CLO(最高法務責任者)とは?求められるスキルや役割・キャリアパスを解説

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CLO(最高法務責任者)とは、企業の法務部門の責任者であると同時に、経営判断にも影響を与える経営陣の一員としての役割を担う重要な役職です。

本記事では、「法曹資格や法務部門での実務経験を活かして、今以上にキャリアアップしたい」と考えている方のために、近年注目を集めているCLOの役割や、CLOに転職するためのポイントなどについて分かりやすく解説します

目次
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CLO(最高法務責任者)とは?section

ガバナンス徹底・企業の事業活動のリスクヘッジの必要性などが高まっている現在、多くの企業でCLOという役職を設定して、優秀な人材を登用する動きが強まっています。

まずは、CLOの定義や関連概念との違いについて解説します。

CLOはCxOの1つ

CLO(Chief Legal Officer)とは、「最高法務責任者」のことです。

近年普及している「CxO」のひとつに位置付けられます。

CxOは「Chief x Officer」の略称です。「Chief(組織の責任者)」「Officer(執行役)」の間にある「x」に役割・業務に対応する言葉を入れて、「xという役割・業務に対する組織のなかの最高位のポジション・人物」を示すことができます。

日本語に訳するときには、「最高〇〇責任者」という表現方法が用いられるのが一般的です。

取締役やその他役員とは異なり、CxOに関する法律上の根拠は存在しません。

そのため、各企業にCxOの設置義務が課されているわけではなく、どの種類のポジションを設けるかなどについては全て企業側の自主性に委ねられているのが実情です。

もっとも、現在、コーポレートガバナンスを徹底する傾向が強まっており、企業側には事業活動などに対する責任の範囲・所在の明確化が求められています。

そして、CxOはコーポレートガバナンスの機能強化、意思決定の迅速化、経営と現場の連携強化というメリットをもたらすと考えられているため、今では多くの企業でCxOが設置されています。

CxOの代表例として以下のものが挙げられます。

CxOの代表例

CLOの役割

CLOに求められる役割は、法務分野に関する業務の責任を全うすることです。

事業活動を展開する過程では、契約書の作成・レビュー、内部統制システムの構築・監視、法改正や業界規制への対応など、さまざまな場面で法律問題が生じます。

そして、CLOはこれらの全ての業務の責任者として機能しなければいけません。

たとえば、各従業員が適切に法務関係業務を処理できるような環境・教育システムを整備したり、法的トラブルが発生したときには先陣を切って対応策に踏み出して責任をとる必要があります。

また、CLOは経営陣の一角としての役割も担うため、経営判断に対して法的な視点からレビューをしたり、CLO自身が大きな経営判断に関与することも必要です。

企業内弁護士との違い

企業に対して高度なリーガルサービスを提供する人材として「企業内弁護士」が挙げられます。

企業内弁護士とは、企業の社員として雇用される弁護士のことです。「インハウスローヤー」と呼ばれることもあります。

CLOも企業内弁護士も、企業のために法的スキルを発揮する点では同じです。

ただし、CLOと企業内弁護士には以下のような違いがあります。

  • CLOは会社の役員であり経営陣の一角を担う、企業内弁護士は会社に雇用される従業員という立場
  • CLOは従業員に対して指揮監督権・人事権を行使する、企業内弁護士は会社からの指示に従う義務を負う
  • CLOは法的な観点を経営判断に組み込む役割まで求められる、企業内弁護士は法律家として法的側面に関するスキルを発揮する

法的スキルの発揮だけではなく、企業の経営判断や企業統治にまで踏み込んで仕事をしたいと考えているのなら、企業内弁護士として働くのではなく、CLOを見据えたキャリア形成を目指しましょう。

