- 「監査の現場にAIツールが次々と入ってきて、この先も会計士の仕事は残るのだろうか」
- 「突合や調書作成をAIが担うようになったら、若手の自分はどこで経験を積めばいいのか」
監査法人で働く公認会計士の方や、これから資格を目指す方の中には、こうした不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、公認会計士という職業がAIでなくなる可能性は低いと考えられます。
監査証明は法律で公認会計士と監査法人に限られた業務であり、AIを使っても監査人の責任は軽くならないためです。一方で、若手が担ってきた定型的な作業はすでにAIへ移り始めており、仕事の中身と経験の積み方は確実に変わっています。
この記事では、理化学研究所と日本公認会計士協会の共同研究や、2026年7月に公表された公認会計士・監査審査会のモニタリングレポートなどの一次情報をもとに、AIで変わる業務と人に残る業務を整理します。
そのうえで、職域別・経験年数別に今からできることを解説します。
- 職業としての公認会計士は残るものの、サンプル抽出や突合、調書の下書きといった若手の定型業務はすでにAIへ移り始めている
- 「80%」「49%」などの数字は対象も測り方も違い、監査業務を要素に分けた推計では、10年後の代替可能性は主査で約3割、補助者で約5割にとどまる
- 価値が上がるのはAIの出力を検証し、根拠を説明できる会計士であり、領域と経験年数に応じた動き方がある
結論|公認会計士の仕事はAIでなくならないが、業務の中身は入れ替わる
最初に、この記事全体の結論を整理しておきます。公認会計士の仕事が「AIでなくなるか」という問いに対しては、なくならないという答えが妥当です。
ただし、それは「今の働き方がこのまま続く」という意味ではありません。どの工程をAIが担い、どこに人の仕事が残るのかを理解しておくことが、これからのキャリアを考える出発点になります。
2026年時点では「職業は残り、担う工程が変わる」段階にある
公認会計士・監査審査会が2026年7月に公表した「令和8年版モニタリングレポート」では、監査の現場で起きている変化が具体的に書かれています。監査サンプルの抽出や帳票の突合せ、議事録や監査調書の下書きの作成など、若手会計士が担ってきた定型的な業務はAIによる代替が進み、作業時間の削減が図られているとされています。
同レポートは、その結果として「いわゆる下積み期間」が短くなり、会計士がAIの作業結果をどう判断し、どう活用するかといった高度な業務に時間を割けるようになっていると指摘しています。大手監査法人では、AIが自律的に作業を進めるエージェント型AIを監査システムに導入し始めており、調書のレビューなどでもさらなる時間削減が見込まれているそうです。
[参照元]令和8年版モニタリングレポート|公認会計士・監査審査会
つまり、2026年時点で起きているのは「会計士が不要になる」という変化ではありません。会計士が手を動かしていた工程の一部がAIに移り、人は判断や説明の工程に時間を使うようになる、という役割の入れ替わりです。
この変化は将来の予測ではなく、すでに大手監査法人の現場で始まっている現在の話だと捉えておくとよいでしょう。
「なくなる」と言われる根拠は大きく3つある
それでも「会計士の仕事はAIに奪われる」という声がなくならないのには、いくつかの理由があります。主なものは次の3つです。
1つ目は、職業ごとにコンピュータへの置き換えやすさを推計した研究の存在です。
2015年に野村総合研究所と英オックスフォード大学のオズボーン准教授らが行った共同研究では、日本の601の職業についてコンピュータ化の確率が推計され、公認会計士は平均賃金が高い職業でありながら、コンピュータ化の可能性が高い側に位置づけられました。この研究が報道などで広く引用されたことで、「会計士はAIに代わられる職業」というイメージが定着しています。
[参照元]野村総研上田氏説明資料「AIと共存する未来 ~AI時代の人材~」|厚生労働省
2つ目は、監査ツールの急速な普及です。証憑突合や仕訳の異常検知、開示書類のチェックなどは、すでにツールで処理できる範囲が広がっています。自分が担当していた作業がツールに置き換わるのを目の当たりにすると、「いずれ自分も不要になるのでは」と感じるのは自然なことです。
3つ目は、監査の現場で進む業務の集約です。前述のモニタリングレポートでは、大手監査法人が残高確認状の発送・回収など判断を要しない作業をデリバリーセンターと呼ばれる専門組織に移管していることも紹介されています。
AIとあわせて「会計士でなくてもできる作業」が切り出されていく流れが、仕事が減っていく印象を強めているといえます。
監査証明は独占業務であり、最終責任を負うのは人である
一方で、公認会計士の仕事がなくならないといえる最大の理由は、制度にあります。公認会計士法第2条第1項は、他人の求めに応じて報酬を得て財務書類の監査または証明をすることを公認会計士の業務と定めています。
そして同法第47条の2により、公認会計士または監査法人でない者がこの業務を営むことは禁じられています。
[参照元]公認会計士法|e-Gov法令検索
AIがどれだけ高度になっても、監査意見に署名し、その結果に責任を負う主体は公認会計士です。日本公認会計士協会が2024年8月に公表した「監査におけるAIの利用に関する研究文書」の概要でも、AIを利用した場合であっても監査人の責任は軽減されないこと、AIの導入によって会計士が不要になることはないことが示されています。
[参照元]テクノロジー委員会研究文書第11号「監査におけるAIの利用に関する研究文書」の概要|日本公認会計士協会
監督当局の姿勢も同じ方向を向いています。令和8年版モニタリングレポートは、監査監督機関国際フォーラム(IFIAR)の報告書を紹介するなかで、AIなどによる重要な意思決定の場面に監査責任者を関与させ、「人間主導の監査」を確実に担保していく必要があるとしています。
AIは監査の道具として広がっていきますが、監査そのものの担い手が人であるという前提は変わっていません。
不安の正体は「仕事の消失」より「経験の積み方の変化」にある
ここまでを踏まえると、多くの会計士が感じている不安の中身は、「仕事がなくなること」よりも「これまでどおりの方法で経験を積めなくなること」にあると考えられます。
理化学研究所と日本公認会計士協会の共同研究では、監査業務を要素に分けたうえで、AIによる代替可能性と昇進への重要度との関係を調べています。
その結果、補助者の業務では代替可能性が高い業務ほど人事評価上の重要度が低い傾向があり、主査の業務では「監査上の重要事項に係る検討及び判断」の代替可能性が20.0%と低い一方で、昇進への重要度は14.73%と全要素の中で最も高くなっていました。
[参照元]AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響(研究報告書)|日本公認会計士協会
この結果は、評価されるキャリアの核になる仕事ほどAIに置き換わりにくいことを示しています。裏を返すと、突合や仕訳テストといった定型作業を「経験」として積み上げてきた従来の育ち方は通用しにくくなります。
判断に関わる機会を自分から取りに行けるかどうかが、これからの会計士の差になっていくでしょう。経験年数別の具体的な動き方は、後半の「経験年数別にAI時代のキャリアの動き方を考える」で解説します。
「80%」「49%」「50.5%」はそれぞれ何を測った数字なのかを整理する
公認会計士とAIについて調べると、さまざまな数字が目に入ります。ところが、これらの数字は対象も測り方も時点もばらばらで、同じ土俵で比べられるものではありません。ここでは代表的な数字が何を測ったものなのかを整理し、数字に振り回されずに読むための前提を確認します。
先に全体像を表にまとめておきます。
| 調査・推計 | 対象 | 何を測ったか | 調査時点 | 主な数値 |
|---|---|---|---|---|
