を進める際の参考にしてください。
任期途中でも役員は辞任できる?
法的には辞任できます。
とはいえ、役員の転職は企業に大きな影響を与えるため、できれば任期満了のタイミングで辞めたほうが理想です。
役員に転職制限はある?
法的に転職制限はありません。
ただし企業によっては、競業避止義務として「一定期間は同業他社への転職は禁止」などを独自で定めているため、入社時の契約書や退職時の誓約書などをチェックしましょう。
どんな理由で転職する役員が多いの?
役員転職の理由としては、主に以下が挙げられます。
- 上のポジションが詰まっており今以上の出世が望めない
- 企業の経営方針に納得できなくなった
- 出世競争が激しく人間関係が悪くなってきた
最後に | 転職エージェントを活用しマナーも守りながら役員転職を成功させよう
役員転職は「採用枠が少ないため求人を見つけにくい」「企業が求めるスキルや経験値のハードルが高い」などの理由で、難しいといわれています。
確かに役員は企業経営に関わるポジションであるため、一般的な転職よりもハードルは上がりやすいでしょう。
しかし、「市場価値を洗い出してアピールポイントを明確化する」「自分とマッチした理念や風土を掲げる企業を選ぶ」といったポイントを押さえれば、役員転職は成功させられます。
ハイクラス向け転職エージェントも活用しプロのサポートを受けることで、より転職成功の可能性を高められるでしょう。
役員転職をおこなう場合は、トラブルを避けるために「競業避止義務の内容を確認しておく」「前職が不利益を被る行為は絶対にしない」などのマナーを守ることも重要です。
サービス名 | 特徴 |
---|---|
ビズリーチ | スカウト型転職サービス。企業の担当と直接やりとりが可能。 |
NO-LIMIT | 弁護士など法曹業界出身者の転職支援を専門におこなう |
LHH転職エージェント | 大手企業や日系グローバル企業などのハイクラス特化した転職エージェント。 専門領域に特化した人材コンサルタントが在籍 |
BEET | 管理部門特化型転職エージェント。役員クラスの求人が豊富。 |