コンプライアンス研修の目的・内容・業者の選び方について

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コンプライアンス研修を定期的に実施することにより、会社全体としてのコンプライアンス意識を高め、法的リスクの顕在化を回避できます。会社経営における深刻なトラブルを予防するためにも、従業員に対するコンプライアンス研修の導入をご検討ください。

この記事では、コンプライアンス研修の目的・内容・業種の選び方などを解説します。

目次
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コンプライアンス研修を行う目的は?section

コンプライアンスの重要性が高まっている近年では、安定した企業経営を続けるために、コンプライアンス研修を適切に実施することが大切です。

コンプライアンス研修を行うことの主な目的は、以下のとおりです。

会社に関係する法令についての理解を深める

コンプライアンス研修では、会社・従業員が遵守しなければならない法令などに関する講義が行われます。従業員が日常的に取り扱う業務に関連するルールから最新の法改正によるアップデートまで、知っておかなければならない法令の知識をインプットすることが、コンプライアンス研修の最大の目的といえます。

従業員のコンプライアンス意識を向上させる

知識のインプット・アップデートに加えて、従業員のコンプライアンスに対する意識を向上させることも、コンプライアンス研修の重要な目的の一つです。日常の業務に慣れてしまうと、どうしても法令のルールに対する意識が疎かになってしまう部分があります。

定期的にコンプライアンス研修を実施することによって、日常の業務におけるコンプライアンス上の留意事項を確認し、各従業員が社内の違法行為を監視・排除するという意識を再喚起することができるでしょう。

コンプライアンス体制について対外的にアピールする

会社全体として、コンプライアンスに対して意識的に取り組んでいることが対外的に伝われば、株主その他のステークホルダーからの信頼獲得に繋がります。たとえばコンプライアンス研修を定期的に実施したうえで、その内容をIR資料などで公表すれば、対外的に高いコンプライアンス意識をアピールすることができるでしょう。

コンプライアンス研修の主な内容は?section

コンプライアンス研修では、会社の業務に関係するさまざまな法令に関する講義が行われます。コンプライアンス研修のトピックとして掲げられることの多い法令上の主な論点は、以下のとおりです。

ハラスメント問題(セクハラ、パワハラ)

近年では、社内でのセクハラやパワハラを糾弾・撲滅する動きが広まっています。

法律上も、セクハラについては男女雇用機会均等法11条以下、パワハラについては労働施策総合推進法30条の2以下において、事業主に雇用管理上必要な措置を講ずることが義務化されています。

セクハラ・パワハラへの対応は、すべての会社に共通して当てはまる法律問題なので、コンプライアンス研修のトピックに含められることが非常に多いです。

情報セキュリティ

現在では大半の企業がPC・インターネットを用いて業務を行っていますので、ITセキュリティに関する意識の向上も、コンプライアンス研修における重要なテーマの一つです。

特に個人情報の取り扱いや、会社の機密情報の流出を防ぐための留意事項などについては、コンプライアンス研修で重点的に講義されます。

下請法

他社に業務を発注する側・他社から業務を受注する側のいずれであっても、「下請法」の規定についてよく理解しておく必要があります。下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」といいます。

親事業者に対して立場が弱い下請事業者が搾取されることを防ぐため、納品や下請代金の支払いなどに関して親事業者が遵守すべきルールを定める法律です。

コンプライアンス研修でも、下請法に関する概要説明や違反事例の紹介などを通じて、親事業者・下請事業者それぞれの立場での留意事項につき講義が行われます。

個別の業法規制

会社が取り扱う業務の内容によっては、各種の業法に基づく規制が行われている場合があります。業法規制の対象となっている会社では、該当する業法についても、コンプライアンス研修の対象に含めるのが適切でしょう。

  • 銀行:銀行法
  • 証券会社:金融商品取引法
  • クレジットカード会社:割賦販売法
  • 保険会社:保険業法
  • 食品事業者:食品衛生法
  • 接待系の飲食店:風営法
  • 不動産業者:宅地建物取引業法 など

業法の規制については専門的な内容が多いため、各分野を専門的に取り扱う弁護士に講師を依頼するのがお勧めです。

コンプライアンス研修の一般的な構成section

コンプライアンス研修の構成は、研修の講師を務める専門家や、契約したプログラムの内容などによって異なります。もっともよく見られるのは、「講義」「ケーススタディ」「到達度テスト」の3部構成です。