| 野村総研×オックスフォード大の共同研究 | 日本の601職業 | 1人の業務すべてをコンピュータが代わりに遂行できる技術的な確率 | 2015年 | 代替可能性が高い職業に就く人が労働人口の49% |
| 理研×日本公認会計士協会の共同研究(代替可能性) | 監査業務(主査・補助者それぞれ10要素) | 業務要素ごとの代替可能性の単純平均 | 2019年9月〜2020年3月に調査 | 10年後:主査34.7%・補助者50.5%/30年後:主査45.6%・補助者60.6% |
| 同研究(監査時間ベース) | 同上 | 1人あたり年間監査時間のうち、代替される時間の割合 | 同上 | 10年後:主査約34%・補助者約55% |
| 同研究(生産性向上額ベース) | 同上 | 業務時間に昇進への重要度を掛けた報酬ベースの代替割合 | 同上 | 10年後:主査32.0%・補助者48.4%/30年後:主査42.5%・補助者58.0% |
「労働人口の49%」は職業単位でコンピュータ化の確率を推計したものである
「日本の労働人口の49%がAIやロボットに代替可能」という数字は、2015年の野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究によるものです。この研究は601の職業それぞれについて、コンピュータ化の確率を推計しています。
注意したいのは、ここでいう「代替」の定義です。厚生労働省の審議会で示された野村総研の説明資料では、コンピュータによる代替とは「ある職種に従事する1人の業務すべてをコンピュータが代わって遂行できること」とされ、49%は完全代替の技術的な可能性、いわば最大値だと説明されています。
[参照元]野村総研上田氏説明資料「AIと共存する未来 ~AI時代の人材~」|厚生労働省
さらに、職種に従事する人のスキルや属性から分析したものであり、労働需給の環境などは考慮していないとも書かれています。
つまり、この数字は「技術的にはここまで置き換えられうる」という上限を示したもので、実際に49%の人が職を失うと予測したものではありません。
「代替可能性80%以上」は会計士の業務全体を測った数字ではない
公認会計士について「AIに代替される可能性は80%以上」と紹介されることがありますが、これも上記の職業単位の推計に由来する見方です。同じ説明資料では、公認会計士は平均賃金が高い一方でコンピュータ化可能確率が高い職業の一つとしてグラフに示されています。
ただし、この推計は公認会計士という職業を一つのまとまりとして扱っており、監査業務の中の「突合」と「重要事項の判断」のような違いは区別されていません。理化学研究所の研究報告書も、職種別に代替可能性を推計したFreyとOsborneの研究について、職業の業務内容を単純化しすぎていると指摘しています。
[参照元]AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響(研究報告書)|日本公認会計士協会
「80%」という数字だけを見て将来を悲観する必要はなく、職業単位の大づかみな推計だと理解しておけば十分です。
理研とJICPAの研究は監査業務を要素に分けて代替可能性を推計している
公認会計士の業務に即した数字としてより参考になるのが、理化学研究所 革新知能統合研究センターが日本公認会計士協会と協力して行った研究です。2022年1月に報告書が公表されました。
この研究では、監査業務を主査(監査現場の責任者)と補助者(主査を補助する、実務経験が相対的に少ないスタッフ)に分け、それぞれの業務を10の要素に区分しています。
各要素がAIにどの程度代替されうるかを、AI研究者が専門家の意見を繰り返し集約するデルファイ法で評価しました。あわせて、大手2法人・準大手2法人の監査法人に所属する会計士へアンケートを行い、2019年9月から2020年3月にかけて395件の回答を得ています。
[参照元]AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響(研究報告書)|日本公認会計士協会
職業全体ではなく、監査の工程ごとに「どこがAIに向いていて、どこが向いていないか」を評価している点が、職業単位の推計との大きな違いです。
主査34.7%・補助者50.5%と「約55%」は指標が違う
理研の研究から引用される数字にも、いくつかの種類があります。プレスリリースで示された「10年後に主査34.7%、補助者50.5%」は、10の業務要素それぞれの代替可能性を平均したものです。
[参照元]AI 等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響|理化学研究所 革新知能統合研究センター
一方、報告書には各業務に費やしている1人あたりの年間監査時間と、10年後に期待される監査時間も掲載されています。補助者の場合、現在の年間監査時間の合計は約1,435時間で、10年後に期待される時間の合計は約640時間です。差し引くと約55%の時間がAIに代替される計算になります。
補助者は代替可能性が81.2%と最も高い「証憑突合、帳簿突合、分析的手続」に年間約370時間を使っているため、時間で重みづけすると割合が高く出るわけです。同じ計算をすると、主査は約1,043時間から約689時間となり、代替される時間は約34%です。
[参照元]AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響(研究報告書)|日本公認会計士協会
さらに、業務時間に昇進への重要度を掛け合わせた報酬ベースの試算では、10年後の代替割合は主査32.0%、補助者48.4%とされています。
「50.5%」「約55%」「48.4%」は、どれも同じ研究から出た数字ですが、平均の取り方が違うだけで矛盾しているわけではありません。
数字を読むときは「代替=失職ではない」などの前提を押さえておく
これらの数字を自分のキャリアに当てはめる前に、押さえておきたい前提があります。
まず、代替可能性は「その業務をAIが担える割合」であり、「その割合の会計士が職を失う」という意味ではありません。理研の報告書も、業務・予算・雇用の3要素のうち、不確実性の高い予算と雇用は推計に含めず、業務の代替可能性に焦点を絞ったと明記しています。
次に、生産性の試算はAIを使う費用をゼロと仮定しています。報告書は、AI導入費用などのコストが含まれていないことや、空いた時間をより重要な業務に振り向ける効果が考慮されていないことに十分留意する必要があると述べています。
また、定型的に見える業務であっても、前提条件や目的を与えるのは人の役割です。報告書は、定型的なタスクを単純にAIへ置き換えられると捉えるのは適当ではないとしています。
最後に、この研究の対象は監査業務に限られています。アドバイザリーや税務、事業会社での経理財務といった会計士の他の仕事は含まれていません。監査以外の領域でAIの影響がどう違うかは、後半の「監査以外の職域ではAIの影響がどう違うのかを比べる」で整理します。
[参照元]AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響(研究報告書)|日本公認会計士協会
【2026年】公認会計士の監査現場ではAIがここまで入ってきている
理研の研究は2019年から2020年の調査をもとにした将来推計でした。では、2026年の監査現場では実際にどこまでAIが使われているのでしょうか。ここでは公認会計士・監査審査会の令和8年版モニタリングレポートをもとに、大手監査法人を中心とした最新の状況を確認します。
大手監査法人はAI監査ツールと生成AIの導入を進めている
令和8年版モニタリングレポートによると、大手監査法人を中心に、監査実施者のノウハウをAIに学習させたり、生成AIを活用したりすることで、財務データの分析や書類確認を中心に監査業務の効率化・高度化が進められています。
具体的な活用例として、レポートでは次のようなものが挙げられています。
- チャットボットで会計・監査の基準や法人内の監査マニュアルに関する照会に対応する
