プライベートエクイティ(PE)とは?目的や投資を受けるメリット・主な投資先企業まで

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プライベートエクイティとは非上場企業の株式のことです。非上場企業の株式投資を「プライベート・エクエティ投資」といいます。

プライベート・エクイティ投資をする投資会社の目的は、投資した企業の企業価値を高めて利益を得ることです。具体的には株式価値が低い段階で株式を取得します。企業価値を上げることで株価も上昇するので、売却時に利益を得ることができます。3~5年程度で手放すことを前提に買収して、利益が得られる状態になったら売却する流れです。

上場企業は、コーポレート・ガバナンスの観点から取引所の審査に通る必要があります。会計・法務・コンプライアンスなど厳しい基準に適用しなければいけません。

上場基準基準に満たない企業や、上場はしないけれど投資をする価値のある企業に投資をすることで、投資企業としては利益を上げることができますし、企業としてはノウハウなどを得ることができます。

プライベート・エクイティ投資を受ける企業としては、自分たちだけでは難しい経営改善を遂行でき、ノウハウを得ることできます。自分たちの力だけでは上場準備ができない企業や企業再建できない企業にはメリットがあるといえるでしょう。

この記事では、プライベート・エクイティ投資はどんな方法で、どんな企業に有効かを説明します。

目次
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プライベートエクイティ投資の出口section 02

プライベート・エクイティ投資は、投資企業としてはIPO(株式上場)、他社への株式売却等が出口です。株式を購入した時より株価が上がっていれば、売却益を得ることができます。

投資される企業としては、企業価値を上げることで企業経営がしやすくなります。例えば、株式上場ができれば非上場企業に比べると資金調達がしやすくなります。厳しい上場基準を通過した企業しか株式上場できないので、それだけでも信用力が上がるのです。銀行からも資金調達しやすくなりますし、不特定多数の投資家が株式を購入してくれる環境になります。企業としての認知度も上がり、売り上げが上がる効果も期待できます。

プライベートエクイティ投資の対象となる企業3種類section 03

それでは、どんな企業がプライベート・エクイティ投資の対象になるかについて説明します。

業績不振の大手企業

既にある程度の市場規模や価値があるのにも関わらず、業績不振の大手企業がプライベート・エクエティ投資の対象になることも多いです。大手企業には、魅力的な商品や従業員などがあるのにもかかわらず、時代の波に乗れていないことで業績不振に陥っているケースもあるでしょう。プライベート・エクイティ投資を行う投資企業は、投資先の企業の潜在能力や将来性があれば投資・経営指導を行い、事業を立て直します

経営を立て直し、企業価値を上げてIPOをしたり、企業を売却したりで株の売却益を得ます。

オーナー系中小企業

オーナー系中小企業がプライベート・エクイティ投資先になるケースも多いです。最近では中小企業の事業承継問題が深刻です。従来は家業を親族が継ぐのは当たり前の風潮でしたが、現代では異なります。優れた技術を持っているのにも関わらず、後継者不足の問題から廃業を選ぶ企業が増えているのが現実です。

そのため、プライベート・エクイティ投資を行い、企業価値を上げたうえでM&Aをする出口を目指すケースは増えていくでしょう

ベンチャー企業

ベンチャー企業は、若手が多く経営のノウハウが不足しているケースが多いです。例えば、専門性が高い分野の商品・サービスを持っているのにもかかわらず、経営が上手くない・資金調達ができないことで起業拡大を上手くできない企業も多いです。ベンチャー企業に企業運営のノウハウや上場のサポートを行い、IPOを出口にプライベート・エクエティ投資をするケースも多いです。

プライベートエクイティの種類section 04

ここでは、プライベート・エクイティの種類について説明します。

ベンチャーキャピタル

ベンチャーキャピタルとは、創業したばかりの企業に対して投資方法です。一般的なプライベート・エクイティ投資はある程度成熟した企業に対して投資を行いますが、ベンチャーキャピタルは成熟していない企業に投資するのが特徴です。

ベンチャー企業は、勢いや経営者のやる気があっても資金が不足をしているケースもあります。銀行は創業年数も融資の評価にするので、どんなに優れた技術を持っていても設立間もない企業では大きな額の投資を受けにくいのが現状です。このように、設立間もない優秀な企業に対して将来性を見込んで投資するのがベンチャーキャピタルです。経営者が、資金調達はしたくても経営の指図を受けたくないという場合には、ベンチャーキャピタルが取得する株式を過半数以下で調整します。