法令についての講義

コンプライアンス研修の大きな目的として、従業員に対して法令の正しい知識をインプットすることが挙げられます。そのためコンプライアンス研修では、全体時間のうち大きな割合を講義パートが占めるのが一般的です。

講義の具体的な内容は、コンプライアンス研修が実施される意図や受講者層によって異なります。たとえば、幅広い受講者を想定する場合は基本的な内容が中心となり、一部の専門部署をターゲットとする場合は深掘りした内容で構成されることが多いでしょう。

また、コンプライアンス研修をシリーズ化している場合には、段階的に内容の密度を上げていくことになります。コンプライアンス研修の意図・目的や受講者層に合わせて、適切な密度の講義を提供することは、講師側の腕の見せ所といえます。

ケーススタディ

コンプライアンス研修における受講者の理解を深めるためには、講義で得た知識を実例で確認することが有効です。そのため、講義パートの前後・最中にケーススタディが盛り込まれることが多くなっています。

ケーススタディの題材は、裁判例をベースにしている場合もあれば、講師が実務上経験した事例をアレンジしている場合もあります。特に、受講者が業務の中で実際に経験する可能性がある事例を盛り込むことができれば、受講者の理解度はいっそう深まることでしょう。

到達度テスト

コンプライアンス研修において、受講者がどの程度の理解を獲得したかを確認するために、到達度テストを実施するケースがあります。到達度テストでは、講義で解説された法令等を題材とした設例が出題され、受講者はきちんと講義の内容を理解しているかどうかが試されます。

なお最近では、到達度テストはeラーニングシステムを利用することが多くなっています。

コンプライアンス研修の実施タイミング・頻度section

コンプライアンス研修を効果的に実施するには、実施のタイミングを見定めることも大切です。一般的には、定期研修と臨時研修を組み合わせて実施するのがよいでしょう。

半年~1年ごとに定期的に行う

会社に関係する法令は、法改正によって年々アップデートされます。そのため、定期的にコンプライアンス研修を行い、最新の法令に関する知識をインプットするのがよいでしょう。

定期研修の頻度としては、一般的な企業であれば半年~1年に1回程度が適当と考えられます。なお金融機関など、法改正が頻繁に行われかつその影響を受けやすい業種の場合は、定期研修を四半期(3か月)に1回程度実施している例もあるようです。

新入社員向けに実施する

新入社員に対しては、会社の業務に関連する法令の知識をまとめてインプットする機会を、最初の段階で設けることが望ましいでしょう。そのためには、入社直後にコンプライアンス研修の受講を義務付けることが有効です。

ビデオ教材などを活用すれば、中途採用でイレギュラーな時期に入社してくる従業員に対しても、コンプライアンス研修を実施することができるでしょう。

重大な事件が発生した際に臨時に実施する

社内で重大なコンプライアンス違反が発生した場合には、再発防止の一環として、臨時にコンプライアンス研修を実施することも考えられます。また世間で耳目を集めるような不祥事が発生し、それが自社のビジネスに影響を与えかねない場合にも、臨時コンプライアンス研修を実施することが考えられます。

こうした場合には、従業員側のコンプライアンス研修に対する関心も高まりますので、機会を逃さずにインプットの機会を設けるとよいでしょう。

コンプライアンス研修はどの業者に依頼すべき?
各業者・弁護士の特徴を比較section

コンプライアンス研修の依頼先としては、主に「人材育成会社」と「弁護士」の2つがあります。それぞれ強みが異なるので、会社のニーズに合わせて依頼先を選択してください。

人材育成会社

人材育成会社は、多種多様な研修プランを用意しています。コンプライアンス研修では法令等の知識にフォーカスした講義が行われますが、それ以外にも以下のような研修が提供されています。

  • 階層別研修(新入社員研修、中堅社員研修、管理職研修など)
  • 部署別研修
  • マナー研修
  • IT研修
  • リーダーシップ研修
  • コミュニケーション研修 など

従業員の業務上の素養を高めるという観点からは、総合的な観点から研修を行うのが望ましいでしょう。人材育成会社には、上記のようなコンプライアンス以外の研修もパッケージで依頼できるメリットがあります。

ただし研修の種類が多い分、一つ一つの講義の内容が浅くなってしまうことが多いです。また、提案されるパッケージには、自社にとって関わりが薄い講義テーマが含まれている可能性もあります。

