近年、政府が主導となって女性の活躍推進を進めていることもあって、役員比率における女性の割合を増やすための対応を迫られている企業は多いのではないでしょうか。
第2節 女性活躍推進法によって広がりつつある女性活躍推進の取組
1.女性活躍推進法の意義と特徴
(女性の活躍推進のための積極的改善措置(ポジティブ・アクション)の必要性)引用元:男女共同参画局
男女雇用機会均等法の施行から30年が経過し,法制度の整備は大きく進展したが,なお実態面での男女の格差は残っている状況にある。また,我が国では,女性は出産・育児等による離職後の再就職にあたって多くが非正規雇用になることなどが,雇用の不安定化や低賃金といった問題を生じさせるばかりでなく,キャリア形成を通じた女性の十分な能力の発揮を阻む一因となっている。
女性の就業率は,近年,大きく上昇したものの,就業する女性に比して,管理的職業に就く女性の数が欧米諸国等に比べ低い水準となっている。働く場面において女性の力が十分に発揮されているとはいえない状況であり,働くことを希望する女性が,その希望に応じた働き方を実現できるように社会全体として取り組むことが重要である。
また,少子高齢化の進展に伴い,将来の労働力不足が懸念される中,日本の持続的発展のために,企業の収益性・生産性を高めなければならないが,そのためにも,女性の活躍推進を早急に推し進め,女性の力を最大限に発揮していくことが喫緊の課題である。
ただ女性役員を増やそうにも、社内に現状ふさわしい人材がおらず、すぐの対応が難しいと悩む企業は少なくないかもしれません。社内に人材がいないのであれば、外部から招きたいところですが、女性で社外取締役が担える人を探すのもかなり大変です。
女性の社外取締役の登用に向いている手段とは、また社外取締役として活躍してもらうためにどのような点に気をつけるべきなのでしょうか。
この記事では、国内における女性役員の活用を紹介するとともに、女性社外取締役を選任するメリット・デメリットや登用のためのポイント、注意点を解説。また、女性社外取締役を探す際に役立つおすすめの人材紹介サービスも紹介するので、参考にしてみてください。
女性社外取締役を探す際に役立つ人材紹介サービス3つsection
女性で社外取締役ができる人を探しているものの、なかなか自社に合う人材がおらず、候補者探しが難航している企業は少なくないかもしれません。
社内のネットワークや伝手を頼るのにも限界があるでしょう。より広い範囲で候補者を見つけたいのであれば、社外取締役選びに特化した人材紹介サービスを利用するのがおすすめです。この項目では、女性社外取締役を探す際に役立つ人材紹介サービス3つ紹介します。
ExE(エグゼ)|弁護士・公認会計士資格持ちの女性役員
ExE(エグゼ)は、弁護士・公認会計士等の有資格者や事業会社でん社外役員経験を持った女性候補を、社外取締役・非常勤監査役として選任できるマッチングサービスです。弁護士や公認会計士は、専門性の高さから社外役員にふさわしい資質を持つとされていますが、個々人がどれだけの能力を持っているのか、一般の方が見抜くのは簡単ではありません。
また女性役員候補は数も少なく、既存のヘッドハンティングやダイレクトリクルーティングでも選任が難しいのが現状です。その点ExE(エグゼ)は、サービス登録している社外役員候補のうち約20%が女性であり、企業が抱える課題や状況に合わせて、企業経験やコーポレート・ガバナンスに関する知識など、高い専門性を有した人材の紹介が可能です。
公式サイト:https://exe-pro.jp/solution/woman/
プロフェッショナルバンク
国内最大級の規模を誇る経営人材、技術・専門職に特化したサーチ型ヘッドハンティングサービスです。希望者を募る登録型ではなく、サーチハンティング手法を用いて現役の社外役員または潜在層に対してアプローチを行うため、幅広い人材から候補者を探すことが可能。
多くの現役社外役員の方々と接点を保有しており、早急に就任決定させなければならないケースの対応も可能です。また、数年後を見据えた検討されていらっしゃる企業様に対しても人物要件のご提案から、進め方のプロセスコンサルティングまでトータルで支援しています。
Warisエグゼクティブ
さまざまな女性向けの人材サービスを提供するWarisが、運営する女性役員紹介サービスです。働く女性から高い注目を集めており、テレビや雑誌など多数のメディア掲載実績を持ちます。
その知名度の高さから、登録者数も多く、経営経験者のみならず、さまざまな領域で知見を持つ人材の紹介が可能です。
日本国内における女性役員活用の現状section
国内において女性の活躍推進が叫ばれている背景には、株式市場の強い要請があります。特に外資系の機関投資家が女性取締役のいない企業に対し、株主総会において反対票を投じる指針を表明していることもあり、上場企業にとっては喫緊の課題です。
そのような状況下のなかで、日本国内における女性役員の活用状況がどうなっているのかを確認していきましょう。
女性役員の登用状況
2013年に政界から経済界に対して、女性の役員登用を行ってほしいとの要請があったこともあって、2012年から2020年までの8年間で、上場企業における女性役員数はおよそ4倍も増加しました。4倍という数字だけ見ると、かなり増えたように思えますが、上場企業の男性も含めた全役員のなかでの割合でいうとたったの6%。