顧問弁護士との違い

CLOは役員として企業の内側で法的スキルを発揮するのに対して、顧問弁護士は企業の外側からリーガルサービスを提供するということです。

そのため、企業に対して発揮するリーガルサービスの質・内容に関して、CLOと顧問弁護士とで大きな違いはないでしょう。

ひとつの企業を成長させるために、経営判断まで踏み込みながら法的スキルを活かしたい」と考えるならCLOを目指すのがおすすめです。

日本企業と外資企業での違い

外資系企業の場合、CLOの役職を設けるのが一般的です。

これは、1990年代にはすでにCxOの考え方が普及しており、ガバナンスの徹底・強化のために当然設けるべき役職だと考えられているからです。

そのため、外資系企業では、CLOに関する求人が定期的に出されています。

一方で日本企業の場合、CLOを設けている企業はまだ多くはありません。

また、CLOを設けている企業についても、いきなり外部から優秀な人材をCLOとしてヘッドハンティングしてくるのではなく、企業のなかで法務関係でキャリアを積んだ人材がCLOに就任するという形式が採られるのが一般的です。

CLO候補の形式で求人案件が出されることはありますが、いきなりCLOを募集するための求人が出されるケースは多くはありません。

このように、日本企業と外資系企業とではCLO採用の扱いが大きく異なります。

CLOを見据えたキャリア形成をする場合には、どのようなスキルが必要なのか、どのような人脈を構築していくべきかなど、中長期的な視点で戦略的に成長し続ける姿勢を大切にしましょう。

CLO(最高法務責任者)が必要とされている理由section

CLOが必要とされている理由の根本は、法務の重要性が高まっていることにあります。

具体的には以下のような点が挙げられます。

コンプライアンスの重要視

現在、企業には高いコンプライアンス精神が求められています。

コンプライアンスとは、法令・業界ルール・一般常識・モラル・公序良俗などを遵守して公平・公正に事業活動を展開することです。

ただ単純に法律を守れば良いというわけではなく、一般常識やモラルなどの価値観によって左右される事項も守らなければいけません。

つまり、事業活動や従業員の行動がコンプライアンスを遵守したものであり続けるには、組織全体がコンプライアンスを遵守できるような環境・指揮官が必要だということです。

そのため、高度な法的専門性を活かしながら、事業活動・組織構成に関する判断、従業員の教育訓練のあり方、トラブル発生時の対応などの指揮を取ることができるCLOが必要とされています。

一般社団法人日本CLO協会の発足

2020年4月に、一般社団法人日本CLO協会が設立されました。

その結果、日本のビジネスシーンにおいても諸外国と同じようにCLOの必要性が高まっています。

特に、国際的にビジネスを主導する訴訟社会のアメリカでは、社内の人事部門・財務部門に相談しても結論が得られないような懸案事項を抱えている場面での対応について、CEO(最高経営責任者)が相談相手に選ぶのは、顧問弁護士のような外部リソースではなく、GC(General Counsel)です。

つまり、CLOなどの組織内の機能を強化することによって、重要な経営判断を自社内で完結することが意識されているということです。

設立された目的は、「複雑化・国際化するビジネスにおいて、企業経営の現場をリードできる実践的な法務部員・法務領域における高い専門性をもって経営意思決定をおこなう経営者・CLOを育成して、その機能を確立すること」です。日本企業の国際的な競争力を高めるために、「CLOに就任できるような人材の確保」が喫緊の課題だと考えられています。

この動きを受けて、多くの日本企業でも社内の法務部門の機能強化・経営基盤の強化を目的として、CLOを設置して優秀な法務スキル保有者を迎える動きが高まっています。

参考:一般社団法人日本CLO協会

新しいビジネスモデルの展開に伴う戦略法務への対応

多様化する国際社会において継続的に事業活動を展開するには、常に新しいビジネスモデルを模索する必要があります。

その際には、新しい技術を生み出して積極的にビジネスを展開することだけではなく、他にも「現行法の制度・システムを踏まえてビジネス展開をするうえでの障壁を分析し、障壁を上手く交わすような合法的なビジネスモデルを創造すること」も重要です。

たとえば、現行法制度の規制にかからないような合法的なビジネスモデルを創出すれば、そのアイディアを技術開発に活かすことも可能です。また、競合他社が気付いていない市場を新規開拓するチャンスにもめぐりあえるでしょう。

