広報は、会社の活動を社内外問わずに発信して、社員のモチベーションアップや会社のイメージUPなどを図ります。近年では、様々な発信がSNS等を通して炎上するなどの問題も起こりやすくなっていますので、広報を採用する際にもその人の性格や経歴、考え方などを慎重に判断して採用しなくてはなりません。
本記事では、これから広報の採用を考えている採用担当者に向けて、広報を採用する際に確認しておきたい次の内容をご紹介します。
- 広報の仕事内容と類似の仕事との違い
- 広報採用の傾向
- 採用した広報担当者の給与相場
- 広報として採用したい人の特徴
また、広報には自社に対する理解や愛情が強い人物が望まれますので、中途採用ではなく数年働いている既存の社員を担当者にするケースも多くあります。採用だけではなく、広報担当者を選任する際の参考にも役立ててください。
広報の仕事内容や他の職種との違いsection 01
まず、広報の仕事にはどのような仕事があるかを知っておきましょう。広報の仕事内容には、以下のようなものがあります。
社内向け広報
広報の仕事といえば、後述する社外向け広報がイメージされますが、社内に対する広報活動も多くあります。例えば、社内報を作成して、会社の経営方針や活動状況、イベント行事の予定や結果を全社員に向けて発信します。
社内向け広報が上手く機能していれば、社内でのコミュニケーションの活性化やモチベーションアップも起こりやすくなり、社員の定着率アップや業績アップも期待できるようになりますね。
社外向け広報
広報のメインともなる業務が社外向けの広報です。単にHPやSNSで発信するだけでなく、メディア対応や、イベント企画、インタビューの手配なども広報の仕事に含まれます。
メディア対応
企業の広報担当者は、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのメディアとコミュニケーションをとり、自社や団体の情報を発信することが求められます。メディア対応のために、プレスリリースやメディア向けの資料の作成、取材対応することも業務に含まれます。
広報の仕事では、このように社外の人と関わる機会も多いため、コミュニケーション能力が高くて、誰とでも打ち解けられやすい人柄の人物を採用すると良いでしょう。
イベント企画・運営
企業は、商品の発表会やイベントを開催することで、情報発信やブランドイメージの向上を図ります。広報担当者は、イベントの企画・運営を行い、メディアや一般の人々に向けて情報を発信することが求められます。
コミュニケーション能力だけではなく、スケジュール管理能力の高さやマルチタスクをこなせる器用さも求められます。
SNS・Webサイトの運営
企業は、SNSやWebサイトを活用して、情報を発信することも日常業務に含まれます。広報担当者がSNSやWebサイトの運営を行い、情報発信やコミュニケーションを図っていきます。
簡易的に広くに自社の活動を知らせることができる場でもありますが、公式SNSから私情を書き込むなどの軽率な行動を取って炎上してしまう企業アカウントが度々現れています。SNS担当者として採用する人は、ネットリテラシーやリスク管理能力が高い人を厳選するようにしましょう。
広告製作
後述するように広告と広報は厳密には違いますが、会社によっては広報担当者が広告製作を担当することもあります。
広告製作では、会社のチラシやポスター、動画、インターネット広告でのバナーなどを作りますが、広報担当者にはもともと動画・画像編集能力や効果的に広く発信するマーケティング知識がある方も多いため、兼任として広告製作を依頼するシーンも出てくるでしょう。
危機管理広報
危機管理広報とは、会社や地域でトラブルや事故が発生した場合に危機管理の対応策を考え、顧客や従業員等に説明をする担当者です。
例えば、会社で不祥事が発生した際に、早急に事実確認を行い、対外的に情報を開示し、事実誤認があるようでしたら風評被害が発生することも防ぐ必要があります。
このように、広報では良い事ばかり発信するとは限らず、不測の事態にも迅速に誠実に応えられるような、リスク管理や危機管理能力が高い人が求められます。
広報と類似の職種との違い
広報と類似の職業がいくつかあります。上で触れた広告も広報担当者が兼任するようなこともあります。ただ、実際には厳密な業務内容や目的が違うため、人員に余裕があるのであれば、きちんと担当者を分けるべきでしょう。
こちらでは、広報と他の職種の違いについてご紹介します。
広報と広告の違い
広報と広告は、伝える内容や目的が違うため、発信相手や手法も変わってきます。
広報は、お伝えのように企業が行うプロモーション活動の一環で、主にメディアを通して会社のことを広く知ってもらう目的があります。
発信内容には、ニュースリリースやメディア掲載の情報収集、インタビュー内容などがあり、これらの発信内容を用意するために、メディアとのやり取りやインタビューの企画・手配などを行います。
一方、広告では、商品やサービスを販売することが大きな目的で、発信内容も会社を全面に押し出すのではなく、商品・サービスの詳細や利便性などを伝えていきます。発信相手も、幅広くに発信しすぎることで広告費高騰に繋がりますので、広告媒体やターゲットを絞って発信することが求められます。