諸外国と比べてもかなり低い水準となっています。
また、3780社ある上場企業のうち、1984社が女性役員数ゼロ(2020年7月当時)。上場企業の半数近くで女性役員の活躍推進が進んでいない状況です。ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の規模が年々拡大していることを考慮すると、今後、企業が継続的に発展していくためには、女性役員の登用は欠かせないといえるでしょう。
女性の社外役員に多い経歴(属性)
いくら女性の活躍推進のためといっても、誰でも役員に登用できるわけではありません。株主が役員に足ると納得できるだけの人材を招致する必要があります。では、どのような経歴の女性が社外役員として招かれているかというと、主な属性は以下のとおり。
前歴、兼務先 | 人数 |
---|---|
弁護士 | 326 |
企業等 | 307 |
大学・大学院 | 127 |
公認会計士 | 110 |
税理士 | 31 |
省・庁 | 19 |
自治体・首長 | 9 |
司法書士 | 8 |
社会保険労務士 | 4 |
医師 | 3 |
その他 | 13 |
合計 | 957 |
(備考)
東洋経済新報社「役員四季報」(2017年版)より集計。
(国内取引所に上場している企業(外国会社を除く)3,619社を対象、2016年7月末時点)
全体の統計だと、社外取締役の半数近くは経営者や役員経験者が占めるのですが、女性に絞ると弁護士が上回ります。
女性弁護士の社外役員への選任が多い理由としては、リスクマネジメントやコーポレートガバナンスなどに対する貢献や法律面で専門性の高い助言を得られることが一点。加えて、女性でビジネス経験を豊富に持つ方は少ないことから、能力や経歴の面で社外役員としては申し分ない女性弁護士に、白羽の矢が立っているのが現状です。
実際に企業の社外役員として活躍している女性の事例
現在、上場企業で活躍されている主な女性社外役員としては、以下のような方が挙げられます。
氏名 | 略歴 |
新川麻 | 弁護士。西村あさひ法律事務所所属。 任天堂株式会社、東京電力ホールディングスで社外役員を務める |
元谷芙美子 | アパホテル社長。 株式会社SHIFT、株式会社ティーケーピーで社外取締役を務める |
襟川恵子 | コーエーテクモゲームス取締役名誉会長。 ソフトバンクグループの社外取締役を務める |
村木厚子 | 元厚生労働省事務次官。 住友化学、伊藤忠商事の社外取締役を務める |
岡島悦子 | 株式会社プロノバ代表取締役社。 株式会社マネーフォワード、株式会社ヤプリなど計4社で社外取締役を務める。 |
菊間千乃 | 弁護士。 弁護士法人松尾綜合法律事務所所属。株式会社コーセーの他3社で務める |
上記に挙げた以外にもさまざまな女性が社外役員と活躍されており、特に著名な経歴をお持ちの方は、複数社の社外役員を兼任されている傾向にあります。
社外取締役に女性を登用するメリット・デメリットsection
社外取締役に女性を含めたほうがよいとは言われているものの、上場企業の半数近くが現状では未対応です。
外部からの強い要請があるのはわかっていても、形だけ取り繕うために女性を役員に選任するくらいであれば、本業で結果を出してマイナス評価を回避すればよいと考える企業は少なくないかもしれません。しかし、いつまでも先延ばしするわけにはいかないですし、悪い面ばかりに注意が向いてしまって、女性社外取締役を選任するメリットを見逃している可能性もあります。
この項目では、社外取締役に女性を登用するメリット・デメリットを確認していきましょう。
経営に女性視点が加わる
生産年齢人口における女性の就業率は男女雇用機会均等法が施行されて以降、右肩上がりで推移しており、2001年には6割にも満たなかったのが、2019年には7割を超えました。
働く女性が増えたことで、以前とは消費トレンドやライフスタイルにも変化が生まれており、従来のアプローチではニーズがくみ取れない可能性があります。もちろん、データを活用すれば変化が生じていること自体は読み取れますが、そこに潜む心理までは理解できません。
同じ目線を持つ働き盛りの女性を社外取締役に選任すれば、現実に即したアプローチが可能となります。
女性社員に対してのメッセージ
本来であれば、社内から役員を担える女性を排出したいものの、まだ任せられるほど育っていない場合も少なくないかもしれません。しかし、すぐには任せられないからといって、何の対策も取らず、役員が男性しかいない現状を維持し続けるのは危険です。
仮に役員候補の女性が社内にいるとして、自身が昇進するまで女性役員が不在なのは、実際に実現するのかも含めて不安が大きいでしょう。そのため、社外取締役であったとしても、女性を経営上重要なポジションに配置することは社内の女性活躍推進のためにも重要だといえます。
投資家に良い印象を与えることができる
ESG投資において機関投資家の半数が、女性活躍情報を活用するとしています。