このような背景から、現行法制度の仕組みや抜け穴を正しく理解したうえでクリエイティブな発想をおこなうことができるCLOの存在が強く求めれています。

CLO(最高法務責任者)の業務範囲section

企業の役員としてCLOが対応する業務内容について解説します。

コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスとは、株主・顧客・投資家・従業員・地域社会などの立場を踏まえたうえで、会社が透明・公正・迅速・果断な意思決定をするための仕組みのことです。

そもそも、企業は自社の利益を追求するのが本来の姿です。利益を得なければ、事業活動を継続することができません。

もっとも、自社の利益を追求する”だけ”の姿勢では、持続的な企業活動は難しいのが実情です。

というのも、企業はあくまでも社会の一員として事業活動を営むものである以上、全てのステークホルダーに配慮した姿勢を見せなければ、株主や投資家、地域社会などからの批判に晒されて、業績が低下するリスクに晒されるからです。

そのため、企業が自社の利益だけを追求してステークホルダーを置き去りにしないように、コンプライアンスやコーポレートレートガバナンスを重視した内部システムを構築しなければいけません。

CLOは社内の監視役として、コーポレートガバナンスを強化する諸施策の実行を求められます。

予防法務

IT化・情報化が進んだ現在、企業が不祥事を起こすと、その情報は凄まじいスピード・範囲に拡大されます。

そして、不祥事が世間に明るみに出ると、ブランド価値・社会的評価が凄まじく毀損されますし、インターネット上にさまざまな情報が残り続けるために信用回復をするのが大変です。