- 有価証券報告書や過去の不適切会計のデータをもとに、被監査会社の財務諸表や仕訳をAIが分析し、不正の兆候がある勘定科目や異常な仕訳を監査チームに示す
- 大規模言語モデルと会計士のノウハウを組み合わせ、契約書などの専門文書から監査に必要な箇所を漏れなく抽出する
[参照元]令和8年版モニタリングレポート|公認会計士・監査審査会
世界的に見ても、この流れは加速しています。同レポートが紹介するIFIARの2026年4月の報告書によると、2026年には6大監査ネットワーク全体でAIを搭載したツールの数が前年比で約30%増えました。
タスクを自律的に開始・処理できるエージェント型AIについても、実装に向けた計画が進んでいるとされています。
サンプル抽出・突合・調書の下書きはすでにAIへ移りつつある
監査業務のIT化の状況について、同レポートは大手監査法人と準大手監査法人のツール導入状況を整理しています。大手監査法人で導入済みとされているのは、
- 外部データと被監査会社のすべての売上データを照合する証憑突合ツール
- 取引内容(仕訳)を分析して異常仕訳を検出するツール
- データ入力や加工を自動化するRPA
- 債権・債務の残高確認を自動化するシステム
- 過去の財務情報を用いて異常な取引を予測するAI
などです。導入中のものとしては、生成AIによる監査調書のドラフト作成支援(AIエージェント)などが示されています。準大手監査法人でも、証憑突合ツールやAIの導入が進められている段階です。
[参照元]令和8年版モニタリングレポート|公認会計士・監査審査会
ここで挙がっている作業は、理研の研究で代替可能性が高いと評価された「証憑突合、帳簿突合、分析的手続」(81.2%)や「仕訳テスト」(66.7%)とほぼ重なります。2022年に公表された研究で「10年後に代替が進む」とされた領域が、数年のうちに実際の導入段階に入っていると見ることができます。
また、監査支援ツールの中には、被監査会社の基幹システムからデータを一括で取得し、分析結果を自動で作成する機能を持つものもあります。従来は会計士が自分で行っていたデータ加工や集計、調書のドラフト作成といった作業が、ツールの中で完結するようになりつつあるわけです。
働く時間にも変化が表れています。同レポートによると、大手監査法人の年間平均執務時間は概ね2,000時間前後で推移しながら、近年は緩やかな減少傾向にあります。審査会は、AIを含むITツールの導入やデリバリーセンターへの業務移管といった効率化施策が寄与している可能性があるとしています。
中小監査法人でも、報告徴収の対象となった44法人のうち20法人が監査調書の電子化を、10法人が仕訳分析ツールの導入を済ませていると回答しており、規模による差はあるものの、IT化は監査業界全体で進んでいます。
エージェント型AIの導入で調書のレビュー工程も変わり始めている
これまでの監査ツールは、人が指示した作業を処理する「道具」の位置づけでした。これに対してエージェント型AIは、与えられた目的に向けて、AIが自律的に作業の手順を組み立てて実行する仕組みです。
令和8年版モニタリングレポートでは、大手監査法人がエージェント型AIを監査システムに導入し始めており、監査調書のレビューなどで作業時間のさらなる削減が見込まれていると書かれています。これまで「作業」の領域にとどまっていたAIの活用が、作業結果を確認する「レビュー」の領域にまで広がり始めているということです。
レビューは主査やマネージャーが担ってきた工程です。AIの影響は補助者の定型業務だけでなく、上位の職階の仕事の進め方にも及び始めていると考えておく必要があります。
監督当局は「人間主導の監査」を前提にAI活用を求めている
AIの活用が広がる一方で、監督当局はそのリスクにも目を向けています。令和8年版モニタリングレポートは、監査でAIを活用する際の課題として、次の5点を挙げています。
- 入力するデータの正確性や網羅性が損なわれると、誤った結果が出力される
- 深層学習では判断過程が何層にもわたるため、結果の根拠を説明しにくい(ブラックボックス化)
- アルゴリズムや学習データの偏りが、偏った結果につながる
- 法人外部のAIを使うと、機密情報が流出したり、外部の機密情報を意図せず使ってしまったりするおそれがある
- AIが文脈を理解しないまま、もっともらしいが誤った内容を出力することがある(ハルシネーション)
そのうえで、AIの利用度を高める監査法人には、これらの課題に対応する内部統制の構築が求められるとしています。所属する会計士についても、AIの出力を鵜呑みにしないよう、データサイエンスや機械学習について一定の知識が必要になると明記されています。
[参照元]令和8年版モニタリングレポート|公認会計士・監査審査会
同レポートは、AIで生成された文書やデータが監査証拠として使われる場合には従来の監査アプローチを見直す必要があることや、AIが不正に利用される可能性にも十分な注意が必要であることにも触れています。
被監査会社の側でもAIの利用が広がるなかで、「AIが作ったものを検証する」という新しい仕事が会計士に生まれつつあるといえます。
下積み期間の短縮は若手にとって機会にもリスクにもなる
AIによって下積み期間が短くなることは、若手会計士にとって良い面と注意すべき面の両方があります。
良い面は、早い段階から本質的な業務に関われることです。モニタリングレポートも、こうした動きによって若手会計士であっても、より本質的な業務に早期から携われるようになっていると評価しています。
大手監査法人ではキャリアパスの柔軟化や給与水準の引上げといった人事施策も進められており、近年はマネージャー層やスタッフ層の離職率が低下傾向にあるとされています。
[参照元]令和8年版モニタリングレポート|公認会計士・監査審査会
注意したいのは、証憑や帳簿に直接触れる経験が減ることで、判断の土台となる感覚を身につける機会が減りかねない点です。AIが示した「異常な仕訳」を本当に問題があると判断できるかどうかは、取引の実態をどれだけ理解しているかにかかっています。
作業時間が減った分を、なぜその処理になるのかを考える時間に回せるかどうかが、数年後の実力の差になるでしょう。
AIに作業を任せられる環境にいること自体は追い風です。その環境で何を学ぶかを意識できる人ほど、AI時代の会計士として評価されやすくなります。
AIに任せられる業務・人に残る業務を監査の工程別に確認する
ここからは、監査の工程ごとに「AIに任せられる業務」と「人に残る業務」を具体的に見ていきます。
理研と日本公認会計士協会の共同研究では、補助者と主査それぞれの業務を10の要素に分け、10年後の代替可能性と1人あたりの年間監査時間を示しています。自分が今どの工程に時間を使っているかと照らし合わせながら読んでみてください。
補助者業務では証憑突合や仕訳テストの代替が進みやすい
補助者の業務要素ごとの代替可能性は、次のとおりです。
| 補助者の業務要素 | 代替可能性(10年後) | 年間監査時間(現在) | 年間監査時間(10年後の想定) |
|---|---|---|---|
| 証憑突合、帳簿突合、分析的手続 | 81.2% | 約370時間 | 約70時間 |
| 仕訳テスト | 66.7% | 約84時間 | 約28時間 |
| 表示チェック(四半期報告書含む) | 61.3% | 約156時間 | 約61時間 |
| 業務プロセスの運用テスト | 57.2% | 約131時間 | 約56時間 |
| 実査、確認、観察(立会) | 53.2% | 約115時間 | 約54時間 |
| 業務プロセスに関する情報収集と整理(整備評価) | 50.0% | 約133時間 | 約66時間 |
| 追加的な手続 | 43.0% | 約89時間 | 約51時間 |
| 全社統制の評価 | 40.7% | 約65時間 | 約38時間 |
| 監査チーム内の調整 | 33.3% | 約152時間 | 約101時間 |
| クライアントとの調整 | 17.9% | 約141時間 | 約115時間 |
[参照元]AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響(研究報告書)|日本公認会計士協会