職種 | 発信相手 | 発信内容 | 目的 |
---|---|---|---|
広報 | マスコミ・メディア 顧客・一般消費者 株主・投資家 自社社員 | ニュース 会社の取り組み 社内インタビュー 受賞歴 メディア掲載歴 など | 会社の認知度やイメージアップ |
広告 | サービス購入・利用者 | 自社製品・サービス | 製品・サービスの販売促進 |
広報とIRの違い
広報と似た業務にIR(インベスター・リレーションズ)があります。これは、株主や投資家に対する広報活動のことで、会社の実績や役員の変更などを報告して安心して株を保有してもらう目的があります。
広報と同じく、社外に向けて情報発信を行う業務として広報がIR担当を担うこともありますが、発信内容が広報とは根本的に違う点に注意が必要です。
広報では、会社の取り組みや企業方針等を発信していきますが、IRでは、投資家が気になる業績や役員の変更などを報告していきます。発信するにあたって、正確な決算・会計の知識も必要になるため、広報からではなく財務や経理などからIR担当者を選任することも多いです。
職種 | 発信相手 | 発信内容 | 目的 |
---|---|---|---|
広報 | マスコミ・メディア 顧客・一般消費者 株主・投資家 自社社員 | ニュース 会社の取り組み 社内インタビュー 受賞歴 メディア掲載歴 など | 会社の認知度やイメージアップ |
IR | 株主・投資家 | 決算情報 業績 経営陣の変更 など | 会社のイメージアップや株主への報告 |
広報の採用状況と転職市場の特徴section 02
これから広報担当者を採用としている場合には、広報の転職市場や採用の特徴についても知っておきましょう。
未経験採用はあまり行わない
広報は企業や組織のイメージ向上やブランド価値の維持向上に関わる重要な業務であり、誤った情報発信や不適切な対応などがイメージダウンや信頼喪失につながる可能性があります。
そのため、広報の採用では、広報に関する知識や経験、コミュニケーション能力、リスク管理能力やトラブル発生時の対応力などが必要とされます。
未経験の場合、これらの要素に欠けている可能性があるため、十分な研修や教育を受けなければ、適切な広報活動を行うことができない場合があります。
採用時には、広報に関する知識や経験、コミュニケーション能力を評価するための適切な採用試験や面接、研修などが必要とされます。
未経験者にもチャンスを与えることは大切ですが、広報活動が企業や組織にとって重要であることを考慮すると、未経験の採用には慎重になる必要があります。
PR会社からの転職者も効果的
主に企業からの広報活動の依頼を受けて、様々な会社の広報活動を行う会社としてPR会社があります。PR会社出身の方であれば、幅広い広報活動の知識と、状況に応じた手法の使い分けなども期待できます。
稀にですが、PR会社から一般企業の広報に転職を求めてくる求職者もいますので、もし、PR会社の経歴がある人からの応募があった場合には、積極的に採用候補に挙げておきましょう。
自社内で担当者を選任することも多い
広報活動を行う上で、会社内の文化や活動内容、経営方針などを十分に理解している必要があります。また、会社に愛着があり、自社内の社員とも円滑にコミュニケーションが取りやすい人物が望ましいので、採用によって外部から広報担当者を選ぶのではなく、既存社員の中から広報に向いている人を選任するような人事もあります。
また、後述するように外部に委託して広報活動をする方法もありますので、自社内で広報担当者を選任して、委託しながら広報活動を経験してもらい、いずれ広報担当として一人前に育ってもらうような方針を取ることもできますね。
広報活動をPR会社に委託する会社もある
会社の広報活動を代行する会社として、PR会社があります。自社で広報担当者を採用しなくても、広報のプロであるPR会社に依頼する選択肢もあります。
PR会社に依頼する場合には、以下のようなメリットがあります。
専門的な知識や経験がある
PR会社には、広報に関する専門的な知識や経験があります。広告やマーケティングとは異なる専門領域であるため、自社で広報担当者を育成するよりも、専門のプロフェッショナルに依頼することで、より高いクオリティのPR活動を行うことが期待できます。
外部からの視点が得られる
自社内でPR活動を行う場合、自社のビジネスや製品に対する偏りが生じる可能性があります。しかし、外部のPR会社に依頼することで、より客観的な視点からアプローチすることができます。
一時的な需要に対応できる
自社で広報担当者を採用すると、長期的なコストがかかります。しかし、PR会社に依頼することで、一時的な需要に対応することができます。例えば、新製品の発売前やイベント開催時など、限られた期間でのPR活動を行う場合に便利です。
PR会社選びも慎重に
一方で、PR会社に依頼する場合には、コストがかかることや、外部に情報を漏らすリスクがあることにも注意が必要ですので、適切なPR会社を選択することが重要になってきます。
広報を採用する場合の平均給与section 03
これから新たに広報を採用する場合には、支払う給与を決めなくてはなりませんね。これまで広報担当者がおらず、初めて広報を採用する会社も多いでしょうから、一般的な給与の金額帯を知っておきましょう。
