【弁護士監修】コンプライアンスを強化する重要性とは|メリットと具体的な強化方法6つ

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ゆら総合法律事務所

阿部由羅【弁護士】

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コンプライアンスを強化することは、企業が安定的に成長を続けていくためにきわめて重要です。近年では、社会情勢の変化も相まって、コンプライアンス強化の重要性は年々高まっています。成長・拡大を続けてきた企業としては、さらなる飛躍を見据えて、今一度自社のコンプライアンスチェック体制を見直してみましょう。

この記事では、コンプライアンスを強化することのメリットや、コンプライアンス強化のために有効な方法などについて解説します。

目次
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コンプライアンス強化は企業の喫緊の課題
背景にある社会の変化section 01

企業がコンプライアンスを強化する必要性は、近年急速に高まっています。その背景には、以下の社会における変化があると考えられます。

SNSの発展による情報流通速度の加速化

コンプライアンスの重要性を語るに当たって、「SNSの発展」を無視することはできません。SNSは、企業にとって広報の面から非常に有用である反面、悪評もあっという間に広まってしまう諸刃の剣です。もし企業においてコンプライアンス違反が発生し、その内容が社内に知れ渡ると、瞬く間にSNSを通じて拡散されてしまう可能性が高いでしょう。

たとえコンプライアンス違反が「疑わしい」状態にとどまる場合でも、信ぴょう性が確認されないままに拡散されてしまう傾向にあります。もしコンプライアンス違反がSNSで拡散された場合、企業のブランドイメージに与える影響は甚大です。

そのため、企業は日頃からコンプライアンスを強化し、「李下に冠を正さず」の精神でクリーンな経営を心掛けなければなりません。

大衆扇動的なメディアの報道

企業が犯したコンプライアンス違反の内容によっては、メディアによる報道の対象となり得ます。特に近年のテレビメディアは、物事の一面ばかりに注目して、大衆扇動的な報道を行う傾向にあります。

テレビ視聴者である一般市民は、大衆扇動的な報道を目にして企業に対するイメージを悪化させてしまう可能性があるでしょう。テレビメディアの影響力によって、コンプライアンス違反による悪いイメージが世間に拡散されてしまうことがないように、違反の種をあらかじめ摘んでおく必要があります

社会全体の不寛容化

上記のSNSやメディアによる影響もあって、近年では社会全体として、他人の失敗を袋叩きにする傾向が顕著になっています。重大なコンプライアンス違反であれば、社会からの批判を受けるのも仕方がありません。

しかし些細なコンプライアンス違反であっても、予想以上にインターネット上で炎上し、企業のブランドイメージを失墜させてしまう可能性があります。メディアというツールを通して尖鋭化した社会の目線を、企業は意識しないわけにはいきません。

できる限り社会からの批判を遠ざけるため、企業はコンプライアンスの強化に注力しなければならないという実情があります。

機関投資家・外国人投資家の持ち株比率の向上

機関投資家・外国人投資家は、いわゆる「モノ言う投資家」として、株主総会などで積極的に提言を行う傾向にあります。近年では、機関投資家や外国人投資家の持ち株比率が向上しており、企業にとってこれらの投資家への対応の重要性が増しています。

企業としては、これらの「モノ言う投資家」の追及に対峙するため、クリーンな経営を行っていることをきちんと説明できなければなりません。そのために、コンプライアンス強化の重要性がいっそう強調されているといえるでしょう。

コンプライアンスを強化することによるメリットsection 02

コンプライアンスを強化することは、企業にとっては「コスト」と認識されがちです。しかし、企業がコンプライアンスを強化すると、以下のメリットを得ることができます。

対外的なブランドイメージの維持・向上

コンプライアンス違反が世間に発覚すると、企業のブランドイメージは失墜してしまいます。逆に言えば、コンプライアンスを強化することで、不祥事によって足を引っ張られるリスクが減ります。そうすれば、企業の対外的なブランドイメージの維持・向上に繋がり、安定した企業経営が実現するでしょう。

株主からの信頼獲得

長年クリーンな経営を行っている企業は、ブランドイメージが向上し、結果として株主価値(株価)の向上に繋がります。その結果、株主も安心して会社株式を長期保有することができるようになります。また、株主からの信頼が得られれば、株主総会の運営も円滑になり、経営陣によるリスクテイクも適切に行うことができるでしょう。

従業員とのトラブル防止

コンプライアンス違反に端を発して、会社が従業員との間でトラブルを抱えるケースは少なくありません。特に残業代の未払い・不当解雇・ハラスメントなどは、コンプライアンス違反を原因とする従業員トラブルの典型例です。労務管理に関するコンプライアンスを強化し、法令違反の状態を徹底的に排除することで、こうした従業員とのトラブルのリスクを最小限に抑えられます。