ベンチャー企業は、シード(準備期)→アーリー(スタートアップ)(初期)→ミドル(グロース・エクスパンション)(中期、成長期)→レイター(後期、安定期)といったような段階を踏んで成長していきます。投資時期が早ければ早いほど投資企業としては利益を受けられる可能性があります。

また、ベンチャー企業としても早く資金調達を受けて事業を拡大したほうが競合他社より早く市場シェアを上げられるので、早い段階でベンチャーキャピタルに投資の相談をした方が良いといえます。

バイアウト投資

バイアウト(Buy Out)は、日本語で「買収」という意味です。バイアウト投資とは、ベンチャーキャピタルとは異なり、既に事業が軌道に乗っている非上場企業の株式を買い取ります。バイアウト投資を行う企業が経営に参画し(経営権を獲得する)、企業価値を上げ利益を最大限に獲得できるようになったら売却することを目指すファンドです。

企業価値を上げるために長期間の投資になることが多いです。

企業再生投資

経営不振に陥っている非上場企業の株式を購入し、経営を立て直して企業価値を上げ、株式を高く売却する方法です。不採算部門の撤退や人員削減などのリストラクチュアリングを行います。株式の価格は利益積み上げです。赤字が何年も続いているような企業の株式は安く購入できますが、企業再生できなければ投資企業が損失を被ることになります。ハイリスク・ハイリターンの投資といえるでしょう。

ディストレス投資

営破綻した企業の株や債券(ディストレス証券)を買い取り、債権を転売する投資方法です。ディストレス資産は、実際の価値より安く評価されていることが多く、上手く企業再建できれば大きく価値を上げて転売できます。

最近では、米子会社の巨額損失や不適切会計を行った東芝が、企業価値を大きく下げたところに海外のヘッジファンドやアクティビストがディストレス投資を行いました。一時は東証2部に降格しましたが株価も戻し、2021年1月には3年ぶりに東証1部へ復帰を果たしています。

日本のプライベートエクイティの現状section 05

一般社団法人 日本プライベート・エクイティ協会によると、日本のプライベート・エクイティ市場における年間案件総額は約120億ドル(約1.3兆円)とのことです。2000年代初めに投資が始まりましたが、2008年の世界金融危機の影響を受け、案件総額はしばらく低調でした。2016年以降に大規模案件が増加したことによって成長傾向にはありますが、欧米に比べるとまだまだ小規模です。投資の種類としては、バイアウトが半数を占めているそうです。買収企業の平均保有期間は4-5年で、IPOまたは売却が出口となっています。

銀行融資とプライベートエクイティ投資の違いsection 06

日本はメインバンク制があります。企業との結びつきが一番強い銀行をメインバンクとし、企業が危機になった時も助けてもらえるような関係性を構築することが多かったです。企業が資金繰りに困窮した時には、バンクミーティングを開催し、どのような返済計画にするかなどメインバンクを中心に話し合います。

融資を受ける企業は、メインバンクに万が一の場合に助けてもらうために、メインバンクを贔屓に為替・預金・決済などの取引を集中させます。ただし、最近ではメインバンク制が薄れてきています。メインバンクとする銀行を作らずに複数の銀行と取引する企業も多いです。このような場合、経営危機になってもメインバンクに助けてもらえず、プライベート・エクエティ投資に頼るしかないケースもあるでしょう。

プライベートエクイティ投資を利用するメリットsection 07

ここでは、プライベート・エクイティ投資を受けるメリットを紹介します。

経営に対する助言を受けることができる

プライベート・エクイティ投資では、投資会社は経営権を持ち、経営に対するアドバイスを受けられます。例えば、経営不振で企業再生投資を受ける場合、それまでの経営陣だけでは難しかった大胆なリストラクチュアリングを可能にして、企業経営を大幅に改善することもできるでしょう。

特に経験豊富な投資会社なら企業価値を向上させるためのノウハウを蓄積しています。それまでの経営陣では立て直し不可能なケースでも投資会社の介入により経営を立て直したり企業価値の向上ができたりすることが可能になります

返済に追われない

銀行融資の場合は、期限に合わせて返済が必要です。しかし、プライベート・エクエティの場合は株式を発行することで資金調達するので、いつまでに返済が必要といった具体的な返済期限はありません。そのため、返済期限に合わせて資金繰りを考えるなど返済に追われないのは精神的ストレスを軽減できます。

ガバナンスの強化

プライベート・エクイティ投資を受けると、投資企業から経営に対して質問を受ける機会が増えます。投資企業(株主)からの問いに対して経営陣が説明をすることで、企業が持つ課題に向き合い、それを解決していこうという共通認識ができます。結果として、ガバナンス(経営の管理・監督を行う仕組み)の強化に繋がります。