つまり、事業活動を展開するときには、普段から不祥事などの経営リスクが生じないようなリスクヘッジが必要だということです。

CLOには、企業が不祥事を起こさないような環境作りや、従業員への指導・教育の徹底が求められます。

法規制への対応

事業活動を展開する以上、さまざまな法規制や業界・業種独自のルールを守らなければいけません。

また、法律や各種規制は時代によって適宜改正・変更が加えられるので、事業活動をその時々の枠組み・制度にフィットさせる必要があります。

そのためCLOには、現行法制度の状況や今後の改正動向などの情報を踏まえて、事業活動を常に合法的な範囲でおこなうことができるような舵取りが求められます。

外部弁護士との連携

企業が事業活動を進めるとき、案件の規模・大きさ・専門性など次第では、外部の弁護士・公認会計士などの専門家との連携が必要なケースも少なくありません。

そして、外部の専門家と連携するときには、企業側の人材も高度な知識を有している必要があります。

なぜなら、外部専門家と同程度の知識量・スキル・能力がなければ、建設的なコミュニケーションを図ることができず、自社の利益を最大化できない恐れが生じるからです。

このようなケースで、CLOは自社を代表して外部の専門家と連携する役割を担います。

CLO(最高法務責任者)に求められる資質section

CLOになるために、必要な資質・スキルについて解説します。

高いコミュニケーションスキル

CLOは、経営陣の一角として企業の法務関係の業務を統括しなければいけません。

そのためには、日常的に法務部員などと丁寧に意思疎通を図ったり、トラブル発生時に柔軟な姿勢で事情聴取を実施できるスキルが必要です。

また、考えや悩みを上手く引き出したり、誰もが理解しやすいように法的事項などを嚙み砕いて説明できることも求められます。

リーダーシップ・マネジメントスキル

CLOは、法務部門が組織として統一的に活動できるように方向性を確立したり、法務部員の知識・スキルを底上げするために教育訓練機会を提供したりする必要があります。

また、企業活動に関してリーガルリスクが生じたときには、CLOが先頭に立って対策に踏み出さなければいけません。

したがって、CLOには法務部門の代表者として機能するために、強いリーダーシップや高いマネジメントスキルが必要です。

戦略立案力

CLOは、法的専門性を活かして経営判断に関与することが求められます。

その際には、現行の法制度・世間の動向を踏まえたうえで、戦略的にビジネスを展開する舵取りをおこなわなければいけません。

CLOとしてのキャリアを形成するには、高い戦略的立案力が必要です。

語学力

ビジネスが多様化・国際化している現在、企業が継続的に事業活動を展開するには、国内市場をターゲットにするだけでは不十分です。

企業の業種・業態・経営規模にもよりますが、ときには海外市場への進出や、海外企業との取引が選択肢に入ってくることもあるでしょう。

その際、CLOとして能力を発揮するには、高い語学力があった方が望ましいのは言うまでもありません。

海外市場の動向・法制度などを理解したり、国際的なビジネスパーソンとしてキャリアを形成するためには、最低でも英語力、他にも、中国語やスペイン語などの語学力が必要だと考えられます。

CLO(最高法務責任者)になる3つの方法section

CLOをなるための代表的な3つの方法をご紹介します。

社内でCLOポジションに昇進する

CLOなどの役職が普及し始めた段階の日本のビジネスシーンでは、いきなり外部の人材をCLOとして招聘するのではなく、「社内でキャリアを積んだ優秀な従業員が出世をしてCLOになる」というパターンが一般的です。

法務部門で着実に成果を上げながら主体的に法的専門性や経営ノウハウを習得し、時間をかけてCLOへの昇進・昇格を目指すのがもっとも現実的な方法だと考えられます。

CLOポジションがある企業に転職する

CLOの重要性に対する認識が広まっている現在、まだまだ数は少ないですが、CLOの求人を出している企業が増えています。

もちろん、CLO求人の転職倍率は高く、また、相当のキャリアや即戦力性がなければ採用には至らないでしょう。

すでに法務部門で一定のキャリアを積んでいたり、転職希望先企業が求める人材像にフォーカスできたりすれば、CLOとしての採用も不可能ではありません。

なお、CLOを目指す転職活動をおこなうなら、自分だけの力で情報を収集したりするよりも、転職エージェントなどを活用して効率的に転職活動を進めるのがおすすめです。

弁護士資格を取得してCLOに転職する

CLOには、高い法的専門性が求められます。

たとえば、高い法的スキルを示す材料として、法務部門での実務経験が挙げられます。法務でのキャリアがあればあるほど、CLOの転職市場でも高い評価を得られるでしょう。

そして、CLOの転職活動でもっとも強い武器になるのが「弁護士資格」です。

法律の専門家として最高基準の資格であり、弁護士としての実務経験・企業法務経験は、CLOとしての転職活動が有利になります。

しかし、難易度が高い資格です。

弁護士資格を取得するには、司法試験予備試験に合格するか法科大学院を卒業するかによって司法試験受験資格を取得し、そのうえで、司法試験に合格する必要があります。

社会人が司法試験合格を目指すなら、予備校の利用なども視野に入れながら戦略的に行動しなければいけないので、丁寧に中長期的なプランで臨みましょう。

まとめ

CLOへのキャリアルートを描くには、法務部門での実務経験や法律関係の資格などの即戦力性のある法的素養や、経営陣の一員として組織を束ねることができるリーダーシップ性などを備えていることを客観的にアピールできる材料が必要です。

たとえば、すでにCLOに就任できるだけのスキルを有しているなら、積極的に各種転職サービスを利用して、CLO求人情報にアクセスするべきでしょう。

その一方で、現段階では即戦力としてCLOに就任できるほどのキャリア・スキルを保有していないなら、CLOへのキャリアアップを見据えた中長期的な成長プランを作成しなければいけません。

ハイクラス転職エージェントを利用すれば、専門の担当者が現在の市場価値を分析したうえで、CLOを目指すために役立つキャリアパスを提案してくれます。

法的スキルの習得や法務での実務経験は短期間では習得できないので、できるだけ早いタイミングで転職活動に踏み出しましょう。

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上場支援、CGコードの体制構築などに長けた、専門性の高い「弁護士」を社外取締役候補としてご紹介。事業成長とガバナンス確保両立に、弁護士を起用したい企業様を支援している。

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