そのため、自社が割くことのできる予算や時間に応じて、適切なプランを選択しましょう

弁護士

弁護士にコンプライアンス研修を依頼すると、法令に関する深い知識と実務経験を基に、より密度の高い講義を受けることができます。

たとえば、以下のようなテーマについて掘り下げた講義を受けたい場合には、弁護士にコンプライアンス研修を依頼するのがよいでしょう。

  • 個人情報保護法
  • セクハラ、パワハラに関する法令
  • 下請法
  • 各種の業法

など

また弁護士は、実際に経験した事例を基にしたケーススタディを講義に組み込むことが多く、受講者に対して法令の適用場面についてイメージを喚起しやすいメリットもあります。コンプライアンス研修を弁護士に依頼する場合、顧問弁護士などを通じて相談してみるのがスムーズです。

コンプライアンス研修を委託する業者を選ぶ際のチェックポイントsection

コンプライアンス研修の講義を外部委託する場合、実施コストに見合った成果を得られるような業者を選ぶ必要があります。具体的には、以下のポイントに注目して業者を選ぶのがよいでしょう。

会社のニーズに合わせた研修内容

コンプライアンス研修は、ただ漠然と実施するのではなく、会社のニーズに合わせた形で実施する必要があります。

たとえば、

  • 基本的な法令に関して、社内全体の理解を深める
  • 自社にとって重要な業務に関する法令上の理解を深める
  • 特定の部署のリスク管理能力を高める

など、コンプライアンス研修を実施する目的によって、必要となる講義の内容も密度も変わってくるでしょう。

コンプライアンス研修の委託先を見定める際には、まず研修の目的を明確化したうえで、その目的に沿った内容の講義を提供してくれるかどうかに着目すべきです。

打ち合わせを行う中で自社の要望を伝えた際に、要望に応じて講義内容を適切にアレンジしてくれる業者であれば、信頼に値するといえるでしょう。また浅く広く講義をしてもらいたい場合は人材育成会社、個別のテーマを掘り下げたい場合は弁護士に依頼するなど、業者の得意分野に合わせた講義を発注することも大切です。

講師が持つ実務家としての経験

コンプライアンス研修の講義が法律上の理論的な内容に偏っていると、受講者が具体的な実務をイメージできずに、なかなか理解が深まりません。これに対して、理論と実例がバランスよく組み合わせられている講義が行われれば、実際の業務に即して理解度を深めることができます。

講師自身がコンプライアンスに関連する実務経験を豊富に有している場合、実際に経験した事例を基にしたケーススタディを盛り込むなど、講義内容がわかりやすく実践的なものに仕上がる可能性が高いです。

また、受講者から実務上の取り扱いについて質問がなされた場合にも、適切に回答することができるでしょう。この点、企業法務に関する経験が豊富な弁護士は、コンプライアンス研修の講師として適任である場合が多いと考えられます。

説明の分かりやすさ

コンプライアンス研修の受講者は、講義内容について必ずしも十分な事前知識を備えているとは限りません。そのため、初学者にもわかりやすい説明ができるかどうかは、コンプライアンス研修の講師として重要な資質といえます。

要点を簡潔に述べる・メリハリをつけて話す・専門用語はかみ砕いて説明するなど、講義をわかりやすいものにする工夫はさまざま考えられます。コンプライアンス研修を正式に依頼する前に、講師と面談をしてみると、どのような講義が展開されるかのイメージを持ちやすいでしょう。

アフターフォローの充実度

コンプライアンス研修は、時にきわめて専門的な領域へと話が及ぶ場合もあり、受講者が一度の講義ですべてを理解することは難しい面があります。その際、講義終了後に講師に対する質問が認められていれば、受講者の理解をいっそう深めることに繋がるでしょう。

アフターフォローについてどこまで対応してくれるかは、依頼先の業者によって異なります。そのため、受講者の質問対応などをどの程度受け付けてくれるかについて、依頼時に確認しておくとよいでしょう。

まとめ

コンプライアンス研修を定期的に、また重大な出来事があった際には臨時的に実施することで、社内全体のコンプライアンスに関する知識と意識を向上させることができます。コンプライアンス研修を実施する際には、事前に研修の目的を明確化し、目的に沿った講義を提供してくれる業者に講師を依頼することが大切です。

幅広いテーマを概観的に抗議してほしい場合は人材育成会社に、個別のテーマを深掘りしてほしい場合は弁護士に依頼するなど、各業者の得意分野に応じて依頼先を選定するとよいでしょう。

弁護士にコンプライアンス研修を依頼する場合は、顧問弁護士を通じて適任の講師を紹介してもらうのがスムーズです。これから事業の安定的な成長を目指していく場合、コンプライアンス研修の導入・整備について、一度顧問弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

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