コンプライアンスを強化するために有効な6つの方法section 03

企業がコンプライアンスを強化するためには、社内のコンプライアンス違反を発見・是正するためのチェック体制を適切に整備することが大切です。そのためには、以下の観点に留意しつつ、コンプライアンス体制の見直しを進めていくとよいでしょう。

社内にダブルチェック・トリプルチェックの体制を整備する

コンプライアンス違反の発生をできる限り少なくするには、社内に二重・三重のチェック体制を設けることが有効です。まずは現場レベルの担当者が、日常的に行われる取引や業務の内容をチェックして、コンプライアンス違反が生じていないかを確認します。

さらにその後、バックオフィス(法務部・コンプライアンス部など)にそれぞれコンプライアンスチェックの仕組みを設けて、現場レベルで見落とされたコンプライアンス違反の洗い出しを行います。このように、最低限ダブルチェックの体制を整えておけば、コンプライアンス違反を相当程度排除できるでしょう

特にバックオフィスには、コンプライアンスに関する専門的なバックグラウンドを備えた人材を採用しておけば万全です。また可能であれば、バックオフィスのさらに後ろの段階に位置する監査部門を内部に設けて、トリプルチェック体制とするのが望ましいでしょう。

社外取締役・社外監査役を招聘する

会社からの独立性が高い社外役員を招聘することで、経営に対する監視を強化できます。また、コンプライアンスに関する専門性を有する社外役員(弁護士、公認会計士など)を招聘すれば、よりコンプライアンスチェックの体制が強化されるでしょう。

社内で発生するコンプライアンス違反は、往々にして業務上の権限を有する役員が主導して行われることも多いです。経営陣の内部チェック機能を強化すれば、役員主導のコンプライアンス違反が発生するリスクを抑制することができます。

定期的に外部監査を行う

企業の規模が大きくなってくれば、オペレーションの隅々までチェックを及ぼすことが困難になるため、当然コンプライアンス違反のリスクが高まります。経営陣が現場レベルでのコンプライアンス違反を見落とすリスクも大きくなるので、定期的に外部監査を依頼するのが有効です。

ただし、外部監査にはまとまった監査費用がかかるので、コストとリターンとの兼ね合いについて経営判断が求められます。たとえば上場直前など、レピュテーションリスクの管理が非常に重要となる場面に絞って、外部監査を依頼することも考えられるでしょう。

従業員に対してコンプライアンス研修を実施する

コンプライアンス違反を徹底的に排除するには、現場レベルの従業員までコンプライアンスの意識を浸透させる必要があります。そのためには、弁護士などに講師を依頼して、コンプライアンス研修を実施するのがお勧めです。

弁護士は、コンプライアンス違反に関する取扱事例や裁判例などを豊富に集積しています。実際のコンプライアンス研修においても、実務経験から抽出した事例を用いて、コンプライアンス違反のリスクについてわかりやすい講義を提供してくれるでしょう。

弁護士による社内オペレーションのチェックを受ける

労務管理をはじめとして、会社の経営には各種の法律が数多く関係しています。違法なオペレーションが放置されると、会社に対する損害賠償請求・行政処分や行政指導・刑事罰などのリスクが生じてしまいます。

会社が法的なペナルティを受けることによって生じる経済的・社会的・時間的なコストを回避するためにも、定期的に弁護士に依頼をして、社内オペレーションについてリーガルチェックをしてもらうことをお勧めいたします。

特に企業が新しいビジネスに着手する場合には、ビジネスの実現可能性や許認可等のチェックにつき、弁護士のリーガルチェックを受けることが必須となります。また、法改正への対応は企業において見落とされがちであるため、弁護士に対応の必要がないかを定期的に確認するとよいでしょう。

内部通報制度を整備する

社内で違法行為を発見した場合、内部通報用に社内窓口・社外窓口を設けておけば、従業員が通報しやすくなります。内部通報窓口に通報した従業員を不利益に取り扱うことは法的に禁止されているので(公益通報者保護法3条~5条)、従業員としても抵抗感なく通報できる可能性が高いでしょう。

なお社外窓口を設置する際には、会社からの独立性が高い、コンプライアンスに関する知見を有する専門家に依頼するのがよいでしょう。この点弁護士は、独立性・法的専門性・法律上の秘密保持義務といった適正を備えており、内部通報制度の社外窓口担当者として適任といえます。