加えて、JPモルガン・アセット・マネジメントやゴールドサックス・アセット・マネジメントなどの外資系資産運用会社では、女性役員のいない企業に対し株主総会での議決権行使に厳しい姿勢で臨むことを明確にし始めています。企業運営における多様性確保の重要度は増しており、今後投資家が要請を強めるのは必至です。
ただ外資系の資産運用会社といえど、すぐさま社内で取締役を担う人材が出てこないのは重々承知しています。そうした状況においてもどういった対応が取れるかを見られているのであり、女性社外取締役の選任は一つの解決策といえるでしょう。
女性社外取締役を登用するためのポイントsection
女性社外取締役のニーズは高く、経験豊富な方は、すでに何社も兼任していて就任を断られてしまうことも少なくありません。
女性社外取締役を登用するにあたって、大事なポイントを確認しておきましょう。
女性役員比率を上げることを主目的にしない
いくら対外的な企業の印象を良くしたいからといって、女性役員比率を上げるためだけに社外取締役のオファーを受ける方はあまりいないでしょう。それもそのはずで、社外取締役を担える能力を持つ方は皆、自身のキャリアやスキルに関して相応の研鑽を積み重ねた自負があります。
にもかかわらず、スキルや経験は評価せずに性別に関してしか興味を持たれていなければ、到底納得はできないでしょう。女性候補者に自社の社外取締役募集に興味を持ってもらいたいのであれば、どういった点を評価しているのか、きちんと説明できるようにしておくことが大切です。
人気が高い人材には早い時期からアプローチをする
社外取締役として人気が高い人材は、すでに何社かで役員を兼任していることも少なくありません。
東証1部上場企業の時価総額ランキング上位300社の女性取締役数は、2021年7月時点で394人。その中で社外取は355人いる。しかし、これは延べ人数であり、実は複数の企業の社外取を兼務している人が多い。今回調査した300社では、56人が2社以上を掛け持ちしている。
引用元:モテモテ女性取締役は誰? 2社以上兼務56人、宇宙飛行士、作家も
兼任できる数には限りがあるので、社外取締役をお願いしたい場合には、既存の契約が任期を迎えるまで待つ必要があります。しかし、待つとはいっても、人気が高い方には他社からも当然声がかかります。少しでも社外取締役を引き受けてもらう可能性を上げるためには、早いうちから候補者との間に接点を持っておくことが大切です。
なので、もし「この方に社外取締役をやってほしい」と考える女性人材がいる場合は、早い時期からアプローチを行いましょう。
実績や知名度だけを頼りにしない
社外取締役を任せられる女性を探す際、できれば経験者で実績を持つ方を選任したいと多くの企業が考えるでしょう。ただそうなると、前述したように人気の高い女性人材の取り合いになり、社外取締役探しが困難を極めます。
ですが、知名度や実績が豊富だからといって、必ずしも自社の社外取締役にふさわしい貢献ができるとは限りません。自社のフェーズや業務内容、社内役員のスキルなど、会社ごとに社外取締役に求められる役割は異なるため、実績や知名度だけで判断するとミスマッチを起こしてしまいます。
自社の社外取締役として選任するにあたり、どういったスキルや経験の持ち主がふさわしいのか、あらかじめ明確にしておきましょう。
女性社外取締役を登用する際の注意点section
社外取締役に女性を登用するにあたって、気を付けたいのはやはり数合わせ目的の選任でしょう。
本来、社外取締役に期待されている役割は、外部視点でもって企業経営の監督を果たすことです。言い換えると、すべての株主の共同利益を代弁する立場ともいえるでしょう。そうなると、社外取締役には企業価値の向上や株主の不利益が生じないよう、企業経営に対してしっかりと意見を述べることが求められますが、数合わせで選任された方には難しいといえます。
近年は、女性著名人を社外取締役として招き入れる企業も少なくないですが、本来期待される役割での貢献があまり期待できない分、株主にマイナスの印象を持たれてしまうことは免れないでしょう。
参考:酒井美紀さん、不二家の「社外取締役」就任へ…芸能人が「起用」されるのはなぜ?|弁護士ドットコムニュース
まとめ
市場の強い要請もあって、近年女性社外取締役のニーズは非常に高まっています。おそらく、目ぼしい人材にはあらかた声がかかってしまっており、これから登用を進めていく企業は苦戦を強いられる機会が多くなるでしょう。激しい競争のなかで、自社の社外取締役募集に興味を持ってもらうためには、以下のポイントを押さえることが大切です。
- 女性役員比率を上げることを主目的にしない
- 人気が高い人材には早い時期からアプローチをする
- 実績や知名度だけを頼りにしない
また潜在層のなかにも、優秀な女性役員候補は埋もれていますので、数合わせではない優れた知見や経験を持つ人材を幅広く探したいのであれば、人材紹介サービスの利用をおすすめします。
潜在層の候補はライバルが少ない分、丁寧なアプローチが可能であるため、ミスマッチの人材を社外取締役に選任してしまうリスクを抑えられるでしょう。
社外役員選任サービスExE(エグゼ)
東証一部上場企業での社外役員経験や社外監査役経験を持つ、
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