最も代替可能性が高いのは「証憑突合、帳簿突合、分析的手続」で、81.2%です。
補助者はこの業務に年間約370時間を使っており、10年後には約300時間の削減が見込まれています。仕訳テストや表示チェックのように、ルールに沿って大量のデータを確認する作業も、代替可能性が6割を超えています。
一方で、最も代替可能性が低いのは「クライアントとの調整」で17.9%です。資料の依頼や質問への対応、スケジュールのすり合わせといったやり取りは、10年後もほとんど人に残るとされています。
補助者の段階でも、クライアントと直接やり取りする経験は、AIに置き換わりにくい財産になると考えてよいでしょう。
主査業務では重要事項の判断やクライアント調整が人に残る
主査の業務要素では、全体的に代替可能性が補助者より低くなっています。
| 主査の業務要素 | 代替可能性(10年後) | 昇進への重要度 |
|---|---|---|
| 定型的な監査手続の実施 | 70.4% | 5.12% |
| 監査契約時(新規締結・更新時)のリスク評価 | 42.0% | 8.12% |
| マネジメントレター案等の作成 | 38.3% | 8.74% |
| 企業環境の理解及び監査リスクの評価 | 37.0% | 11.16% |
| 監査チームのマネジメント | 34.7% | 11.02% |
| 監査調書の査閲と監査意見案の作成 | 29.9% | 9.28% |
| 適切な監査手続の立案と必要な修正 | 29.6% | 10.84% |
| 非定型な監査手続 | 27.6% | 10.29% |
| 監査上の重要事項に係る検討及び判断 | 20.0% | 14.73% |
| クライアントとの調整 | 17.9% | 10.70% |
[参照元]AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響(研究報告書)|日本公認会計士協会
代替可能性が50%を超えるのは「定型的な監査手続の実施」の1項目だけです。この項目は昇進への重要度も5.12%と最も低く、主査として評価されるポイントではないことがわかります。
反対に、「監査上の重要事項に係る検討及び判断」は代替可能性が20.0%と低く、昇進への重要度は14.73%で最も高くなっています。
イレギュラーな事象にどう対応するか、会計処理の妥当性をどう判断するかといった仕事は、AIの時代になっても主査の中核であり続けると考えられます。
主査になる前の段階から、こうした判断の場面にどれだけ立ち会えるかが、その後の成長を左右するでしょう。
AIが苦手とする「判断・対話・責任」の中身を具体的に知る
「AIにできないのは判断と対話」とよくいわれますが、それだけでは抽象的です。
日本公認会計士協会の研究文書は、監査でAIを使いやすい領域を、AIが「できる・できない」と、AIに「させるべき・させるべきでない」という2つの軸で整理しています。
そのうえで、単純作業や補助的な役割であればAIを使いやすい一方、監査上の判断を伴う領域や、現状のAIでは結果の根拠を説明しにくい領域ではAIの利用が難しいとしています。
[参照元]テクノロジー委員会研究文書第11号「監査におけるAIの利用に関する研究文書」の概要|日本公認会計士協会
この整理を実務に引き寄せると、人に残る仕事は次の3つに分けて考えられます。
- 判断:会計上の見積りの合理性、重要性の判断、監査意見の形成など、正解が1つに決まらない場面で結論を出す仕事
- 対話:経営者や監査役等とのコミュニケーション、資料の背景にある事情の聞き取り、指摘事項の伝え方など、相手の理解と納得を得る仕事
- 責任:AIの出力を監査証拠として採用してよいかを見極め、その判断の根拠を調書に残し、説明する仕事
特に3つ目の「責任」は、AIの普及によってむしろ重みが増す仕事です。AIが示した結果をそのまま使うのではなく、なぜその結果を信頼できるのかを説明できなければ、監査人としての責任を果たせません。
前述のとおり、日本公認会計士協会もAIを使っても監査人の責任は軽減されないと明記しています。
実査・立会や不正への対応は効率化と人の判断が組み合わさる
「実査、確認、観察(立会)」は、補助者業務の中で代替可能性が53.2%と評価されています。モノや現場を直接確認する手続は人にしかできないと思われがちですが、実際には効率化の対象になりつつあります。
令和8年版モニタリングレポートでも、監査法人で開発中の技術として、実地棚卸の立会を効率化するドローンが挙げられています。残高確認の作業も、すでにシステムによる自動化が導入済みとされています。
不正への対応も同様です。AIは膨大な仕訳から異常な取引を見つけ出すことを得意としており、不正の兆候を示す勘定科目や仕訳を監査チームに提示するツールが使われています。ただし、AIが示すのはあくまで「怪しい候補」です。それが本当に不正なのか、合理的な理由がある取引なのかを見極めるには、事業の実態の理解や関係者への質問が欠かせません。
同レポートは、AIが財務諸表利用者を誤導したり統制を回避したりする目的で、データや文書の生成・改ざんに使われる可能性にも注意が必要だとしています。
AIが不正を見つける道具になる一方で、不正の手段にもなりうる時代には、職業的懐疑心を持って証拠を吟味する会計士の役割はかえって重要になると考えられます。
監査以外の職域ではAIの影響がどう違うのかを比べる
ここまで見てきた理研の研究は、監査業務だけを対象にしたものでした。公認会計士の活躍の場は監査法人に限らず、アドバイザリーファームや事業会社、税務の分野など多岐にわたります。
職域によってAIがもたらす変化は異なるため、ここでは主な職域ごとに、AIで効率化が進む作業と人に残る価値を整理します。
まず全体像を表にまとめます。この表は、本記事で紹介した一次情報と各職域の業務特性をもとに、編集部が整理したものです。
| 職域 | AIで効率化が進みやすい作業 | 人に残る価値 | AIによる変化の方向 |
|---|---|---|---|
| 監査法人(監査・保証) | 突合、仕訳テスト、表示チェック、調書の下書き | 重要事項の判断、監査意見の形成、経営者との対話 | 作業は減り、判断と検証の比重が増える |
| IT監査・アドバイザリー | 統制テストの一部、データの収集・加工 | AIやITを使った仕組みの評価、AIに関する保証 | AIの普及が新たな業務を生む |
| FAS・M&A | 財務データの集計・分析、資料作成 | 論点の見極め、価値評価の前提づくり、交渉 | 分析は速くなり、判断と交渉に時間を使う |
| 事業会社の経理・財務 | 仕訳入力、照合、定型レポート作成 | 決算方針の判断、経営への提言、業務設計 | 作業担当から仕組みを設計する役割へ移る |
| 税務 | 申告書作成の補助、税法リサーチの下調べ | 税務判断、スキーム設計、顧客への説明 | 定型的な申告業務の比重が下がる |
| IPO支援・内部監査 | 文書化の下書き、テストの一部 | 内部統制の設計、上場準備の推進 | 体制づくりの経験の価値が高まる |
| サステナビリティ保証 | データの集計・突合 | 保証手続の設計と判断 | 制度化により人材需要が生まれる |
IT監査・アドバイザリーはAIの普及で業務が広がる側に回る
AIの普及によって仕事が増える可能性が高いのが、IT監査やリスクアドバイザリーの領域です。
日本公認会計士協会の研究文書は、社会でAIの利用が進むにつれてAIによる社会的なリスクも拡大していると指摘しています。
そのうえで、AIの信頼性を高めるために、会計士がAIに関連する保証業務などで貢献できると考えられること、AIの利用が会計士の業務領域の拡大をもたらす可能性があることを示しています。
[参照元]テクノロジー委員会研究文書第11号「監査におけるAIの利用に関する研究文書」の概要|日本公認会計士協会
企業がAIを業務に組み込むほど、「そのAIは正しく動いているか」「AIを使った業務プロセスに統制が効いているか」を検証するニーズが高まります。