コンプライアンス強化の観点から経営陣が留意すべきことsection 04

コンプライアンス強化を全社的に行うためには、やはり経営陣自身の意識付けと、取締役会における意思決定プロセスの整備をきちんと行うことが大切です。現代の潮流に合わせた必要十分なコンプライアンス強化を実現するには、経営陣は以下のポイントに留意して対応するとよいでしょう。

現場とのコミュニケーションをきちんととる

現場レベルで発生するコンプライアンス違反の芽を摘むためには、経営陣が現場の情報を適切に吸い上げる必要があります。しかし、現場担当者の立場としては、経営陣に対して問題点を報告しにくいという心理的な壁を感じてしまう可能性もあるでしょう。

そのため、中核的な経営陣が現場担当者との間で積極的にコミュニケーションをとるなどして、現場でコンプライアンス違反が起こっていないかについて情報収集をすることが大切です。

取締役相互の監視を強化する

コンプライアンス違反の典型例として、取締役が権限を悪用して、違法行為を働くケースがよく見られます。

内部通報制度などを活用して、現場レベルから情報を吸い上げることも有効ですが、同時に取締役相互間での監視もきちんと機能させる必要があります。規模の大きな会社では、取締役間で業務分担が行われているのが通常でしょう。

しかしその場合でも、各取締役は自分の担当外の分野にも関心を持って資料を確認し、取締役会において積極的に質問をするなどの対応が求められます

さらに前述のとおり、会社からの独立性が高い社外取締役を招聘すれば、取締役相互間の監視を強化する効果が期待できます。

重要事項は取締役会で決定する

取締役会設置会社では、原則として会社の業務執行の決定は取締役会が行います(会社法362条2項1号)。

しかし、一部の専権事項(同条4項)を除けば、代表取締役その他の取締役に対して業務執行の決定を委任することが可能とされています。経営判断の機動性の観点からは、取締役に対して業務執行の決定を委任することには一定の合理性があるでしょう。

取締役に対する委任の範囲が過度に拡大してしまうと、場合によってはコンプライアンス違反を見落とすことに繋がりかねません。したがって、経営判断の機動性と、コンプライアンス違反のリスクの間で、最適のバランスを模索する必要があります。少なくとも、コンプライアンスと密接に関連すると思われる重要な意思決定については、取締役に委任せずに取締役会で決定するように取り扱いを見直すべきでしょう。

コンプライアンス強化は弁護士に相談をsection 05

企業がコンプライアンスを強化したい場合には、弁護士に相談しながら改善策を検討することをお勧めいたします。コンプライアンスの本質は、法令をはじめとした社会規範を遵守し、企業のレピュテーションリスクをコントロールすることにあります。

弁護士は、法令その他の社会規範の内容や解釈に精通しているほか、さまざまな観点からリスク管理を行うことに長けています。

そのため弁護士に依頼をすれば、企業のコンプライアンスに関する改善案につき、さまざまな提案を受けられるでしょう。また、コンプライアンスに関して弁護士に依頼できる事柄には、実に幅広いものがあります。

たとえば、

  1. 日常的なコンプライアンスチェック
  2. コンプライアンス研修
  3. 社内のコンプライアンスチェック体制の見直し
  4. 社外取締役への就任
  5. 取締役の意思決定機構の見直し
  6. 危機管理対応

など、コンプライアンス強化の観点からさまざまな事項を依頼することができます。

有事・平時を問わず、また経営層レベルから現場レベルまで、企業のコンプライアンス体制についてあらゆる面からチェックを受けることが可能です。今後も安定的に企業が成長を続けるため、コンプライアンス強化の必要性を感じた場合には、一度弁護士までご相談ください。

まとめ

SNSをはじめとしたメディアの影響や、機関投資家・外国人投資家の持ち株比率の増大などを背景として、企業がコンプライアンスを強化する必要性は高まっています。企業がコンプライアンス強化を実現するには、経営陣から従業員まで、全社的にコンプライアンスに対する意識を高めることが大切です。

それと同時に、コンプライアンス違反を発見・是正するためのチェック機構の整備も、組織的に進めていかなければなりません。弁護士に相談すれば、現状のコンプライアンスチェック体制における問題点を洗い出し、改善策についてアドバイスを受けられます。

またコンプライアンス研修等を通じて、会社全体としてのコンプライアンス意識を高めるための取り組みについても、弁護士のサポートを受けることが有効です。コンプライアンスを強化したい企業経営者・担当者の方は、一度弁護士までご相談ください。

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西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て、ゆら総合法律事務所代表弁護士。不動産・金融・中小企業向けをはじめとした契約法務を得意としている。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。(埼玉弁護士会)

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