事業承継対応

中小企業のオーナー系企業の場合、創業オーナーはカリスマ性がある一方で後継者が育っておらず事業承継に悩むケースが増えています。実際に日本では、後継者不足のため社長の高齢化が進んでおり、事業は好調でも廃業の方針の企業が増えているのです。

プライベート・エクイティ投資会社は経営人材を囲い込んでおり、次期社長候補・経営企画・取締役として活躍できる人材を配置し、事業承継をスムーズにすることが可能です。また、企業価値を高めることで、より良い人材や企業に買収してもらえる可能性が高まるでしょう。経営者としては、自分が育てた企業を自分の代で幕を閉じることなく、事業を継続させることができる点がメリットといえます

海外展開支援

日本は少子高齢化が進み、シェアが小さくなっています。そのため、事業を拡大させたいのであれば人口が多い国への進出は不可欠です。中小企業の場合は、情報・人員が少なく、海外進出は容易ではありません。しかし、情報を有し、経験も豊富な投資会社の支援を受けることで海外進出も可能となります。

プライベート・エクイティを利用するデメリットsection 08

では、プライベート・エクエティ投資を受けるデメリットにはどんなことがあるのでしょうか。

監視の目があり自由な経営ができない

プライベート・エクイティ投資を受けると、投資家が株主となるので株主の意見を聞く必要があります。その結果、自由な経営ができなくなってしまいます。経営者が自分の思うような経営をしたいのであれば投資会社と意見が衝突する可能性があり向いていません。

担当者により成果にばらつきがある

プライベート・エクイティ投資を行う企業は、一般的には高学歴の優秀な人材が集まります。しかし、担当者の経験が浅い場合などには思ったような結果を得ることができないかもしれません。ただし、大手企業を選べば上司などの組織のフォローがあるので、実績が多い企業を選んだ方が良いでしょう。

プライベートエクイティの成功事例section 09

プライベート・エクイティ投資で成功を収めた例として、アドバンテッジ・パートナーズが投資をした「コメダ珈琲店」を展開する「コメダ」が有名です。コメダはアドバンテッジ・パートナーズの傘下に入り、2009年2月期の売上約38億円・営業利益約8億円だったのに対し、2012年2月期では売上約90億円・営業利益23億円と大きく業績を伸ばしました

アドバンテッジ・パートナーズの経営介入で、大きく店舗数を伸ばしたことが要因です。このように、プライベート・エクイティ投資を受けることで大きく業績を伸ばす企業も増えています。

参照:第4回『プライベート・エクイティ(PE)の付加価値』 ~具体的な投資事例を踏まえて~ | JPEA(一般社団法人 日本プライベート・エクイティ協会)

プライベートエクイティ投資を行う主な企業section 10

最後に、主なプライベート・エクエティ投資を行う企業を紹介します。

外資系企業

外資系企業としては、

  • カーライル、KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)
  • ブラックストーン
  • ベイン・キャピタル
  • ペルミラ
  • サーベラス

などがあります。ベイン・キャピタルはすかいらーく、ドミノピザ、大江戸温泉などの投資で有名です。

国内独立系

国内独立系のプライベート・エクエティ投資企業は、

  • アドバンテッジ・パートナーズ
  • ユニゾン・キャピタル
  • エンデバー・ユナイテッド
  • インテグラルなど

ユニゾン・キャピタルはあきんどスシローへの投資、アドバンテッジ・パートナーズは、ダイエー再生やポッカコーポレーションのMBOを行っています。

国内金融系

国内金融系では、みずほキャピタル・パートナーズ、ポラリス・キャピタル・グループ、日本産業パートナーズ、東京海上キャピタルがあります。

国内商社系

商社系のプライベート・エクエティ投資企業もあります。丸の内キャピタル、三井物産企業投資、アイ・シグマ・キャピタルなどです。

まとめ

プライベート・エクエティ投資とは、投資会社が非上場企業への投資及び経営介入することで企業価値を高め、投資会社は株の売買益を得ます。具体的には、ベンチャーキャピタル投資・バイアウト投資・企業再生投資・ディストレス投資などがあります。投資を受ける企業としては、返済に追われない・経営のノウハウを受けられる・企業価値を上げて適切な事業承継ができるなどのメリットです。

日本のプライベート・エクエティ投資は成長傾向にあり、特に事業承継に悩む企業の利用が今後増えることが予想されます。外資系・日系さまざまな企業があるので、各企業の実績やサポート内容を比較して利用を決めてください。

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