監査法人の側でも、令和8年版モニタリングレポートによると、大手監査法人がAIの活用や留意点に関する研修を通じたIT人材の育成に取り組み、外部の経験豊かなITエンジニアの採用も進めているとされています。会計とITの両方がわかる人材は、監査法人の内外で必要とされやすい状況です。
FAS・M&Aでは分析作業が速くなり、交渉と判断の比重が上がる
財務デューデリジェンスや企業価値評価を扱うFAS(財務アドバイザリーサービス)やM&Aの領域でも、財務データの集計や分析、資料作成といった作業はAIで速くなっていくと考えられます。
大量のデータを短時間で整理し、異常な数値を抽出するのはAIが得意とする作業だからです。
一方で、デューデリジェンスで何を重要な論点とするか、事業計画のどの前提を疑うべきか、評価結果をもとに買い手と売り手の間でどう交渉するかといった仕事は、案件ごとに状況が異なり、正解が1つに決まりません。
こうした仕事は、前述の「判断・対話・責任」がそのまま求められる領域です。分析にかかる時間が短くなる分、論点の見極めやクライアントとの議論に時間を使えるようになり、経験の差がより成果に表れやすくなるでしょう。
事業会社の経理・財務では決算業務の自動化が先に進む
事業会社で働く公認会計士は増え続けています。令和8年版モニタリングレポートによると、日本公認会計士協会の「組織内会計士ネットワーク」に登録している、監査法人や税理士法人などを除く会社・その他の法人・行政機関で働く公認会計士は、2016年末の1,377人から2025年末の2,545人へと、この10年で約2倍に増えています。
事業会社の経理・財務部門は、AIによる自動化が早く進む領域の一つです。野村総研の説明資料でも、経理・財務などの本社部門では、経理処理や文書作成といった定型業務だけでなく、計画作成や業績診断、異常検知など、専門知識や経験を要する業務の自動化も進むと示されています。
資料はこうした変化を、人の役割の二極化と表現しています。
[参照元]野村総研上田氏説明資料「AIと共存する未来 ~AI時代の人材~」|厚生労働省
そのため、事業会社に移る会計士に求められるのは、仕訳や決算の作業を自分で回す力よりも、AIやシステムを前提に決算の仕組みを設計し、数字を経営判断に結びつける力です。監査で多くの会社の業務プロセスを見てきた経験は、業務設計の場面で強みになります。
税務領域では申告書作成より税務判断と顧客対応が残る
公認会計士は、税理士として登録することで税務の仕事も行うことができます。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)でも、公認会計士の仕事の一つとして、税理士登録による税務の仕事が紹介されています。
[参照元]公認会計士|職業情報提供サイト(job tag)・厚生労働省
税務の領域でも、会計データをもとにした申告書の作成補助や、税法・通達の下調べといった作業は、AIで効率化が進むと考えられます。
一方で、組織再編や事業承継、国際税務のように、複数の選択肢の中から税務上のリスクと効果を比較して方針を決める仕事は、顧客の事情を踏まえた判断が欠かせません。定型的な申告業務中心の働き方から、判断や提案を伴う業務へ軸足を移せるかどうかが、税務領域でのキャリアの分かれ目になりそうです。
IPO支援・内部監査では体制づくりの経験が評価されやすい
上場準備企業の支援や内部監査の領域では、内部統制の仕組みづくりが仕事の中心になります。
2023年4月に企業会計審議会が公表した内部統制報告制度の基準改訂では、「ITへの対応」について、ITの委託業務に係る統制の重要性が増していることや、サイバーリスクの高まりを踏まえた情報システムのセキュリティ確保の重要性が記載されました。
ITを利用した内部統制の評価についても、留意すべき事項が追加されています。改訂後の基準は、2024年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。
[参照元]財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)|金融庁
企業の業務がAIやシステムに依存するほど、そのシステムに適切な統制が組み込まれているかを設計・評価できる人材が必要になります。
文書化の下書きなどはAIで効率化できても、会社の実態に合った統制をゼロから組み立て、上場審査に耐える体制に仕上げる経験は、簡単には置き換えられません。
サステナビリティ保証は人材が足りない新しい領域である
AIとは別の流れですが、会計士の新しい活躍の場として注目されるのがサステナビリティ情報の保証です。
金融審議会のワーキング・グループが2026年1月に公表した報告では、プライム市場上場企業のうち時価総額3兆円以上の企業に2027年3月期からサステナビリティ開示基準(SSBJ基準)の適用を義務づけ、時価総額に応じて段階的に対象を広げる方針が示されました。
第三者保証は、開示基準の適用が義務化された翌年から求められます。保証業務を行う者は登録制とされ、監査法人以外も要件を満たせば登録できる仕組みです。
[参照元]金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」報告(概要)|金融庁
令和8年版モニタリングレポートも、サステナビリティ情報の保証業務は今後の拡充が見込まれる一方で、高度な専門性を要するため、十分な知見とスキルを備えた人材の確保が難しい分野だとしています。
同レポートは、生成AIやデータ分析などのデジタル分野とあわせて、サステナビリティ分野を公認会計士に幅広い成長機会を提供する分野と位置づけています。
AI時代に市場価値が上がる会計士と下がる会計士の違いを知る
AIの影響が職域によって異なることを見てきました。
では、同じ公認会計士でも、AI時代に評価が高まる人とそうでない人を分けるものは何でしょうか。ここでは会計士の人数の変化を確認したうえで、市場価値を左右するポイントを整理します。
登録者は13年で約1.5倍に増え、監査法人の外で働く会計士が増えている
公認会計士の数は増え続けています。令和8年版モニタリングレポートによると、公認会計士の登録者数は2013年3月末の24,964人から2026年3月末の37,715人へと51.1%増えました。
一方で、監査法人に所属する人は12,799人から14,915人への16.5%増にとどまっており、登録者全体の伸びに比べると伸び悩んでいます。
前述のとおり、事業会社などで働く組織内会計士はこの10年で約2倍になっています。同レポートは、会計士の活躍の場が広がり、一般企業のCFOや経理責任者、コンサルティング会社など、組織や社会への貢献を実感しやすい職種の選択肢が増えていると分析しています。
この数字からわかるのは、会計士の数が増えるなかで、監査法人の外にキャリアを広げる人が増えているということです。資格を持っているだけで差がつく時代ではなくなりつつあり、どの領域でどんな経験を積んできたかが、市場価値を分ける要素になっています。
公認会計士の将来性を全体から知りたい方は、公認会計士の将来性と転職事情を解説した記事もあわせて参考にしてください。
定型業務の経験しか語れないと評価されにくくなる
市場価値が上がりにくくなるのは、職務経歴を説明するときに、定型的な作業の経験しか語れない人です。
理研の研究では、補助者の業務について、代替可能性が高い業務ほど人事評価上の重要度が低い傾向が見られました。監査法人の中で評価されにくい業務は、転職市場でも差別化の材料になりにくいと考えられます。
[参照元]AI等のテクノロジーの進化が公認会計士業務に及ぼす影響(研究報告書)|日本公認会計士協会
たとえば「売上の証憑突合を担当した」「仕訳テストを実施した」という経験だけでは、AIツールが同じ作業を担うようになった今、採用する側にとっての価値は伝わりにくくなります。
同じ業務を担当していても、「どんなリスクを想定して手続を組み立てたか」「異常値を見つけたときにクライアントへどう確認し、どう結論づけたか」まで説明できるかどうかで、評価は大きく変わります。