複数の転職サイトを調べたところ、広報の平均給与は次のようになりました。
職業 | 平均年収 | 平均月収(年収÷14ヶ月分) | 参照サイト |
---|---|---|---|
広報/IR | 481万円 | 34.3万円 | doda |
広報 | 415万円 | 29.6万円 | 求人ボックス |
広報 | 618万円 | 44.1万円 | Indeed |
広報 | 468万円 | 33.4万円 | 転職会議 |
広報の平均年収は450万円程度、平均月収は30万円程度になっています。
ここから採用する方の経験やスキルの有無、自社の広報に求める重要性などを加味して具体的な金額を決めていきましょう。
広報として採用したい人の特徴や資格section 04
ここまでで簡単に触れてはきましたが、実際に広報担当者として採用するには、どのような人が向いているのでしょうか?広報として採用したい人の特徴についてまとめましたので、書類選考や面接時に判断する参考にしてみてください。
コミュニケーション能力
広報は企業と外部との窓口として、会社のメッセージを的確に伝えるために、相手に合わせたコミュニケーション能力が求められます。
また、社外の人物だけではなく、社内の様々な部署の人ともイベントやインタビューの企画でやり取りをする機会も出てきます。社員の中には、自分の業務とは関係ない広報活動に非協力的な人もいることがあります。そのような人にも好意的に協力してもらえるようなコミュニケーションが求められます。
リスク管理能力・危機管理能力
何度が触れていますが、間違った広報活動をすることによって、反対に会社の信用・信頼を低下させてしまう炎上問題を生じさせてしまうこともあります。「このような発信をしたらどのような影響があるのか?」を事前に予想して慎重に動ける方でないと、安心して広報活動を任せることができません。
また、危機管理広報と言って、会社の不祥事や問題発生時に広くに対処法や謝罪を伝えなくてはならない場面もあります。前向きな内容だけの広報活動とは限りませんので、あらゆるリスクに対応できる人が望ましいでしょう。
マーケティングの知識
広報と広告には違いがあるとお伝えしましたが、伝えたい相手に効果的に伝えるという観点では、消費者のニーズを分析し、戦略的に広報活動を行うマーケティングの知識も求められます。
SNSやHPなどはインターネット上の解析ツールを使って、流入数や観覧数などをチェックでき、そこから改善や新たな手法を考えることができます。「ウェブ解析士」等の資格があれば、インターネット上の分析が得意な人だと判断できるでしょう。
ソーシャルメディアの知識
簡易的に始められやすいSNSを使った広報から考えている会社も多いでしょうが、SNSの脅威的な拡散力は、非常に有用な広報ツールにもなれば、不適切な内容がすぐさま拡散される危険性もあります。
SNS上でどのような話題・投稿が流行っているかを知ると同時に、どのような投稿で炎上するリスクがあるのかを常に考えているネットリテラシーの高さも求められます。
コピーライティング能力
広報活動で広くに会社のことを知ってもらうためには、短い文で効果的に伝えたい内容を伝えられる能力があると有効です。文章で人を惹きつける能力があると良いでしょう。
また、少しでも間違いがある文章で広報してしまうと、そこから炎上の火種になってしまうこともあり得ますので、「ビジネス文書検定」の資格によって正しい文書が書ける人であれば安心ですね。
動画・画像編集能力
SNSを中心に動画や画像を使って広報活動をすることが当たり前になっています。イベントの状況をそのまま動画にして発信する方法よりも、印象に残るシーンや伝えたい内容を編集して一番良く見せられる技術があることで、みている人にもより内容が伝わってくるでしょう。
個人でも簡単な動画編集ができるようにもなってきた現代においては、独学で資格を取得している方も多いです。有用な資格としては、「Illustratorクリエイター能力試験」などがありますので、採用時には確認してみてください。
まとめ
本記事では、広報の採用活動について知っておくべき内容をお伝えしました。まとめると次のようになります。
採用の傾向 | 未経験採用はあまり行わない 自社内から広報担当者を選任することも多い 広報活動をPR会社に委託する方法もある |
---|---|
求める人物像 | コミュニケーション能力が高い リスク管理能力・危機管理能力が高い マーケティングの知識がある ソーシャルメディアの知識がある コピーライティング能力がある 動画・画像編集の技術がある |
給料の相場 | 年収:450万円 月収:30万円 |
広報の活動によって会社の知名度やイメージが変わってきます。良い広報担当者であれば、効果的な広報活動を行なってくれて、売上や業績アップに繋げてくれることも期待できます。
一方で、いい加減に広報担当者を選んでしまうと、的外れな発信を続けてしまうだけではなく、自社の公式SNS等から炎上のきっかけを生み出してしまう危険性も高めてしまいます。
広報担当者を選ぶ際には、かなり慎重に、危機管理やリスク管理ができて安心して任せられる人物を選任するようにしましょう。