AIの出力を検証し、根拠を説明できる人の価値が上がる
反対に、AI時代に価値が上がるのは、AIを使いこなしたうえで、その結果を検証し、根拠を説明できる人です。
令和8年版モニタリングレポートは、AIの利用度を高める監査法人に所属する会計士について、AIのアウトプットを鵜呑みにしないよう、データサイエンスや機械学習に関して一定の知識が必要になるとしています。日本公認会計士協会の研究文書も、AIの活用に伴って会計士に必要なスキルセットが変化し、AIに関するリテラシーの向上に努める必要があるとしています。
ここでいう検証の力とは、AIの仕組みを技術的に作れることではありません。
どんなデータが入力され、どんな前提で結果が出ているのかを理解し、その結果が監査証拠や経営判断の材料として使えるかを見極める力です。会計と監査の専門知識を持つ公認会計士だからこそ担える役割であり、AIが普及するほど需要が高まる力だといえます。
身につけたいのはデータ活用・IT統制の理解・業務設計の3つである
AI時代に市場価値を高めるために、公認会計士が意識して身につけたいスキルは次の3つです。
1つ目はデータ活用の力です。被監査会社や自社の会計データを抽出・加工し、分析ツールで傾向や異常を読み取る力は、監査でもアドバイザリーでも事業会社でも共通して求められます。
表計算ソフトの関数やピボットテーブルを使いこなすことから始め、データ分析ツールやAIツールの仕組みを理解するところまで広げていくとよいでしょう。
2つ目はIT統制の理解です。企業の業務がシステムやAIに依存するほど、そのシステムが正しく動いているかを確かめる統制の重要性が高まります。
内部統制報告制度の基準改訂でも「ITへの対応」が強調されており、ITに関する統制を設計・評価できる会計士は、監査法人の内外で求められやすい人材です。
3つ目は業務設計の力です。AIに任せる作業と人が担う判断を切り分け、全体として効率的で統制の効いた業務の流れを組み立てる力は、事業会社の経理財務やIPO支援の現場で特に重視されます。
監査で多くの会社の業務プロセスを見てきた経験は、この力の土台になります。
この3つに共通するのは、「AIに作業を任せたうえで、人が何をすべきかを考えられる」という点です。英語や税務などの専門性も引き続き武器になりますが、それらを生かすうえでも、AIを前提とした仕事の進め方を身につけておくことが欠かせません。
経験年数別にAI時代のキャリアの動き方を考える
AIによる変化への向き合い方は、今どの段階にいるかによって変わります。ここでは監査法人で働く会計士を中心に、経験年数ごとに意識したいポイントを整理します。
年数はあくまで目安なので、自分の職階や担当業務に近いところを参考にしてください。
入所1〜3年目は判断に関わる機会を意識して取りに行く
入所して間もない時期は、これまでなら証憑突合や仕訳テストなどの作業を通じて、少しずつ監査の全体像をつかんでいく段階でした。
こうした作業がAIへ移りつつある今、同じペースで経験が積み上がるとは限りません。
この時期に意識したいのは、作業そのものよりも「なぜこの手続を行うのか」「この結果から何がわかるのか」を考える習慣です。AIツールが出した結果を受け取ったら、その結果を主査にどう報告するか、自分ならどう判断するかを考えてから相談するようにすると、判断の経験を少しずつ積めます。
あわせて、クライアントとのやり取りの場面には積極的に関わっておきましょう。理研の研究では、クライアントとの調整は補助者業務の中で最も代替可能性が低い業務でした。
資料の依頼や質問の仕方、相手の事情の汲み取り方は、職階が上がるほど求められる力の土台になります。
シニア(4〜7年目目安)は軸になる専門領域を1つ決める
主査を任されるようになる時期は、自分のキャリアの軸を考え始めるタイミングです。監査の基本を一通り身につけたうえで、これから強みにしていく専門領域を1つ決めておくと、AI時代でも代わりのききにくい会計士に近づけます。
候補としては、IT監査やデータ分析、特定の業種(金融、IT、製造など)の監査、IFRSなどの会計基準、不正対応、サステナビリティ情報の保証などが考えられます。
どの領域を選ぶにしても、「AIツールを使いこなしたうえで、その領域の判断ができる人」を目指すのが現実的です。
この時期は転職市場での評価も高まりやすいため、監査法人の外の選択肢を知っておくことにも意味があります。ただし、すぐに転職を決める必要はありません。
外の選択肢を知ったうえで、今の法人で専門性を深めるのか、別の環境で広げるのかを比較できる状態にしておくことが大切です。
マネージャー以上はAI導入を推進する側の経験を積む
マネージャー以上の職階では、自分がAIを使うだけでなく、チームとしてAIをどう使うかを設計する役割が求められていきます。
エージェント型AIが調書のレビューに入り始めていることを踏まえると、レビューのあり方や品質管理の方法も変わっていくはずです。
AIツールの導入プロジェクトに関わったり、チームでのAI活用ルールを整えたりする経験は、監査法人の中で評価されるだけでなく、事業会社やアドバイザリーファームに移る場合にも強みになります。
前述のとおり、事業会社の経理財務やIPO準備企業では、AIやシステムを前提に業務を設計できる人材が求められているからです。
今の法人に残ることも合理的な選択になりうる
AIへの不安を感じると、「早く監査から離れたほうがいいのでは」と考えてしまうかもしれません。しかし、今の監査法人に残ることも十分に合理的な選択です。
令和8年版モニタリングレポートによると、大手監査法人ではキャリアパスの柔軟化やパートナーへの昇進期間の短縮、給与水準の引上げといった人事施策が進められ、AIを含むITの活用による業務の効率化にも取り組んでいます。
こうした取組の結果、近年はマネージャー層やスタッフ層の離職率が低下傾向にあるとされています。
AI監査ツールへの投資が進んでいる法人で働けば、最新のツールに触れながら経験を積めます。法人内のアドバイザリー部門やIT監査の部署への異動など、転職以外の方法で専門性を広げられる場合もあります。
大切なのは「残るか、出るか」を不安から決めるのではなく、自分が積みたい経験を軸に判断することです。
受験生・試験合格者はAIを理由に挑戦をやめなくてよい
これから公認会計士を目指す人や、試験に合格して実務を始めたばかりの人にとっても、AIを理由に挑戦をやめる必要はないと考えられます。監査証明は法律で公認会計士と監査法人に限られた業務であり、日本公認会計士協会もAIの導入によって会計士が不要になることはないとしています。
むしろ、受験生や合格者は、AIを前提とした監査を最初から経験できる世代です。下積み期間が短くなり、早い段階から本質的な業務に関われる環境は、意欲のある人にとって成長の機会になります。
会計の専門知識に加えて、データやITへの関心を持っておくと、実務に入ってからの強みになるでしょう。
AIへの不安から転職を考えるときに失敗しないポイントを押さえる
AIによる変化をきっかけに、転職を考え始める会計士もいるでしょう。転職そのものは有力な選択肢ですが、不安だけを理由に動くと、移った先でも同じ悩みを抱えることになりかねません。
ここでは、AIをきっかけに転職を考えるときに押さえておきたいポイントを整理します。
「AIが不安だから監査を離れる」だけでは転職理由として弱い
「AIに仕事を奪われそうだから監査を離れたい」という理由だけで転職先を探すと、うまくいかないことが多いと考えられます。
ここまで見てきたとおり、AIの影響は監査法人だけでなく、事業会社の経理財務や税務、アドバイザリーの領域にも及んでいるからです。監査から離れても、定型的な作業が中心の仕事を選べば、同じ不安に直面する可能性があります。
面接でも、「AIが不安だから」という後ろ向きの理由より、「AIで効率化された分、経営に近い判断に関わりたい」「監査で培った業務プロセスの知見を、仕組みづくりに生かしたい」といった前向きな理由のほうが伝わりやすいでしょう。
転職を考えるときは、離れたい理由ではなく、次に積みたい経験から逆算して行き先を考えることが大切です。
応募先でAIとどう関わる仕事なのかを面接で確認する
転職先を選ぶ際には、その職場でAIやシステムとどう関わる仕事なのかを確認しておきましょう。
求人票には書かれていないことが多いため、面接やエージェントを通じて聞いておくと安心です。
確認しておきたいのは、たとえば次のような点です。
- どのようなAIツールや会計システムを導入しているか、または導入を予定しているか
- 入社後に担当する業務のうち、定型作業と判断業務の割合はどのくらいか
- AIやシステムの導入・改善のプロジェクトに関わる機会があるか
- 社内でAIを使う際のルールや研修が整っているか
これらを確認することで、入社後に「思っていたより定型作業ばかりだった」「AIの活用がまったく進んでいなかった」といったミスマッチを防ぎやすくなります。
会計士市場に詳しい転職エージェントに相談して選択肢を広げる
監査法人で働きながら、自分ひとりで転職先の情報を集めるのは簡単ではありません。特に、AIの導入状況や配属先の業務内容といった情報は、求人票や企業のウェブサイトからは読み取りにくいものです。
こうした情報を集めるうえでは、公認会計士の転職を扱う転職エージェントに相談するのも一つの方法です。会計士のキャリアに詳しい担当者に相談すれば、自分の経験がどの領域で評価されやすいか、どのような選択肢があるかを整理しやすくなります。
すぐに転職するつもりがなくても、情報収集の段階から相談できるサービスもあります。次の章では、公認会計士のキャリア相談に使える転職エージェントを紹介します。
AI時代のキャリア相談に使える公認会計士向け転職エージェントおすすめ5社
ここでは、AIによる変化を踏まえてキャリアを考えたい公認会計士が相談先として検討できる転職エージェントを5社紹介します。
ハイスタ会計士|会計士の経験を軸に次の領域を一緒に整理できる

ハイスタ会計士は、公認会計士・USCPA・公認会計士試験合格者に特化した転職エージェントで、監査法人での経験をもとに、次にどの領域へ進むかを相談したい会計士に向いています。
紹介する求人はすべて非公開で、監査法人・会計事務所・事業会社の経理財務から、CFO候補やIPO準備企業のポジションまで扱っています。書類通過率は90%以上で、利用は完全無料です。
AIで監査の仕事が変わると感じていても、「自分の経験がFASや事業会社でどう評価されるのか」は、求人票を見るだけではわかりません。
ハイスタ会計士は会計士領域を専門とするアドバイザーがキャリア設計から内定後のフォローまで一貫して担当するため、監査での担当業務や職階を踏まえたうえで、どの領域なら経験を生かせるかを具体的に相談できます。
こんな人に向いています。
- 監査法人から事業会社の経理財務・FAS・コンサルティングファームへの移動を考えている会計士
- AIを機に、自分の市場価値を会計士専門の担当者に確認したい人
- USCPAや試験合格の段階で、資格を評価してくれる職場を探したい人
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営会社 | 株式会社アシロ |
| 特化領域 | 公認会計士・USCPA・公認会計士試験合格者 |
| 主な特徴 | 求人はすべて非公開/書類通過率90%以上/会計士専門アドバイザーによる一貫サポート |
| おすすめの人 | 監査での経験を軸に、次の領域を具体的に検討したい会計士 |
公式サイト:https://hi-standard.pro/cpa/
BEET-AGENT|事業会社の管理部門で仕組みづくりに関わる転職を探せる

BEET-AGENTは、管理部門・バックオフィスに特化した転職エージェントで、事業会社の経理財務や内部監査、経営企画で、仕組みづくりに関わるポジションを探したい会計士に向いています。
対象職種は経理・財務・人事・総務・法務・経営企画・内部監査などで、年収600万円〜1,000万円以上を目指す管理部門のリーダー・ミドルクラスの転職を支援しています。
上場企業やIPO準備中の企業、ベンチャー企業の希少なポジションを扱っています(2026年9月時点・公式サイト)。
AI時代に事業会社へ移る会計士に求められるのは、決算作業そのものよりも、AIやシステムを前提に業務を設計し、経営判断に数字を結びつける力です。BEET-AGENTは、企業側の採用担当と求職者側の担当がそれぞれ付く両手型のため、配属先でどこまで業務改善や体制づくりを任されるのかといった点を確認したいときに相談しやすいサービスです。
ただし、公式サイト自身が求人数は総合型エージェントに見劣りするかもしれないと明記しているため、幅広い求人を比較したい場合は他社と併用するとよいでしょう。
こんな人に向いています。
- 監査経験を生かして、事業会社の経理財務や内部監査に移りたい会計士
- IPO準備企業やベンチャーで、管理体制づくりに関わりたい人
- 年収600万円以上を目安に、管理部門のリーダー層を目指したい人
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営会社 | 株式会社アシロ |
| 特化領域 | 管理部門・バックオフィス(経理・財務・内部監査・経営企画など) |
| 主な特徴 | 両手型の支援体制/上場企業・IPO準備企業・ベンチャーの希少ポジション |
| おすすめの人 | 事業会社の管理部門で仕組みづくりに関わりたい会計士 |
公式サイト:https://beet-agent.com/cpaform/
MS-Japan|転職時期が未定の段階から管理部門・士業の求人を比べられる

MS-Japanは、管理部門と士業に特化した転職エージェントで、転職するかどうかを決める前の段階から、幅広い求人を比べてみたい会計士に向いています。
管理部門・士業に特化して35年の支援実績があり、19,000件以上の求人を保有しています。公認会計士向けには、監査法人や税理士法人、コンサルティングファーム、事業会社のポジションを扱っています(2026年10月時点・公式サイト)。
AIの影響を知って不安を感じていても、今すぐ転職すべきかどうかは判断しにくいものです。MS-Japanは、転職時期が決まっていない段階での情報収集やキャリア相談の利用も歓迎すると公式サイトで案内しています。求人の幅が広いため、監査法人以外にどのような選択肢があるのかを一通り知りたいときの相談先として使いやすいでしょう。
こんな人に向いています。
- 転職するか決めていない段階で、市場の選択肢を把握したい会計士
- 監査法人・事業会社・コンサルティングファームを横断して比較したい人
- 管理部門全般の求人も含めて検討したい人
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営会社 | 株式会社MS-Japan |
| 特化領域 | 管理部門・士業 |
| 主な特徴 | 管理部門・士業に特化して35年/19,000件以上の求人を保有/転職時期が未定の段階から相談可能 |
| おすすめの人 | 情報収集の段階から幅広く選択肢を比べたい会計士 |
CPASSキャリア|転職以外の選択肢も含めて会計士のキャリアを相談できる
CPASSキャリアは、会計ファイナンス人材に特化した転職エージェントで、転職するかどうかも含めて、会計士としてのキャリア全体を相談したい人に向いています。
運営するCPAキャリアサポート株式会社は、公認会計士資格スクール「CPA会計学院」などを展開するCPAグループの一員です。公式サイトでは、約7,000人の会計士とのつながりなど会計業界のネットワークを生かした求人の紹介や、公認会計士資格を持つキャリアアドバイザーが在籍していることを案内しています(2026年10月時点・公式サイト)。
AIへの不安から相談する場合、すぐに転職するのが正解とは限りません。CPASSキャリアは、ヒアリングをもとにキャリアプランを考えたうえで、転職だけでなく独立の選択肢や現職での成長を支援することもあると公式サイトで説明しています。今の法人に残る選択肢も含めて、会計士の目線で相談したい人に合うサービスです。
こんな人に向いています。
- 転職・独立・現職での成長を並べて比較したい会計士
- 公認会計士資格を持つアドバイザーに相談したい人
- CFO候補やスタートアップの管理部門など、ハイクラスの求人も見てみたい人
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営会社 | CPAキャリアサポート株式会社 |
| 特化領域 | 会計ファイナンス人材(公認会計士・経理財務など) |
| 主な特徴 | 約7,000人の会計士とのネットワーク/公認会計士資格を持つアドバイザーが在籍/転職以外のキャリア支援にも対応 |
| おすすめの人 | 転職ありきではなく、キャリア全体を会計士の目線で相談したい人 |
マイナビ転職 会計士|忙しい時期でも夜間や土曜に相談を進められる
マイナビ転職 会計士は、株式会社マイナビが運営する公認会計士専門の転職エージェントで、繁忙期を抱えながらでも自分のペースで相談を進めたい会計士に向いています。
監査法人、会計事務所・税理士法人、コンサルティングファーム、金融機関、事業会社の求人を扱い、業界・職種別に専任制のキャリアアドバイザーチームを編成しています。土曜日にも面談を行っており、時間によっては平日夜の面談や、電話・WEBでの面談にも対応しています(2026年10月時点・公式サイト)。
監査法人で働く会計士は、決算期の繁忙期には平日の日中に時間を取るのが難しいものです。マイナビ転職 会計士は面談の曜日や方法の選択肢が広いため、忙しい時期でもキャリアの相談を止めずに進めやすいサービスです。大手人材会社が運営しているため、ほかの会計士特化型エージェントと並行して相談し、紹介される求人を比べる使い方もできます。
こんな人に向いています。
- 繁忙期でも、平日夜や土曜に面談を進めたい会計士
- 金融機関を含め、幅広い業界の会計士求人を見たい人
- 複数のエージェントの提案を比べながら転職先を考えたい人
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 運営会社 | 株式会社マイナビ |
| 特化領域 | 公認会計士 |
| 主な特徴 | 業界・職種別の専任制アドバイザーチーム/土曜日の面談に対応/電話・WEB面談も可能 |
| おすすめの人 | 忙しい時期でも自分のペースで相談したい会計士 |
転職エージェントは1社に絞る必要はありません。会計士に特化したサービスを軸にしつつ、目指す領域に合わせてもう1社を並行して相談すると、提案の偏りに気づきやすくなります。
会計士向けの転職エージェントをより詳しく比べたい方は、公認会計士向け転職エージェントの比較記事も参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
AIの普及で公認会計士の年収は下がりますか?
現時点で、AIの普及によって公認会計士の年収が下がったことを示す公的な統計は見当たりません。
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)では、令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした公認会計士の賃金(年収)は全国で810.8万円とされています。令和8年版モニタリングレポートでも、大手監査法人が若手の定着に向けて給与水準を引き上げていると紹介されています。
ただし、AIで代替されやすい定型業務の経験しかない場合、転職市場での評価は伸びにくくなると考えられます。
[参照元]公認会計士|職業情報提供サイト(job tag)・厚生労働省
公認会計士と税理士ではどちらがAIの影響を受けやすいですか?
どちらの資格でも、データの照合や申告書作成の補助といった定型的な作業はAIで効率化が進むと考えられます。
一方で、公認会計士には監査証明、税理士には税務代理などの独占業務があり、資格そのものが不要になるわけではありません。
影響の大きさは資格の種類よりも、定型業務と判断業務のどちらに多くの時間を使っているかで決まると考えたほうが実態に近いでしょう。
弁護士と比べて公認会計士はAIに代替されやすいですか?
弁護士の業務でも、契約書のチェックや判例の調査などでAIの活用が進んでおり、AIの影響を受けるのは公認会計士だけではありません。
どちらの職業も、法律で定められた独占業務を持ち、最終的な判断と責任を人が負う点は共通しています。職業単位で「どちらが代替されやすいか」を比べるよりも、自分の業務のうちどの部分がAIに移り、どこに判断の仕事が残るかを見極めることが大切です。
監査法人はAIの導入で採用人数を減らしますか?
採用人数の将来を示す公的なデータはありません。
令和8年版モニタリングレポートによると、監査法人に所属する公認会計士は2013年3月末の12,799人から2026年3月末の14,915人へと増えており、大手監査法人では若手の定着に向けた人事施策も進められています。
一方で、AIやデリバリーセンターの活用によって1人あたりの執務時間は減少傾向にあります。今後は採用人数よりも、採用後にどのような役割を担うかが変わっていく可能性が高いと考えられます。
[参照元]令和8年版モニタリングレポート|公認会計士・監査審査会
生成AIを業務や試験勉強に使ってもよいですか?
業務で使う場合は、所属する法人や会社のルールに従うことが前提です。
公認会計士法第27条は、公認会計士が業務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らすことを禁じています。日本公認会計士協会の研究文書も、機密情報や個人情報を生成AIに入力してしまうリスクを指摘しています。
試験勉強では、論点の整理や理解の補助に使うのは有効ですが、AIはもっともらしい誤りを出力することがあるため、基準や教材の原文で必ず確認しましょう。
[参照元]公認会計士法|e-Gov法令検索
USCPAもAIで価値が下がりますか?
USCPA(米国公認会計士)の業務でも、定型的な作業はAIで効率化が進むと考えられます。
ただし、英語力と米国会計基準の知識を生かして、外資系企業や海外子会社を持つ企業の経理財務、グローバル案件のアドバイザリーなどで判断に関わる人材の価値は残ります。
なお、日本で財務書類の監査証明を業として行えるのは公認会計士と監査法人に限られています。USCPAとしてのキャリアを考える場合は、どの領域で専門性を生かすかを早めに決めておくとよいでしょう。
まとめ|AIを使う側に回るために3つの行動を始める
公認会計士という職業は、AIによってなくなるものではありません。監査証明は法律で公認会計士と監査法人に限られた業務であり、AIを使っても監査人の責任は軽くならないからです。
一方で、サンプル抽出や突合、調書の下書きといった若手の定型業務はすでにAIへ移り始めており、仕事の中身と経験の積み方は大きく変わっています。
「80%」「49%」といった数字は、職業単位の技術的な上限を示したものです。監査業務を要素に分けた理研と日本公認会計士協会の研究では、10年後の代替可能性は主査で約3割、補助者で約5割とされ、重要事項の判断やクライアントとの調整は人に残るとされています。
AI時代に価値が上がるのは、AIの出力を検証し、根拠を説明できる会計士です。今日からできるアクションとして、次の3つを意識してみてください。
- 自分の担当業務を書き出し、AIに移りやすい作業と、判断や対話が必要な業務に分けてみる
- データ活用・IT統制・業務設計のうち、伸ばしたいスキルを1つ決めて学び始める
- 監査法人の外の選択肢を知るために、会計士のキャリアに詳しい転職エージェントに情報収集の段階から相談してみる
AIによる変化は、不安の種にもなれば、早い段階から本質的な仕事に関われるチャンスにもなります。自分が積みたい経験を軸に、次の一歩を考えてみてください。





















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